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元キッスのヴィニー・ヴィンセント エース・フレーリーを追悼、初対面の思い出などを交えた長文の追悼文発表

2025/10/20 12:35掲載
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Vinnie Vincent and Ace Frehley - Michael Ochs Archives, Getty Images / Ben Gabbe, Getty Images
Vinnie Vincent and Ace Frehley - Michael Ochs Archives, Getty Images / Ben Gabbe, Getty Images
キッス(KISS)エース・フレーリー(Ace Frehley)の後任として加入したヴィニー・ヴィンセント(Vinnie Vincent)は、エースの訃報を受け、長文の追悼文をSNSに投稿しています。エースの後任を務めることになったこと、エースとの初対面の思い出などを交えながらエースに敬意を表しています。

「エース・フレーリー、あまりにも早すぎる別れ。大好き人を失った。

大好き人を失ったこの悲しみを表現できる適切な言葉を探したけれど、何と言おうと、男としても伝説としてもエースを崇拝し、敬愛した何百万人ものファンを慰め、その痛みを和らげることはできないだろう。

エースの訃報は、僕をはるか遠い、自分自身の旅の始まりへと連れ戻した。奇妙なことに、僕はキッスでエースの後任を務めた。ラジオで流れた数曲のシングル以外、彼らの音楽についてほとんど知らなかったし、彼らの圧倒的な成功の大きさ以外にはファンとしての興味もなかった。それでも、僕はそれを命よりも欲していた。

12歳のころの僕の熱狂はビートルズだった。それはキッスの始まりである1974年より十年も前のことだ。僕の熱狂は、ビートルズからツェッペリンへ、ジェフ・ベックから70年代のマハヴィシュヌ(オーケストラ)のジャズ・ロック/フュージョンへと広がっていった。だから僕は、キッスのファン層とノスタルジーを共有するには十年早かった。彼らは大人になっても、自らの子供時代の記憶を通して、これからもずっとキッスを愛し続けるだろう。

しかし奇妙な巡り合わせで、気がつけば僕は“奇妙な2人が暴走したシットコム”みたいな状況で、キッスのギタリストとしてエースの後任を務めることになった。エリック・カーをドラマーに迎えた新体制のキッスと曲作りやリハーサルを重ね、エースの後任として契約を結ぶことになった……信じられない思いで、いったいどうしてこうなったんだ?と自問した。

僕は伝説のエース・フレーリーのブーツを履くことになった。それはまるで竹馬で歩くことを学ぶようなものだったけれど、慣れてしまえば、ギターを弾くのと同じくらい普通になっていった。

不思議なことに、僕がエースと唯一会ったのは1982年の“I LOVE IT LOUD”のミュージックビデオ撮影時だった。全く信じられなかった。それまであまり聴いてこなかったバンドが、ジーンと僕で書いた曲をレコーディングして、そして僕は新入りとして、僕が書いた曲に合わせて、ステージ上でロックする、あの魔法のような存在のエースを見ている。シュール?そんな言葉じゃ足りない。はるかにその先だった。

僕はエースの楽屋にノックし、自己紹介と挨拶をしに行った。伝説そのもので、あの圧倒的な存在に会うのはとても緊張した。僕はまだ未熟で、言葉も出ず、エースの存在感と彼の驚異的なキャリアで手にした名声の大きさに圧倒されていた。けれど、そのたった一度きりの、つかの間の出会いで、僕は自分が心を奪われた人間だと分かった。彼が僕に言った言葉はただ一つ。“やあ、坊主。幸運を祈るよ。お前には必要だろう”。彼の言葉は想像以上に的を射ていた。僕たちは握手を交わし、互いの幸運を祈って別れた。

それは1982年で、2022年にナッシュビルでの忘れられない音楽パフォーマンスで再会するまで、僕がエースと交わした唯一の言葉だった。その間、エースからの連絡はなく、すれ違うこともなかった。僕自身あまり社交的ではないので、珍しいことでもない。

しかし、2022年に突然、すべてが変った。遅ればせながら、エースと僕は心から心地よい絆を分かち合った。偽りのない、本当に素晴らしい瞬間だった。僕たちはお互いを好きになった! 1982年の初対面の握手から、ナッシュビルでのとても特別なキッス・レガシー・ショーでの再会まで、僕たちは一周して戻ってきた。それは、生涯忘れられない週末になった。ブルース・キューリック、エース、ピーター・クリス、そして僕の4人が、バンドメンバーとして初めて集結し、歴史的に深く結びついたバンド、世界最高のバンド、キッスに敬意を捧げたあの週末は、永遠に心に残る思い出となった。バンドの総和は個々の総和よりも大きかった。

言葉だけでエース・フレーリーというレジェンドを十分に称えられるだろうか? 僕はそうは思わない。僕にとってレジェンドとは、すべてを包み込み、すべてを飲み込み、個々の観客の心と魂と精神を抱きしめる存在だ。レジェンドは永遠であり、時を経てもなお、その芸術性を通じて触れた人々に、ファンの誇り、幸福感、温かさを同じようにいつまでも呼び起こす。光の中でも闇の中でも、そのアーティストの影響は、彼が触れたファンの中で揺るがずに残り続ける。エースはそのすべてであり、それ以上の存在だった。

エース・フレーリーは特別な何か…ファンの心をとらえる魔法のような何か…を持っていた。ファンは彼を深く愛し、今この瞬間も涙を流している。これこそが言葉では言い表せないレジェンドの資質だ。エースが苦境に立たされた時でさえ、彼の大勢のファンは彼を見捨てなかった。彼らはエースと共に立ち、声援を送り続け、どんな時も支えると伝え、どんな時も愛していることをエースに示した。これは金で買えるものではない。エースは彼を愛したすべてのファンに、永遠の子供時代という贈り物を届けた。ロックスターも、楽器メーカーも、ファンも、誰もがエースに対して同じようにそう感じていた。みんな、彼のことが大好きだった。エースは“みんなのロックスター”だった。それがレジェンドというものだ。そして、それがエース・フレーリーだ。

エースのこの世での旅は終わった。彼は永遠へと続く扉をくぐり抜けた。いずれ誰もが通る門だ。彼が我々に残してくれたのは、映像、録音、パフォーマンス、そしてエースという人間ーひとりの男―の幸せな思い出、みんなに愛された魔法のようなキャラクター性、そして永遠に生き続けるステージ上の存在感だ。エースと同じキッスの“永遠のレガシー”を共有できたことを、僕はいつまでも誇りに思い、感謝している……僕たちは本当にとんでもなく最高のバンドだった。

友よ、安らかに。あなたは皆に、そして僕に、とても惜しまれるだろう。今こうして痛むように、明日も、そしてこれからもずっと胸が痛むだろう。愛と光と平和を。ヴィニー・ヴィンセント」