XTCの
アンディ・パートリッジ(Andy Partridge)は米SPIN誌のインタビューの中で、
キャプテン・ビーフハート(Captain Beefheart)を初めて聴いた時のことを振り返っています。最初は「壁越しに聴いた」という。『Trout Mask Replica』は最初まったく理解できずに貸してくれた友人に「これは無理」と弱音を吐くが、友人に「いや、頑張れ」と励まされて6週間後に「ピンときた」という。
「僕が初めて聴いたビーフハートのレコードは正確に言えば、壁越しに聴いたんだ。
その頃の僕は、ちょうど子供として一段落して、女の子に興味を持ち始めた年頃で、放課後になると親友のデイヴィッドの家に遊びに行っていたんだ。彼は“新しいディンキートラック(※ミニカー)を買ったよ”とか言っていた。僕は“こういうおもちゃが好きなことに後ろめたさを感じる。そろそろ卒業しなきゃ”と思っていた。隣の寝室には3歳年上の兄がいて、壁から奇妙な音楽が聴こえてきた。(キャプテン・ビーフハート・アンド・ヒズ・マジック・バンドの1967年アルバム)『Safe as Milk』をかけていた。僕は“この奇妙な音楽は何だろう?すごく興味をそそられる!”と思った。しばらくして、それが何なのかがわかった。彼の兄は“なんで僕の部屋のドアを開けているんだい?”と言ったので、僕は“その音楽が好きなんだ”と答えると彼は“興味があるのかい。これだよ”と教えてくれたんだ。もちろん、レコードを買う余裕はなかった。だから“音楽が買えるようになったら、それを買うよ ”と言ったんだよ。それがビーフハートを初めて聴いたときだった。その異質さを楽しんだよ。
(次作の)『Strictly Personal』は(当時)聴いていない。次にビーフハートを聴いたとき、僕をたくさんの奇妙な音楽に導いてくれた親友が僕にこう言った。“君はこれ(『Trout Mask Replica』)を嫌うだろう。でも我慢して聴いてごらん。きっとこれを好きになるはずだよ”。たぶんモンキーズのアルバムか何か、当時持っていたものを彼に貸して借りたと思う。
僕は『Trout Mask Replica』を聴きながら、いつもこう考えていた。“チューニングが狂っている。音程が狂っている。歌っているのではなく、叫んでいるだけだ”と。どうにも理解できなかった。僕は(友人に)“これは無理。こんなの聴けない。返すよ”と言ったんだけど、彼は“いや、頑張れ”って。おそらく6週間かそれ以上、毎日試していた。そして、何かが起こった。ピンときたんだ! “これは今まで聴いた中で最高のものだ! 彼らは調子はずれで演奏しているのではない、それが彼らの調子なんだ! ああ、彼はそういうパートを演奏しているんだ! 彼は詩を叫んでいるんだ。素晴らしい詩だ!”。
僕は赤い練習帳を持っていて、何時間も座って1行ずつビーフハートが何を歌っているのか調べようとした。それらはアメリカ文化の引用だったので、あまり理解できなかったんだ。例えば“俺のハニーの周りにシュパイデルの手首”とか。シュパイデルが時計のストラップを作っているなんて知らなかった。何を言っているんだ?と思い続けていた。イギリス盤には歌詞がなかった。僕はこの問題集を埋めなければならなかったんだ」
「(1971年アルバム)『Mirror Man』は出たときに買ったよ。初期のXTCがカヴァーしていた“25th Century Quaker”のような、長いジャム曲がいくつか入っていた(笑)。(後にXTCのバンドメイトになる)コリン・モールディングが僕のバンドを初めて見たのは、おそらくクラーク・ケントか、スター・パークという名前だったと思う。僕たちはコリンの学校で演奏していて、ホールにいた十数人を追い出してしまった。文字通りね。それで“ああ、もういいや、25th Century Quakerを演奏しよう”ということになったんだ。コリンは友人と一緒に滑り込んできて、後ろの壁で僕たちを見ていた。彼は僕たちが苦労しているのを見ていたんだ」