ザ・ビートルズ(The Beatles)『Revolver』のスペシャル・エディションの発売が正式に発表されましたが、プロデューサーの
ジャイルズ・マーティン(Giles Martin)は、新しいミックスはピーター・ジャクソンなしではありえなかったと話しています。
つい最近までマーティンは『Revolver』のような4トラック時代のビートルズのアルバムが適切に新たにミックスされるかどうか確信が持てなかったという。当時、彼はその技術がまだなかったと言っていました。マーティンは、ピーター・ジャクソンのオーディオ・チームがドキュメンタリー『ザ・ビートルズ:Get Back』のために行った技術(リハーサル映像からヴォーカルと楽器を適切に分離する方法を見出した)が、『Revolver』の新たなミックスを可能にしたと考えています。
マーティンは、彼の父親ジョージ・マーティンが元々制作した、ギターとヴォーカルが同じトラックに収録されたライヴ・アルバムを、新たに2016年に『The Beatles: Live at the Hollywood Bowl』として制作した時、ミックスを完成させる際に分離ソフトの初期ヴァージョンを試したことがありました。しかし、ジャイルズは、アップデートを行うには、まだ技術が十分に進歩しているとは感じませんでした。
その後、『ザ・ビートルズ:Get Back』が登場しました。ピーター・ジャクソンは、1970年の映画『レット・イット・ビー』の制作から何時間もの追加映像を渡されましたが、その多くは音の問題で最終的に使用できませんでした。そこで監督は、数々の受賞歴を誇るエミール・デ・ラ・レイ率いるオーディオチームとともに、彼のウィングナット・フィルムズ・プロダクションのために自動学習プロセスを開発しました。
すると突然、マイケル・リンジー=ホッグが撮影した、ささやき声も聞こえるようになりました。また、リハーサル映像からヴォーカルと楽器を適切に分離することができるようになりました。
ジャクソンは2021年にギター・マガジン誌で「ジョンとジョージは、会話をしているときにアンプの音を大きくして、ギターをかき鳴らすことをよくやっていた。彼らは何も演奏せず、ただかき鳴らしているだけだった。だから、マイケルのマイクが録音しているのは大音量のギターだけなんだけど、ビートルズが何かプライベートな会話をしているのが見えるんだよ。コンピューター技術と人工知能を使った技術で、ギターの音を取り外すことができるようになったので、彼らがしていたプライベートな会話を公開することができるようになったんだよ」
ジャクソン監督はまた、これまでミックスされていないモノラルでしか存在しなかったトゥイッケナム・スタジオでのリハーサルの素晴らしい映像も同作に収録しています。
マーティンは、ビートルズの新しいミックスや拡張アルバムのシリーズをさらに60年代まで続けるために、これらの技術的な進歩に注目しました。
マーティンは米ローリング・ストーン誌のインタビューの中で「ピーター・ジャクソンたちと同じくらいの音質を入手している人は他に誰もいないんだ」と言い、「一番シンプルに説明すると、君からケーキを受け取った後、約1時間後に小麦粉、卵、砂糖を持って君のところに戻ってくるようなものなんだ。そのケーキの材料には、他と混ざっているものがひとつも残っていないんだ」と説明しています。
「デミックス」と名付けられたこの技術は、コンピュータ・プログラムに個々の楽器を認識させ、分離できるようにするものです。
ジャクソンは2021年にVariety誌に「実際、ジョンの音とポールの音をコンピューターに教えたんだ。だから、モノラルトラックから、すべての楽器を分割して、ヴォーカルとギターだけを聴くことができるんだよ。リンゴがバックでドラムを叩いているのが見えるけど、ドラムの音はまったく聴こえない。だから、とてもきれいにミックスすることができるんだ」と話していました。
ジャクソンのディミックス技術は独自の技術でしたが、幸いなことにジャクソンはビートルズの大ファンでした。
「彼らは他の誰にも使わせないだろうね。いずれはやるかもしれないけど。でも、ピーターはビートルズの大ファンだから、喜んで協力してくれるんだ」とマーティンはローリングストーン誌に語っています。「ビートルズが他の誰も使っていない技術を今でも使っているということが、ある意味とても気に入っているんだ。本当に画期的だよ」