トランプ関税がアメリカのアナログレコード製造に与える打撃について、レコード製造工場が語っています。米サイトConsequenceによる特集です。
米ペンシルベニア州ピッツバーグにあるアナログレコード製造工場「Hellbender Vinyl」のマイク・ヤンチャクによると、新しいレコードのラベルやジャケットに使われる紙製品についてはアメリカ企業からの供給体制は盤石ではありますが、問題なのは、アナログレコードの原料となるPVC(ポリ塩化ビニル)ペレットの入手だという。
「レコード製造は、主にアジアの化学工業地帯から始まります。しかし、市場に出るまでの経路には、EUの業者が関わってくることが多いのです。トランプ政権の関税が発動されたり停止されたりする中で、レコード製造業界はサプライチェーン全体にわたって混乱の影響を受けてきました」
ヤンチャクによると、業者は「原材料費の高騰を詫びるどころか、まるでチケットマスターのように、需要に応じて価格を設定している」。Hellbenderは今のところ、自社レコードの価格を値上げするつもりはないという。
一方、75年の歴史を持つ、テネシー州ナッシュビルにあるアメリカ最大のアナログレコードプレス工場「United Record Pressing」は、新型コロナウイルスでの経験を踏まえて、貿易混乱に備えて準備を進めてきたと説明しています。同社のセールスおよびマーケティングディレクターであるカム・サレットはこう話しています。
「私たちはこの事態を予測していました。パンデミックとそれに伴うサプライチェーンの問題から学び、私たちはサプライチェーンの柔軟性と回復力を高めるために多くの対策を講じてきました」
彼らは取引先を大幅に多様化させ、可能な限り在庫を確保しました。現在、多くの倉庫に原材料が保管されていると述べています。
Unitedは、少なくとも短期的には、顧客に値上げを転嫁することなく関税を乗り切ることができると説明しています。しかし、期間が長くなると、「かなり不透明です。現政権では、実際に何が実現するのかはわかりません」とサレットは言っています。
サレットはまた、トランプ大統領が掲げる、より幅広い製造業の復活という目標にも確信が持てないとも言っています。
「私たちがレコードを製造するために使用する全てのものが米国内で入手可能というわけではありません。正直なところ、それら全てを米国ベースで製造するには、長い時間と多額の費用がかかるでしょう」
レコード製造業界は、10年以上にわたる好況期を経て、多くの新しいレコードプレス工場が設立され、供給が需要に追いつきました。
サレットによると「おそらく80年代以降初めて、米国市場でプレスできるレコードの生産量が、注文量を上回ったのです」という。5年前は24時間フル稼働していた工場でも、シフトを3交代制から2交代制に減らしたところもあります。
サレットは、トランプ関税によって、せっかく増えたレコードプレス工場に悪影響を与える可能性についても懸念しています。
「この時点で事前対策を講じることができなかった、あるいはそうしなかった製造業者に関しては、それらの工場の状況が大幅に改善されるとは考えられません。残念なことですが…」