HOME > ニュース >

デヴィッド・ボウイ「Absolute Beginners」の裏話 コラボレーターのケヴィン・アームストロング語る

2024/07/02 15:19掲載
メールで知らせる   このエントリーをはてなブックマークに追加  
David Bowie - Absolute Beginners (Official Video)
David Bowie - Absolute Beginners (Official Video)
デヴィッド・ボウイ(David Bowie)の名曲のひとつ「Absolute Beginners」。この曲の裏話を、この時代のボウイのコラボレーターであるギタリストのケヴィン・アームストロング(Kevin Armstrong)が著書『Absolute Beginner: Memoirs of the world's best least-known guitarist』で振り返っています。抜粋を英Classic Rockが公開しています。

ボウイは、映画監督のジュリアン・テンプルから、コリン・マックィネスの小説『Absolute Beginners』を大胆にアレンジしたミュージカル映画『ビギナーズ』のテーマソングの制作と映画への出演を依頼されて、彼はそのチャンスに飛びつきました。

一方、この頃、トーマス・ドルビーの元サイドマン、ケヴィン・アームストロングのキャリアは転落の一途をたどっていました。すでにデビュー・アルバムをレコーディングし、ビデオも制作し、リミキサーやバンドも決まっていたにもかかわらず、「すべてが崩れ落ちた」という。

アームストロングはこう書いています。

「“さて、どうしよう”と思っていると、電話が鳴った。EMIのA&R担当ヒュー・スタンリー・クラークからだった。“アビー・ロード(スタジオ)に行け。ギターを持って来い。後で私に感謝するはずだよ”とだけ言われた。

誰のために演奏するのかは知らされていなかった。僕らは中堅の臨時雇いミュージシャンの集まりで、ただ“アビー・ロードに行け。そこにミスターXが現れる。税金の関係でこの国にはいないことになっているから、それが誰なのかは教えられない”と言われただけだった」

ミスターXとはデヴィッド・ボウイのことでした。「彼が必要としていたのは名ばかりのプレイヤーではなく、一緒にデモをする実用的なミュージシャンだったんだ」

バンドが最初に取り組んだ曲は「That's Motivation」(ボウイは映画『ビギナーズ』サウンドトラックにも貢献している) でした。セッションはうまくいき、最後に時間が残り、ボウイはこう言いました。「曲のアイディアが浮かんだ。まだ時間はあるから、やってみよう」

ボウイはすでにいくつかの歌詞と曲の大部分を書いていましたが、全体の構成はできていませんでした。15分後、バンドは「Absolute Beginners」の最終アレンジのデモを録音しました。

アームストロングは「再生したのを聴いて、僕たち全員が“なんて感動的な曲なんだ”と声をあげた。これはきっと素晴らしいものになると思いました」と振り返っています。

「Absolute Beginners」のレコーディングは翌週に行われましたが、ボウイは「僕とデュエットしてくれる、ショップ・ガールみたいな女の子も必要だ」と言い出したという。

それに対して、アームストロングはこう返答したと書いています。

「それで、生意気で自信家な若者だった僕が“僕の妹は(ファッション店の)ドロシー・パーキンスで働いているよ”と言うと、彼は躊躇なく“彼女を呼べ”と言った。“テープや写真はあるのか”とは言わず、ただ“彼女を呼べ、彼女は参加する”とだけ言ったんだ」

妹のジャネット・アームストロングは、いくつかのパンク・バンドで歌ったことはありましたが、当時はただの小売店員でした。しかし、ボウイは実際にジャネットを起用してバック・ヴォーカルを任せています。

「Absolute Beginners」のレコーディングは「スタジオでのエキサイティングな一日だった」とアームストロングは振り返っています。

「このレコーディングに参加していたアーティストはボウイだけじゃなかった。ミック・ジャガーもいた。“Motivation”、“Absolute Beginners”、“Dancing In The Street”(ジャガーとボウイのデュエット曲)はすべて、同じセッション、同じスタジオ、同じバンドでレコーディングされたんだ。そして、すべての作業を終えると、僕たちはワインボトルを持ってバスに乗り込み、ドックランズで“Dancing In The Street”のビデオ撮影をするデヴィッドとミックを見物したんだ」

「Dancing In The Street」のレコーディングについて話し合うためにボウイとジャガーと会うわずか2週間前、アームストロングは事実上ホームレスで、キャリアはどん底でした。

「おそらく、この仕事がなかったとしても、前に進む方法を見つけられたと思う。だけど、明らかに、ミスターXと連絡を取れるようになったあの電話は、大きな後押しになったんだ」

アームストロングは1985年の<ライエイド>ではデヴィッド・ボウイのバンドで出演。アームストロングはその後10年間、ボウイと仕事を続けました。