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『Led Zeppelin IV』の「薪を背負った老人」が誰なのかをついに特定した研究者 オリジナル写真発見の舞台裏語る ネットで偶然発見

2023/11/10 17:14掲載
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Led Zeppelin / Led Zeppelin IV
Led Zeppelin / Led Zeppelin IV
半世紀以上も謎のままだった『Led Zeppelin IV』のジャケット・カヴァーに描かれた「薪を背負った老人」が誰なのかをついに特定した研究者が、ツェッペリンのファンサイトLedZepNewsの取材に応じて、オリジナル写真発見の舞台裏を語っています。自宅でインターネットを閲覧中に偶然発見したそうです。

この「薪を背負った老人」は、19世紀末にイングランド南西部のウィルトシャーに住んでいた屋根葺き職人のロット・ロングであることが調査で判明。またオリジナルは絵画ではなく白黒写真であることも分かっています。詳しくは以前のニュースで

調査をしたのは、西イングランド大学の地域歴史センターの客員研究員であるブライアン・エドワーズ。彼はイングランド南西部のウィルトシャーの歴史と、ストーンヘンジなど地元の名所を専門に研究している歴史家です。

「僕は毎日、ウィルトシャーに関連する新しい資料をオンラインで30分から1時間かけて調べていました」

2023年3月4日も同じでした。彼は自宅のパソコンでインターネットを閲覧し、オークションの出品リストを見て、ビクトリア朝時代(1837年~1901年)に撮影されたストーンヘンジの写真を探していました。

ヴィンテージ写真の取引は盛んだそうで、毎週多くのオークション出品があるという。その日の朝、エドワーズは、デュークス・オークション・ハウスの出品リストの中から、ストーンヘンジと「何人かの人々」の写真が入った1892年の写真アルバムを見つけます。

■実際のオークション・ページ
https://app.dukes-auctions.com/en/auction/aa070323-avenue-auctions/401-reminiscences-of-a-visit-to-shaftesbury-1892

その出品物は『Reminiscences of a visit to Shaftesbury. Whitsuntide 1892. A present to Auntie from Ernest(シャフツベリー訪問の思い出1892年夏至祭。アーネストから叔母へのプレゼント)』と題されていました。

エドワーズは、写真アルバムの中身を紹介する2番目の画像をクリックしました。アルバムの中には横向きに写っている写真もありましたが、10代の頃からレッド・ツェッペリンのファンだったエドワーズはすぐにその中の一枚に気づきました。

■写真アルバムの中身を紹介する画像

(Ernest Howard Farmer/Wiltshire Museum)

■見つかったオリジナル写真

(Ernest Howard Farmer/Wiltshire Museum)

「それを縦にしてみると…すごく驚きました。すぐにそれとわかるものがありました」

それは驚くべき発見でした。アルバム『Led Zeppelin IV』のジャケット・カヴァーに描かれている「薪を背負った老人」の元ネタでした。ロバート・プラントがジミー・ペイジの自宅近くのアンティークショップで発見したのは絵画だと考えられていますが、オリジナルは絵画ではなく白黒写真でした。プラントが見つけたのはオリジナル写真を着色したものだったのです。

エドワーズは、すぐに妻に「自分が正気かどうか」を確認してもらい、そして「信じられないだろうけど」と言ったあとに、音楽の歴史の一部を発見したのかもしれないと妻に説明します。「彼女は大の音楽ファンだったので、すぐに理解してくれました」とエドワーズは言っています。

この写真アルバムのオークションが3日後の3月7日に迫っていたため、エドワーズはウィルトシャー博物館の館長と学芸員に連絡を取り、自分の発見を知らせました。同じくレッド・ツェッペリンのファンである学芸員も、その写真が『Led Zeppelin IV』のジャケットと同じ画像であることを確認します。

エドワーズは「この写真を見た人は誰でも、すぐにピンとくると思います。でも、オンラインでは誰もこの写真に気づかなかった。多くの人がオークション・ページを訪れていましたが、それが何であるかに気づかなかったのです」と話しています。

ウィルトシャー博物館の友人が博物館の代理としてオークションに入札して3月7日に420ポンド(約8万円)でこの写真アルバムを購入しました。

エドワーズは写真アルバムを確保したあと、知らず知らずのうちに世界的に有名な写真を撮影していた写真家は誰なのか? そして写真に写っている老人は誰なのか?を調査し始めました。

「これは私の本業ではありません。私はレッド・ツェッペリンの研究者ではないので」と説明するエドワーズは、ランチタイムや本業の合間を縫って研究を進めました。

写真に写っている年老いた屋根葺き職人の身元を見つけるのは簡単だったという。当時の年鑑や国勢調査の記録を参照したところ、写真アルバムが制作された1892年当時、ウィルトシャーで働いていた屋根葺き職人は40人以下であることを分かったという。

「その後、年齢層を絞り込んで、残ったのが1人。彼の名前はロット・ロングでした」

ロット・ロング(ロングイヤーとして知られることもある)は1823年にウィルトシャーのミアで生まれ、10人兄弟の一人だったという。父親のデビッド・ロングイヤーも屋根葺き職人でした。

エドワーズの調査によると、ロングは1844年のクリスマスにシャーロット・ミルズと結婚し、ふたりには3人の子供がいたという。写真が撮影された当時、ロングはミアのシャフツベリー・ロードの小さなコテージに住む寡夫(妻を亡くした男性)でした。

エドワーズの発見したこの写真は、2024年4月6日から9月15日までウィルトシャー博物館で開催される展覧会『The Wiltshire Thatcher - a Photographic Journey through Victorian Wessex』の一部として一般公開されます。