
The Beatles, photo by Photo by Bruce McBroom/© Apple Corps Ltd.
ザ・ビートルズ(The Beatles)のアンソロジー・プロジェクト『ザ・ビートルズ・アンソロジー』の30周年を記念して、ドキュメンタリー・シリーズは、新たに修復とリマスターを施され、さらにまったく新たな「エピソード9」が追加されました。この「エピソード9」の脚本・監督を務めるのは、ビートルズ最後の新曲「Now And Then」のドキュメンタリー『ナウ・アンド・ゼン ー ザ・ラスト・ビートルズ・ソング』を手がけたオリヴァー・マレー。監督は英MOJO誌のインタビューに応じ、「エピソード9」について語っています。
「エピソード9」には、1994年から95年にかけてアンソロジー・プロジェクトに取り組むため集結したポール・マッカートニー、ジョージ・ハリスン、リンゴ・スターの3人が、ザ・ビートルズとして共に活動したころを振り返る未公開の舞台裏映像も使用されています。
Apple Corpsの映画部門責任者ジョナサン・クライドは『ナウ・アンド・ゼン ー ザ・ラスト・ビートルズ・ソング』でのマレーの手腕を高く評価し、マレーを「エピソード9」に起用しました。
「エピソード9」の当初の構想は、「Free As A Bird」と「Real Love」のレコーディングについての映画(ミニ版『Get Back』のようなもの)でしたが、マレーはより内省的なものを提案しました。
「(オリジナルの各エピソードは)当時彼らが望んだ形でビートルズの物語を語っていた。今回は、当時は時間的に盛り込めなかった感情的な側面を加えています。物語としてどこかに到達する必要はないので、腰を据えて彼らの語りに耳を傾けましょう。かなりメランコリックなんです」
ビートルズの各メンバーに平等な発言権を与えるという外交的配慮を除けば、マレーは自由に制作を進められたという。
「とてつもない特権でした。だけど彼らが愛さないものは決して公開しない。そういうプロセスを経ていると分かっているから、制作姿勢が自然と誠実になるのです」
マレーは『アンソロジー』のために撮影・収集された未使用映像を丹念に見直しました。
「ファンの皆さんには申し訳ないのですが、現時点で未公開の映像を隠し持っている人物はもはや存在しません。私の認識が大きく間違っていなければ、公開されるべきものはほぼ出尽くしていると思います」
「エピソード9」のいくつかの映像は、以前にDVDの特典映像として公開されたり、何らかの理由でYouTubeに流出したことがあります。また、以前は断片的にしか公開されていなかった映像の完全版もあるという。さらに、アビー・ロードでのグループ・インタビューや、制作終盤に国際的なレコード会社向けに収録された個別インタビューなど、視聴者にとって完全に新しいものもあります。
マレーはアーカイブの中からいくつかの貴重な映像を見つけました。例えば、ポールがアコースティック・ギターで「Helter Skelter」を練習している映像は、ほんの少しだけ音と映像がずれているという理由でお蔵入りしていたものだという。「そんなの気にしない。みんなこういうのを見たいんだ。使おう!」とマレーは語っています。
マレーは、「Now And Then」のドキュメンタリー『ナウ・アンド・ゼン ー ザ・ラスト・ビートルズ・ソング』を「エピソード9.5としてDisney+で配信してくれたら最高だよ」と語っています。
「他のみんなが諦めた後でも、ポールは“Now And Then”のコードと格闘して、可能性がないか探っていた。この曲に関する短編映画をエピソード9.5としてDisney+で配信してくれたら最高だよ。重なる部分があるからね」
マレーによると「エピソード9」には、ジョージ・マーティンとジェフ・エメリックの紅茶に興奮剤を混ぜてセッションを続けさせたという逸話など、陽気な思い出話もあるという。「今では、そんなことを面白おかしく話すことは許されないでしょうね(笑)」
しかし、沈痛な思いにふける瞬間も同じくらい多いという。マレーはこう続けています。
「ジョージの話を聞くのは、セラピーを受けたばかりの人の話を聞くようなものです。彼はこう言っています。“ジョンはもういない。ジョンは殺されてしまった”と。過去の功績を称えるのは本当に素晴らしいことですが、友人のことを思うと胸が張り裂けそうになる。重苦しい雰囲気でした」
かつてのビートルズの面々が、いちばん軽やかで解き放たれているのは、彼らが育ってきたティン・パン・アレーやカントリーの曲でふざけ合っている場面だという。彼らが音楽を通して自分たちの思い出を伝えるこのシーンこそが「エピソード9」の優しい核心になっているとマレーは語っています。
「彼らがあの曲を演奏する姿は、本当に素敵な円環の瞬間でした。そもそも彼らを結びつけたのは音楽であり、そしてまた再び結びつけたのも音楽なんです」
ドキュメンタリーの30周年記念特別版は11月26日よりDisney+で独占配信。
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