米ビルボード誌によると、
ビートルズ(The Beatles)が1965年8月17日にカナダのトロントにあるメープル・リーフ・ガーデンズで行ったコンサートの高品質のライヴ音源をサウンドボードから直接録音した2本のオープンリール式オーディオテープが存在することが明らかになり、所有している人物がそのテープの売却を検討中だという。
所有しているのは、トロントを拠点とするビートルズ研究家で『The Beatles in Canada』シリーズの著者でもあるピアーズ・ヘミングセン。「これは、ビートルズ自身のためにプロが録音したものを除けば、北米ではないにせよ、カナダにおけるビートルズのコンサートの最高の録音です」と述べています。この音源を聴いたことがあるのは、わずか7人だけだという。
テープには、ビートルズが午後に行ったコンサートの全セット、オープニングアクト、ビートルズのマネージャーや広報担当などの記者会見が収録されているという。ビートルズのライヴ音源は約30分で以下の12曲を収録しているとのこと。「12 Twist and Shout」「She's A Woman」「I Feel Fine」「Dizzy Miss Lizzie」「Ticket To Ride」「Everybody's Trying To Be My Baby「Can't Buy Me Love」「Baby's In Black」「I Wanna Be Your Man」「A Hard Day's Night」「Help!」「I’m Down」。
ビルボード誌の取材に応じたある鑑定士は、このテープの価値は6万ドルから8万ドルで、オークションでは10万ドル(約1500万円)以上で落札される可能性があると述べています。
ヘミングセンによると、このサウンドボード録音は、カナディアンフットボールのプロチームであるトロント・アルゴノーツの元選手で、カナディアンフットボールの最高の大会であるグレイカップで二度優勝したドン“シャンティ”・マッケンジーによるものだという。マッケンジーは2001年に亡くなっています。
ヘミングセンは、2016年に出版された著書『The Beatles In Canada: The Origins of Beatlemania! (Red Book)』の執筆のために何年も調査を行っていた際、マッケンジーがビートルズの1964年9月7日ガーデンズ公演を音声なしで撮影したモノクロ8ミリのホームムービーを発見しました。ヘミングセンは2010年頃にマッケンジーの息子からフィルムを購入し、そのおまけとして、今回話題となっている2本のテープを受け取りました。ヘミングセンは「私が購入したのは、本当にフィルムのためだけだった。それはオリジナルではなく、コピーだった。あの2つのテープに何が録音されるかは知らず、まったく予想していなかったので、今でも信じられない」とコメントしています。
すでにブートレグやオンラインで出回っているこの公演の音源のほとんどはビートルズの姿を見て興奮した観客の歓声だけを捉えているものばかりですが、ヘミングセンは「プロの機材を使ってサウンドエンジニアが録音したこのライヴ録音は、彼らのツアー中、カナダで録音されたライブ録音の中で最も素晴らしいものです」と説明しています。
ヘミングセンは、自分がこのテープの「管理人」であると考えていますが、この録音の権利はアップル・コアが所有しているため、テープを公に共有できないことは理解しています。
ヘミングセンによると、アップル・コアは、この録音の存在は把握しているという。ヘミングセンは2015年7月にアビー・ロード・スタジオにテープを持ち込んで、そこで機材を使ってオリジナルのテープを試聴したという。ヘミングセンによると、その場にはジャイルズ・マーティンやアップル・コアの制作ディレクター、アビー・ロードのマスタリング・エンジニアであるショーン・マギーなど4人がいたという。このミーティングは、ロン・ハワードが監督したドキュメンタリー『ザ・ビートルズ EIGHT DAYS A WEEK』のためのものだったという。ヘミングセンは「その時、彼らからは、そのプロジェクトには使用できないと言いましたが、それは後でそれ以外には何もできないという意味ではありませんでした。そういう形で私たちはその場を離れました」と話しています。
アップル・コアは、米ビルボード誌からの問い合わせに対してコメントを拒否しており、ショーン・マギーも同様です。
ヘミングセンは、アップル・コアがテープを購入し、音源を誰もが聴けるようにリリースすることを希望しています。 彼は、来年のトロント公演60周年までに、ビートルズのファンに提供されることを望んでいます。
ヘミングセンは「このようなことは、隠しておくわけにはいきません。世界と共有したいのです。一方で、これには商業的な価値もありますし、それをリリースできるのはアップルだけです。誰かが私からテープを買って、自分で楽しむことはできても、それをリリースすることはできません。私はアップルから書面でその旨を伝えられています。つまり、私にできることは何もないのです」と述べています。