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ポール・マッカートニー、60年代の前衛音楽がビートルズに与えた影響について語る

2025/08/26 17:21掲載
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The Beatles
The Beatles
ポール・マッカートニー(Paul McCartney)は60年代の前衛音楽がビートルズ(The Beatles)に与えた影響について語っています。

ポールは、エリザベス・アルカーの近刊著書『Everything We Do is Music: How 20th-Century Classical Music Shaped Pop』(海外8月28日発売)のためにインタビューを受けました。この本はポップスとクラシック音楽の繋がりを探求しているもので、エリザベスは英ガーディアン紙に寄稿し、この本の中から、ポールのエピソードについて語っています。

■「I Am the Walrus」

ポールによると、ビートルズはジョン・ケージ(John Cage)の1956年の作品「Radio Music」からヒントを得て「I Am the Walrus」を作ったという。この曲についてこう振り返っています。

「ケージには、ラジオの周波数帯の一端から始まり、つまみを回して終わりまで進み、ランダムにすべてのチャンネルをスクロールさせていく作品があった。僕はそのアイデアを“I Am the Walrus”に持ち込んだ。“ランダムじゃないとダメだ”と言った。結果的にシェイクスピアの『リア王』の朗読にたどり着いたんだけど、あの瞬間にあの朗読が入ったのは素晴らしかったね。あれはケージから来たものだったんだよ」





■「Tomorrow Never Knows」

ポールは、イギリスの前衛音楽の作曲家コーネリアス・カーデューのコンサートを観劇し、ドイツの現代音楽の作曲家カールハインツ・シュトックハウゼンによる合成音の進化に関する講義に出席し、英国電子音楽のパイオニア デリア・ダービーシャーと出会いました。

ポールはブレネル社のテープレコーダーを2台購入し、これらのアイデアを「本業」の仕事に取り入れることにしました。ポールは「Tomorrow Never Knows」の録音についてこう話しています。

「ビートルズの曲としてはかなり前衛的なものになりつつあった。

(ポールは自宅で作った様々な音を録音したテープループが入った袋を『Revolver』のセッション中にアビーロードに持ち込んだ)

テープレコーダーをセットアップして、ポップ音、回転音、溶け合うような音をすべてミックスしたよ。ギターソロを入れることもできたかもしれない、シンプルなものか変わったものかは別として。でも、テープループを入れると、それが別の次元へ連れて行ってくれる。だって、それは予測できない幸運な偶然をたくさん起こしてくれるから。それがその曲に合っていた。僕たちは、そういうトリックを使って、望んでいた効果を得たんだよ」



■「Revolution 9」

最終的にジョン・レノンもブレネル社のマシンを2台手に入れ、新たな実験的領域に足を踏み入れました。これにより「Revolution 9」が生まれました。

ポールは「ジョンは夢中になり、そのクレイジーさを気に入っていた」と振り返っています。

一方でポールは、これらの新しいスタジオ機器を「制御された方法で」使うことを好み、ポップソングのフォーマット内に留まりながら、興味深いスタイルの要素を厳選し、ビートルズの確立された曲作りのテンプレートに組み込んでいました。

これらの要素をポップミュージックに取り入れることで、ビートルズの2人は聴衆、ひいては大衆文化をゆっくりと前進させていきました。ポールはこう話しています。

「“ああ、僕たちの聴衆はポップソングを求めているんだ”と思うこともある。ウィリアム・バロウズがカットアップ技法を使っていることを読んで、“彼には読者がいて、その読者は彼のやったことを気に入っていた”と思った。最終的に僕たちは、聴衆が僕たちについてきてくれるだろうと考え、従来の形式を押し付けるのではなく、彼らと共に進化していく道を選んだんだ」