ディーヴォ(Devo)は
ジョニ・ミッチェル(Joni Mitchell)から「今まで聞いた中で一番イラつく、不愉快な曲だけど自分が出演する映画で使いたい」と打診されたことがあるという。Varietyのインタビューの中で話しています。
また同じインタビューの中で、新しいツアーは“フェアウェル・ツアー”と題されているものの、実際には“お別れ”ではないこと、そして
ローリング・ストーンズ(The Rolling Stones)のレコーディングに参加したときのことも話しています。
Q:チケットマスターのツアーリストには『Devo: The Farewell Tour - Celebrating 50 Years』となっています。しかし、実際には“お別れ”ではないのですよね?
マーク・マザーズボウ(Mark Mothersbaugh):
「僕たちの陣営の誰かが、プロモーターに“フェアウェル・ツアー”と書かせて、余分にチケットを売らせたんだとしたら、本当に腹立たしい。僕にとっては苛立たしいことだけど、お別れツアーを複数回やるバンドは、おそらく僕たちが初めてではないと思う。次は来年、“Hello! ウェルカム・バック・ツアー”とかをやろうかな」
ジェラルド・キャセール:
「あれはプロモーター主導のアイデアだった。彼らは僕たちの話を聞いていなかった。僕たちは“いいか、これは退化(デ・エボリューション)50周年なんだ。退化の最初の50年に別れを告げるんだ。まだまだ続くよ”と説明したんだ。退化は現実であり、僕たちの目の前で指数関数的に加速しているからね。
彼らはチケットの売り上げのために“フェアウェル”という言葉で終わらせたかっただけなんだ。もしディーヴォがフェアウェル・ツアーをやるのなら、そんな呼び方はしないと思う。蛇がディーヴォの帽子をかぶって尻尾を食べている "Beginning Was the End "ツアーと呼ぶだろうね」
■ジョニ・ミッチェルがディーヴォの楽曲を不愉快な曲だけど映画で使いたいと打診したこと
マザーズボウ:
「僕たちと同じマネージャーだったジョニ・ミッチェルと、マネージャーのオフィスの廊下でばったり会ったときのことを覚えている。彼女から“あなたがディーヴォのマザーズボウさんですか?”と聞かれた。彼女は“私、映画に出ることになったの。ラジカセを肩に担いでいるんだけど、ラジカセで流す曲が欲しいのね。あなたの新しいアルバムに収録されている曲、“Swelling Itching Brain”(S.I.B/1979年アルバム『Duty Now For The Future』収録)にしようと思っているんだけど、使ってもいいかな?”と言っていた。僕が”まじで、それはいいね!なぜその曲が欲しいの?”と言うと、彼女は“だって今まで聞いた中で一番イラつく、不愉快な曲だから”と言っていた。僕は“使ってください”と言ったよ」
Q:つまり、ジョニ・ミッチェルは、自分が不愉快で耳障りだと思う音楽を、どういうわけか意図的に聴いていたわけなんだね。その結果は?
マザーズボウ:
「どんな役だったかは知らないし、どんな映画だったかも知らない。ただ、彼女が僕にそう言うなんて、笑ってしまったよ」
■ローリング・ストーンズのレコーディングに参加したときのこと
マザーズボウ:
「81年頃、ローリング・ストーンズはディーヴォと同じ時期にパワー・ステーションでレコーディングしていた。大きなニットのウールのセーターを着たおじいちゃんみたいな人が2階に上がってきて、“誰か俺のアルバムでシンセサイザーを弾いてくれないか?”と言ったんだよ。僕は彼を見て“チャーリー・ワッツだ”と思った。階下に降りると、彼とミック・ジャガーと(エンジニアの)ボブ・クリアマウンテンがその部屋に座っていて“Worried About My Baby”か何かの曲をやっていた。(編集部注:おそらく“Worried About You”)。悪い曲ではなかったんだけど、彼らのベストソングではなかった。彼らはこの曲にシンセを入れたいと言ったんだけど、僕にはそれが不可能に思えた。まず曲を聴いて“その考えでは、シンセはこの曲を台無しにするだろう。それじゃ良くならない”と思ったからね。彼らはシンセをアグレッシブで攻撃的なものだと思っていたんだ。彼らは本当に酔っぱらっていた。
それからボブ・モーグが貸してくれた、ウェンディ・カルロスが『時計じかけのオレンジ』で使ったのと同じヴォコーダーを持ち出して演奏し始めた。これは素晴らしいサウンドで、僕たちのアルバムでも数曲使ったよ。
マイクの入力部にヘッドフォン(!)を差し込んで、シンセを彼らのピアノの上に置いて、その片側にシンセをつないで、ミック・ジャガーにヘッドホンを取ってもらった...このことは誰にも話したことがない。しばらくの間、自分がやってしまったことが本当に恥ずかしかったからね。
ミック・ジャガーにヘッドフォンを横向きにつけてもらった。彼はリズムをもっと上げたいと思っていた。シンセの音はどうするのか? 彼は“ブーン、バップ、バップ、ドゥー、バップ、ドゥー、バップ”と言っていた。それで僕はプロフェット・シンセサイザーに音を入れて、彼はそれをヴォコーダーに入れたんだ...。
あの曲にシンセサイザーを入れるには、僕が嫌っていたようなシンセサイザー・サウンドを出す必要があっただろう...ロマンチックで、ソフトで、のんびりしたこの曲の後ろで、何か味わい深く、ささやかなものをね。その一方で、僕は“この曲にはシンセサイザーは必要ない”と思ったから、すっかり怖気づいていた。それでも、彼らの曲にこのパートを入れたんだ。曲の最後のほうでほんの少し聴けると思う。
キース・リチャーズは僕の弟のボブと友達だった。彼は後でボブに“俺の曲にそのパートを入れたのは、君のバンドの誰だ?ナイフで心臓を刺してやりたい”と言っていたよ」