チャーリー・ワッツ(Charlie Watts)は、
ローリング・ストーンズ(The Rolling Stones)のドラマーとして最もよく知られていましたが、ステージを離れると現代文学の熱心なコレクターでした。
彼の蔵書には、F・スコット・フィッツジェラルドの『グレート・ギャツビー』やアーサー・コナン・ドイルによるシャーロック・ホームズシリーズのひとつ『バスカヴィル家の犬』のサイン入り初版本など、何十冊もの貴重な初版本がありました。
彼が亡くなってから2年経った今、蔵書の一部がオークションにかけられることになりました。また同じワッツのジャズ記念品のコレクションも売りに出されます。
オークションで最も高値が予想されているのは『グレート・ギャツビー』のサイン入り初版本で、予想価格は20万ポンド~30万ポンド(約3650万円~約5470万円)。
The first edition of The Great Gatsby (c)CHRISTIE’S IMAGES LIMITED 2023
また、イヴリン・ウォーが1944年に友人たちに送り、コメントを求めた『ブライズヘッド再訪』の校正刷りも売りに出されます。ウォーはその後、小説にいくつかの変更を加え、結末を書き直したり、名前を変えたりしました。
この他、アガサ・クリスティー、PG・ウォードハウス、ジェイムズ・ジョイスの希少本や初版もあります。
ワッツの伝記『Charlie's Good Tonight』を執筆したポール・セクストンは英BBCの取材に、こう話しています。
「彼はこれらを所有することに大きな喜びを感じていました。彼は家にいる時間を大切にしていましたし、旅先でも本を読んでいました。文学は彼にとって非常に重要な部分でした。彼がそれらを手に入れたのは、それらが価値のあるものになると知っていたからではなく、ただ、専門家の助けを借りてオリジナルの初版本を探し出し、これらの偉大な作品を所有することに大きな満足感を得ていたからだと思います」
ワッツの情熱は本だけではなく、アメリカ南北戦争の記念品、アンティークの銀食器、ヴィンテージカー、ドラムセット、エドワード8世のサヴィル・ロウのスーツのワードローブなども収集していました。
しかし、彼の人生最大のこだわりはジャズでした。
彼のお気に入りのひとつはジェリー・マリガン・カルテットの『Walkin' Shoes』で、チコ・ハミルトンのドラミングをフィーチャーしており、ワッツはバンジョーのネックを外してワイヤーブラシでボディを演奏することでそれを真似ようとしたという。
彼は10代の頃からジャズのレコードや関連グッズを集め始め、そして、ローリング・ストーンズが成功してお金を稼ぐようになると、その収集はさらに加速しました。セクストンは、こう話しています。
「彼はジャズのサウンドだけでなく、ジャズのルックスにも大きな影響を受けていました。名盤のアルバム・カヴァーで、ある人がシャツを着ていた場合、彼はそのシャツを持たなければならなかったのです。それはミュージシャンに対するヒーロー崇拝に近いものでした。彼は自分が彼らと同等であるとは考えていなかったのです」
これらのアイテムの一部は今回売りに出される予定で、特に彼のお気に入りだったサックス奏者、チャーリー・パーカーに焦点が当てられているという。その中には、パーカーのアソシエイテッド・ミュージシャンズ・メンバーシップ・カード、アルト・ブレイク・セッションの契約書、1952年のダウン・ビート賞があります。
またジョージ・ガーシュインの「ポーギーとベス(Porgy and Bess)」の注釈付き楽譜もオークションに出品予定で、予想価格は10,000~15,000ポンド。
オークションは2部構成で、9月15日から29日まではオンラインで行われ、9月28日にはロンドンのクリスティーズ本社でリアル・イベントとして行われます。
一部は、7月25日から29日までロサンゼルス、9月5日から8日までニューヨーク、9月20日から27日までロンドンで展示されます。