リック・ウェイクマン(Rick Wakeman)は、自身が
セックス・ピストルズ(Sex Pistols)をA&Mから追い出したという噂の真相を語る。また、
T・レックス(T.Rex)「Bang a Gong (Get It On)」のレコーディングに参加したのは
マーク・ボラン(Marc Bolan)の慈善精神からだったこと、
デヴィッド・ボウイ(David Bowie)のスパイダーズ・フロム・マーズ加入のオファーを断り
イエス(Yes)のメンバーになることを選んだ時のボウイの反応なども、英MOJO誌の新しいインタビューの中で語っています。
ウェイクマンはT・レックス「Bang a Gong (Get It On)」のレコーディングに参加しましたが、ウェイクマンによると、この仕事はマーク・ボランが彼の才能を買ってくれたというより、慈善精神によるものだったそうです。
「(僕は当時)家賃が9ポンド足りなかった...(ボランは)“俺がうなずいたらグリッサンドを弾いてくれ”と言った。終わった後、僕は“(あれなら)君でもできたはず”と言うと、彼は“君は家賃が必要だった。9ポンド貸すこともできたけど、君は受け取らなかっただろう...”と言っていたよ」
デヴィッド・ボウイとの出会いは、トニー・ヴィスコンティから2ndアルバム『Space Oddity』に参加するよう依頼された時で、当時流行していたメロトロンを演奏できる数少ないミュージシャンだったため、この仕事を得たと振り返っています。
「メロトロンを演奏できる人は少なかった。みんなが苦労していたのはチューニングを維持すること。68年にモーガン・スタジオでトニー・ヴィスコンティのセッションでジュニアーズ・アイズというバンドのために演奏した時、この楽器を試してみた。チューニングを保つために見つけた唯一の方法は、コードを弾かず、一度に2音以上弾かないことだった。あと、ピッチコントロールを使うことでチューニングを調整することもできた。後日、トニーから電話がかかってきた。“トリデント・スタジオでガス・ダッジョンとデヴィッド・ボウイと一緒にいる。デヴィッドはどうしてもメロトロンを他のストリングスと合わせたいんだけど、誰もこのクソみたいな機械のチューニングを保てないんだ”。それで僕はトリデントに行き、初めてデヴィッドに会った。彼はこう言った。“ガスとトニーは、君にとってこれは朝飯前だって言っている。朝飯前ってやったことある?”」
その後、ボウイはウェイクマンを4thアルバム『Hunky Dory』にも招き、またウェイクマンはクレジットなしで5thアルバム『The Rise And Fall Of Ziggy Stardust And The Spiders From Mars』でも演奏しましたが、ボウイのバンド、スパイダーズ・フロム・マーズへの加入は、アルバム『Fragile』の制作を開始していたイエスに参加するためにオファーを断りました。
「当時はんなに大したことではないように思えたけど、今振り返ると、本当に大きな決断だった。デヴィッドは既にスターだったから、スパイダーズ・フロム・マーズの方が、より多くの報酬を提示するのは間違いなかった。でも、僕にとっての決め手は、イエスが成長中のバンドであり、僕をメンバーとして迎え、方向性を変えたいと考えていたことだった。デヴィッドに電話したら、彼は素晴らしい反応を示してくれた。“絶対に正しい決断だ”と言ってくれたよ」
A&Mがセックス・ピストルズと契約した際、ウェイクマンはレーベルを離れると脅したという噂については「まったくのでたらめ」と一蹴しています。
「要するに、当時A&Mレコードの (イギリスの) トップだったデレク・グリーンは、アメリカから彼らをレーベルに加えたくないと言われていた。彼はすでに彼らと契約してしまっていたので、彼らを追い出す口実を探していたんだ。
そこで彼は僕と(カーペンターズの)リチャード・カーペンターを利用し、僕たちがレーベルを離れると通告する手紙を送ったと主張しはじめた。広報担当者は、僕がスイスに住んでいるから気づかないだろうと思ったらしい。でも、いろんな人が頻繁に飛行機で来ていたし、新聞を持ってくることを忘れていた。僕は激怒したよ」