シン・リジィ(Thin Lizzy) のヒット曲「Whiskey In The Jar」のギターイントロを作曲した、バンドの創設メンバーでギタリストの
エリック・ベル(Eric Bell) 。北アイルランド音楽賞でレジェンド賞を受賞することになり、それにあわせ、英BBCで自身の音楽キャリアを振り返り、若いミュージシャンにアドバイスを送っています。
彼が初めて音楽の世界に足を踏み入れたのは、子供の頃にクリスマスプレゼントでもらった、おもちゃのギターだったという。
「半分おもちゃで半分本物の楽器のようなものだった。プラスチック製で6色の弦が付いていたよ」。
ベルが本格的に音楽にのめり込んだのは、ベルファスト東部のオレンジフィールド高校に通っていた10代の頃でした。同じ高校には
ヴァン・モリソン(Van Morrison) も通っていました。ベルによると「ヴァンは僕より1学年上だったから、僕たちは親しくなかった」という。しかし、ヴァン・モリソン率いるバンド、
ゼム(Them) がベルファストのクラブで演奏しているのを見て、彼は感銘を受けました。
「現実離れしていて、素晴らしいものだった」
ベルは学校を卒業後、自動車整備士として働き始めましたが、彼の心を捉えて離さなかったのはギターだけでした。
「まるで水を得ない魚のような気分だった。9時から5時までの普通の仕事は僕にはまったく向いていなかった。まったくダメだった」。
その後、ベルはギタリストとして活動を始める。ゼムのメンバーだったこともあるという。しして、ダブリンに移住したことがシン・リジィ誕生のきっかけとなりました。彼はダブリンの音楽クラブのバックステージで、創設メンバーの
フィル・ライノット(Phil Lynott) とドラマーの
ブライアン・ダウニー(Brian Downey) に出会いました。
「しばらく話をして、一緒にジャムセッションをして、音楽的にどうやって一緒にやっていくか見てみようと思ったんだ」
シン・リジィには当初、キーボード奏者がしばらく在籍していましたが、すぐにライノットがベースも演奏する3人編成となりました。
「フィルがベースを弾き始めた最初のリハーサルでは、彼は自分がどのキーを弾いているのか分からなかったと思うよ! でもね、何かがそこにあったんだ。テレパシーのようなものがね」
ベルのギターイントロがフィーチャーされた「Whiskey in the Jar」は彼らの最初のヒット曲ですが、当初はシングルのB面曲に予定されていました。シン・リジィはドイツでツアー中に、この曲がヒットチャートに入ったという知らせを受けました。
「僕たちは、それは冗談だと思っていた」
彼のシン・リジィでの活動は、わずか3年後の1973年に終わりました。彼は、バンドを去った理由について率直に語っています。
「もしそうしていなかったら、俺は死んでいただろうね。今はバンドがどんな状態だったか誰もがを知っている。ドラッグと酒だ。シン・リジィは非常にハードに活動していた。音楽業界はアルコールやドラッグに簡単に手を出してしまう状況に陥りやすいんだよ」
シン・リジィを脱退した後も、ベルはロンドンでライノットと何度か顔を合わせましたが、ライノットは、長年にわたるアルコールと薬物依存症の後、1986年に亡くなりました。
「驚いたし、驚かなかった。フィリップはフィリップだったから。彼は自分が無敵だと思っていたんだ」
今、音楽を仕事にしたいと夢見ている学生のミュージシャンたちに、どんなアドバイスを送りますか?と尋ねられたベルはこう答えています。
「自分のやりたいことを信じて、それに一生懸命取り組むことだ。夢見るだけでは意味がない。時間を費やさなければならない。それは疑いのない事実だ。何が起ころうとも、夢を追い続け、夢を燃やし続けろ」
北アイルランド音楽賞の式典は11月13日にベルファストのアルスター・ホールで開催される予定です。
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