Earl Slick and David Bowie - A Reality Tour, August 19, 2003. (Image credit: KMazur/WireImage)
デヴィッド・ボウイ(David Bowie) が2003年~2004年にかけて行った『A Reality Tour』は彼の最後のツアーでした。このツアーに参加したギタリストの
アール・スリック(Earl Slick) は、Guitar Playerの新しいインタビューの中で、この最後のツアーについて振り返っています。
「あれ(『Reality』)はライヴで演奏するのが楽しいアルバムだったよ。特にロックナンバー、タイトル曲とかね。デヴィッドと一緒に組んだ中で最高のツアーバンドだった。メンバーの組み合わせが絶妙で、まったくトラブルもなく、彼がツアー中にあれほどリラックスして幸せそうだった姿は、これまで見たことがなかった。
(ボウイは2004年6月23日のプラハ公演のステージ上で心臓発作を起こし、予定より早くライヴを終えました)
(このプラハ公演は)本当に奇妙な公演だった。最初は何が起こっているのかわからなかった。会場は地獄のように暑く、彼がいくつかの音を出すのに苦労しているのが見えた。ただハイになっているだけだと思っていたんだ。僕たちは皆、ハイになっていたからね。
たぶん“The Jean Genie”を演奏していたときだと思うけど、彼は僕に“そのまま続けて、ジャムっててくれ”と言った。この時、彼は心臓発作を起こしていた。それから胸を押さえ始め、ツアーマネージャーが駆け寄って彼をステージから降ろしたんだ。
数分後、彼は戻ってきて僕たちに加わった。1小節か2小節ほどやった後、歩いて去っていった。彼は神経が詰まっていると言っていたが、それが何であれ、それは間違っていたんだ。
※当時の映像
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数日後(の6月25日)にドイツのハリケーン・フェスティバルに出演した。彼のところに話に行ったら、彼はひどく調子が悪そうだった。
ライヴを全部終えた後(※ベーシストのゲイル・アン・ドロシーによると、ボウイは最後の曲を演奏後にステージを降りた際に倒れたという)、電話がかかってきてこう言われた。“数日間待機してくれ。デヴィッドは休養が必要だ。数日休みを取る”。
それで僕らはハンブルクでぶらぶらしてた。誰も何も教えてくれなかった。
それからまた電話がかかってきて、“みんな、終わりだ。家に帰ってくれ”と言われた。説明は一切なくて、彼が何らかの手術を受けるんだろうとはみんなわかってたけど、詳細は何も教えてもらえなかった。(※ボウイは急性動脈閉塞のため入院した)
神に誓って言うけど、ハリケーン・フェスティバルでやった“Heroes”は、彼があの曲をやった中で最高のヴォーカルパフォーマンスの一つだったと思う。その2時間後には、たぶん彼は病院にいた。
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(インタビュアー:彼が再びライヴを行う可能性について、話題に上がったことはありましたか?)
あったよ。(2013年アルバム)『The Next Day』の制作中、ちょうど“Set the World on Fire”の作業を終えたところだった。コントロールルームで聴き返していた時、彼が僕を見て“これはライヴでやったら最高だな”と言ったんだ。僕が何か言おうとしたら、彼は“考えるな”と言っていたよ(笑)。
それが彼が再びツアーに出ることについての話し合いの全てだった。彼は“考えるな”と言った。その目を見れば分かったよ。長く一緒にいたので、彼が本気で言っているのがわかった。彼はもうどこにも行かない。
本当に残念だった。少なくとも、あと1回は良いツアーができると思っていたから。これは2013年の夏の話なので、もしかすると、その頃にはもう癌で体調が悪くなっていたのかもしれない。真相はわからないが、可能性はあると思う。(※ボウイは2016年1月10日に亡くなった)」