ローリング・ストーンズ『Dirty Work』の制作をプロデューサーのスティーヴ・リリーホワイトが回想

ローリング・ストーンズ（The Rolling Stones）の1986年アルバム『Dirty Work』は、ミック・ジャガー（Mick Jagger）とキース・リチャーズ（Keith Richards）の関係が険悪な時期に創り出された作品でした。このアルバムをプロデュースしたスティーヴ・リリーホワイト（Steve Lillywhite）が本作の制作をYouTubeチャンネル「Produce Like a Pro」の新しいインタビューの中で振り返っています。

リリーホワイトは途方もなく長いジャム・セッションを回想してこう話しています。

「スタジオは1月1日からパリで予約していた。もちろん、1月1日には誰も到着しなかった。数人のローディーが到着していたかもしれない。その後、機材が届き、1月4日にキースとロニー（ウッド）が到着した。他は誰もいない...。彼らは真夜中にスタジオに入り、3時間にわたって12小節のブルースをジャムり続けた。夜中の3時になると、エンジニアたちは少しきつくなってきた。キースとロニーは完全に目が覚めている。彼らはコントロールルームに入ってきて“よし、これ（今やった3時間のジャム）を再生してくれ”と言う。3時から6時まで、2人はそこにいて、この時点でエンジニアたちは疲れきっていた。

そして朝の6時になると、キースは“それをカセットでくれないか？”と言う。それから、6時から9時まで、彼らはまた演奏するんだ（笑）。

このとき、バンドにはある種の亀裂が起きていた。ミックとキースが口をきいていなかったことは、よく知られていた。ミックはファースト・ソロ・アルバムをリリースしたばかりで、親しみを込めて“あのディスコ・アルバム”と呼ばれていたよ」

リリーホワイトが説明するように、この2人の関係の混乱により、エルトン・ジョンがミック・ジャガーに推薦するまで、ローリング・ストーンズはレコーディングの数ヶ月が経ってもプロデューサーが決まりませんでした。

リリーホワイトは、ストーンズの長いジャム・セッションを行うレコーディングの習慣について、「私が（プロデューサーとして）そこに着くまでに、彼らはバカげたジャムで1,000本のカセットを使い果たしていた。物事がわからなくなるんだよ」と話しています。

リリーホワイトは、ストーンズと一緒に仕事をした経験を振り返って、1981年アルバム『Tattoo You』に収録されたレゲエ曲「Start Me Up」の、よりロックなヴァージョンがどうして失われてしまったのか、ようやく理解できたと振り返っています。バンドがアルバムに収録するヴァージョンに落ち着くまでに50曲以上もレコーディングしていたからだと話しています。

リリーホワイトは『Dirty Work』の作業から多くのことを学んだと語る一方で、笑いながら「いつも言っているんけど（これは）ローリング・ストーンズのアルバムとしては最悪だった....次のアルバムまではね」 と述べています。