
1985 Grammy Awards Synthesizer Medley (Hancock, Wonder, Dolby, Jones)
「あの夜、全てが変わったと思う」
ハワード・ジョーンズ(Howard Jones)は、キーボードプレイヤーや電子音楽に携わる人にとって「ターニングポイント」となったのは、1985年2月26日の<第27回グラミー賞>にて、
ハービー・ハンコック(Herbie Hancock)、
スティーヴィー・ワンダー(Stevie Wonder)、
トーマス・ドルビー(Thomas Dolby)、ハワード・ジョーンズが披露した「シンセサイザー・メドレー」だと考えているという。MusicRadarの新しいインタビューの中で振り返っています。
Q:あなたのパフォーマンスで特に好きなのは、1985年のグラミー賞でのものです。シンセサイザー・メドレーに参加されていましたよね。あのパフォーマンスは、きっと素晴らしい経験だったでしょう。
「ああ、本当にそうだよ! すごく面白い話なんだけど、僕とトム・ドルビーはロンドンのスタジオでスティーヴィー(ワンダー)が来るのを待っていたんだ…“ああ、彼は今飛行機で向かっている。すぐに着くはずだ”…でも、待っても待っても待っても…結局彼は来なかったんだ。
でも良かったのは、その後ロサンゼルスに行って、スティーヴィーのスタジオで彼とハービーと一緒に仕事ができたこと。本当に特別な時間だった。ある日の午後、スティーヴィーと2人だけでジャムセッションもできた。他の2人はインタビューか何かで出かけていた。僕たちはそれぞれキーボードを持って、リフを交換しながらジャムっていて、“すごーい”って感じだったよ。スティーヴィー・ワンダーと一緒にやれるなんて、僕にとって天国のようなものだからね」
Q:ジョン・デンバーがアメリカ(の視聴者)に(シンセサイザー・メドレーのパフォーマンスを)紹介する時の「これから見るのは本当に奇妙なものだよ」って言うのが本当に興味深いですね…
「そう、その通り。あれはターニングポイントだったよね。僕たちキーボードプレイヤーや電子音楽に携わる人たちにとって、スティーヴィーやハービーが伝説的な存在だと突然示したからね。新しい世代は僕とトムだと言われてね。
あれは、すべてのテクノロジーとキーボードの重要性を認めるゴーサインを出したようなものだった。“これはOKだ、これで素晴らしい音楽ができるんだ。子どもたちを襲ったりしないから安心して!”ってね。これは単にクリエイティブなことをできる楽器のひとつに過ぎないんだとね。
あの夜を境に状況は完全に変わったと思う。人々はもうアルバムに“このアルバムの制作にはシンセサイザーは一切使用していません”と書くのをやめた。
そんなのは悪魔の仕業だよ。あと、あの終わりのないインタビュー…“電子音楽には魂がない、心がない、感情がない”とかね。何を言ってるんだって感じだよね?
僕が最も気に入っている説明の仕方は、こうだ。“ピアノがあるよね? ある人が座って弾き始めると、部屋から逃げ出したくなる…でも別の人が弾き始めると、涙が出るほど感動する…” わかるよね? 楽器の問題じゃないんだ。人なんだよ。
その人の創造性や思考、芸術性が大事なんだ。そして、それがどんな楽器であっても、重要な要素なんだよ」
Q:今日の音楽テクノロジーについてどう思いますか? あなたはテクノロジーを使ってライヴで演奏する難しさについて話していますが、今は簡単すぎると思いますか?
「僕はずっとそれが良いことだと思ってきた。80年代には、いつか人々が自分の部屋やパソコンで曲を作れる時代が来ると言っていた。その時代は確実に到来した。それは素晴らしいことだと思うよ。
昔は、どの家庭にもピアノがあったり、パブにもピアノがあったりして、人々は演奏を学んでいた。だから今は、それが広がったようなものなんだ。僕はそういう考えが好き。
それが僕のようなライヴで演奏する人に与える影響は、よりレベルを上げなければならないということ。みんなはiPadを使って家で素晴らしいことができるようになったので、それよりも数段上を行く努力をしなければならない。本当に特別なものにするためにね。
音楽に、より多くの人がアクセスできるようになったのは良いことだと思う。でも、僕が学校で受けた音楽教育の量を考えると、それがひどく減っているのが残念だよ。音楽への愛情の大きな部分を占めていたもので、僕たちの国は素晴らしいソングライターやミュージシャンを輩出する力があるのだから、それを失ってはいけない。学校からそれが消えてしまったら、それは本当に悲しいことだと思う。戻ってほしいね」