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ビートルズ・アンソロジー ドキュメンタリーの30周年記念版 ジャイルズ・マーティンが新ミックス制作で使用したAIデミックス「MAL」について語る

2025/11/20 18:38掲載
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The Beatles, photo by Photo by Bruce McBroom/© Apple Corps Ltd.
The Beatles, photo by Photo by Bruce McBroom/© Apple Corps Ltd.
ザ・ビートルズ(The Beatles)のアンソロジー・プロジェクト『ザ・ビートルズ・アンソロジー(The Beatles Anthology)』の30周年を記念してドキュメンタリーは新たに修復とリマスターが施されました。ジャイルズ・マーティン(Giles Martin)は映像内で使用されるほとんどの音楽の新たなミックスを制作しましたが、その際に使用した「MAL」と名付けられたAIデミックス技術について、ラジオ番組『The Chris Moyles Show』の新しいインタビューの中で語っています。

「MAL」は、ビートルズ最後の新曲「Now And Then」でも使用されたモノラル・レコーディングをAIを使用してデミックスして楽器とヴォーカルを分離させるオーディオ・テクノロジーです。その名前はビートルズのロードマネージャーだったマル・エヴァンスから名付けられました。

ドキュメンタリーには、1965年の象徴的なシェイ・スタジアム公演などのコンサート映像も含まれており、ジャイルズはそれら公演のオーディオの作業でこの「MAL」を使っています。

「僕たちはMALというものを開発した。マル・エヴァンスにちなんで名付けたんだ。ご存じのとおり、AIには良い面も悪い面もあるけれど、実際に掘り下げることができる。例えば『アンソロジー』のために、シェイ・スタジアムやワシントンでのコンサートに取り組んだとき、今では機械学習を使ってジョンの声だけを分離したり、ドラムだけを分離して、ドラムを際立たせることができるようになった。

ワシントン公演(のオリジナルの映像)では、ドラムはまったく聴こえない。でも今はドラムの音が聴こえる。でも僕が何かを追加しているわけではないし、何かを再現しているわけでもない。地下にあるものを見つけるようなものなんだ。オーディオ関係者のための音源探知機みたいなものだね」

ポール・マッカートニーは以前に「観客の歓声があまりにも大きかったため、演奏中は自分たちの演奏がまったく聴こえなかった」と米ビルボード誌に語っていましたが、ジャイルズは「MAL」で分離されたシェイ・スタジアムのヴォーカルが、この象徴的な瞬間に新しい独自の視点を与えるだろうと語り、観客の大歓声にかき消されていたヴォーカルを本人たちも耳にしたら、きっと驚いただろうとも語っています。

「それが不思議なところなんだ。ヴォーカルだけを分離できると“画面に彼が歌っている姿が映っている時、ジョンの声がはっきり聴こる”。さらに(画面に彼の姿が映っていない時も)彼の声が単独で聴こえてくる。“彼自身も一度もこれを聴いたことがないのにね、彼はあの場にいたのに!”って思うんだよ」