トニー・ヴィスコンティ(Tony Visconti)は、エイドリアン・エドモンドソンのポッドキャスト番組『Out To Lunch with Ade Edmondson』の中で、
デヴィッド・ボウイ(David Bowie)が食通だったこと、ボウイの死について、
T・レックス(T.Rex)の
マーク・ボラン(Marc Bolan)がレコードを間違った回転数で聴くのが好きだったこと、ボランとの出会いについて話しています。
■デヴィッド・ボウイは食通だった
トニー・ヴィスコンティ:
「デヴィッドは食通だった。明らかにね。彼はおいしいものが大好きで、ベルリンで最高のレストランを見つけては行っていた。昼はランチにサンドイッチを食べたかもしれないけど。
いつも美味しかったよ。ドイツ料理は、僕の中では本当に素晴らしいんだ。夜には豪華なレストランに行って、お金をかけて、おいしい料理を食べた。そこには本当によく行っていたよ。
彼と僕とイギーは、お酒のせいで頭が回らなくなってしまうことはなかったよ。セッション中にビールを1杯飲むくらい。夜には、夕食と一緒にワインを1杯。だから、とても文化的だったんだ。とてもよく食べたよ。デヴィッド・ボウイのアルバムを作るということは、食通のアルバムを作るということなんだよ」
エイドリアン・エドモンドソン:
「想像もしなかったよ。彼はいつも痩せていたから、あまり食べないんだろうなと思っていたんだ」
ヴィスコンティ:
「彼はおいしいものを食べている。ピザを食べているところを見たことがない。いつも高級レストランに行っていた。パンもあまり食べない。彼は自然に炭水化物を避けていたんだよ。特別なダイエットをしていたわけじゃない」
■デヴィッド・ボウイの死について
ヴィスコンティ:
「彼が亡くなる2週間前に話をした。彼は... 彼は楽観的なふりをしていたと思う。自分の寿命が尽きそうなことは知っていたと思うけど、クリスマスシーズンが終わったらすぐに手術に行って、ずっと良くなるだろうと言っていた。彼が亡くなったのは新年を迎えてすぐのことだった。
そのときは、激しく打ちのめされたよ。彼が電話をかけてきて(亡くなる2週間前に話しをしたのは)、みんなに大丈夫だと安心させて、実は別れを告げていたのだと、他の人たちから聞いた。そのときは、彼が僕に別れを告げていたとは気づかなかった。
彼は、おじいちゃんになるのがとてもうれしいと言っていた。僕は“わあ、やったね”と思った。僕はまだ祖父じゃなかったからね。素晴らしいニュースだった。
彼はとてもいい人だった。いい家庭人だった。本当にいい友人だった。そして、彼は決して僕に悪いことをしなかった。誰に対しても公平だった。彼は遺書に、もし自分のアルバムが再リリースされたり、リミックスされたりすることになったら、プロデューサーがまだ生きているなら、彼(ヴィスコンティ)に最初にやらせるようにと残していた。彼にやらせるんだ、と。
彼が亡くなってから、僕はその特権を持っている。『Low』のリミックスは僕がやった。あんなにいい人、他にいる? ロックの世界であんなにいい人はそうそういないよ」
■マーク・ボランとの出会い
ヴィスコンティ:
「マーク・ボランは誰も持っていないような声を持っていた。彼が言っていたのは、昔のブルース・シンガーを間違ったスピードで聴いていたということだった」
エドモンドソン:
「スピードを落として聴いていたのか、それとも速くして聴いていたのか?」
ヴィスコンティ:
「彼は45を買うと78でかけていた。彼はそれが大好きだった。彼はR&Bや女性ヴォーカリストの音楽を買っていた。
小さなアンダーグラウンド・クラブがあって、彼はそこで専門的なアンダーグラウンド・ミュージックを演奏していた。中に入ると暗くて、誰もいないと思うぐらいだった。下を見ると、みんな床に座っていた。そして、ステージの上にあぐらをかいて座っているマークがいた。彼は立っていなかった。マークのところに行ったら、マークは僕に言った...彼はすでにたわごとばかり言っていた。
彼は“今週、俺たちのところに来たプロデューサーは君が8人目だ”と言っていた。彼は“ジョン・レノンがこの前ここにいた”とも言っていた。全部ウソだった。
彼は“とりあえず名刺をもらうよ”て言い、僕の名刺を見ると“デニーの下で働いているのか”と言ったので、僕は“そうだよ、(プロデューサーの)デニー・コーデルの下で働いているんだ。君と一緒に働きたいと思っているよ”と言った。
翌朝10時頃、かなり早い時間にオフィスに行った。僕が“昨夜、この奇妙なバンドを見たんだ。すごくクールだったよ。あのね、男がすごい変な声で歌うんだ。音楽は本当にアンダーグラウンドなんだよ”と言うと、彼(デニー)は“ああ、わかった、じゃあ調べてみよう”と言った。その後、電話が鳴った。マークは通りの電話ボックスにいた。
“もしもし、マーク・ボランです。デニー・コーデルのオーディションを受けてもいいですか?”と言うと、するとデニーは“ああ、いいよ。トニーもここにいる。こっちに来てくれ”と言った。そして、彼は5分でそこに来た。
彼は中に入ってきて、前の晩に座っていたカーペットを持ってきていた。彼はいつもその小さなカーペットの上に座っていた。それを広げて床に敷いて座った。
マークはオーディションを受け、そして彼は帰った。僕は“どう思う?”と尋ねると、(デニーは)“いいね。とても風変わりだ。彼をアンダーグラウンド・グループの象徴として迎え入れるかもしれない”と言っていた」