デヴィッド・ボウイの長年のベーシスト　ゲイル・アン・ドロシー　「ボウイに“Under Pressure”を歌えと言われたときは怖かった」

デヴィッド・ボウイ（David Bowie）との長期にわたる共演で注目を集め、その後も世界中で数多くのコラボレーションを行っている、ベーシストのゲイル・アン・ドロシー（Gail Ann Dorsey）。ボウイのツアーで、クイーンとボウイのコラボレーション曲「Under Pressure」をボウイとデュエットすることになった時、「この素晴らしい曲をどうやって演奏して、フレディ・マーキュリーのパートを歌えばいいんだろう」と怖かったという。ゲイルは結局「怖くて断れなかった」とBass Playerで話しています。

ボウイとゲイルのデュエットによる「Under Pressure」はアルバム『A Reality Tour』にも収録されています。

「デヴィッドにこの曲を歌えと言われたとき、怖かった。この素晴らしい曲をどうやって演奏し、フレディ・マーキュリーのパートを歌えばいいんだろう、と。怖くて断れなかったのよ。彼は、世界中の人が見たフレディ・マーキュリー・トリビュート・コンサートでのアニー・レノックスとのヴァージョンを私にくれた。それからホテルの部屋に戻って、ベース・パートとヴォーカルを学び始めました」

ゲイルはトラックをテンポダウンし、1セクションずつ作業し、徐々にトラックをスピードアップさせてこの曲を学んだという。

「ゆっくり練習して、徐々にスピードを上げていけば、どうにかうまくいくものです。ある意味、とても機械的なんです。ステージで弾けるようになるまでには2週間かかったし、毎日サウンドチェックで少しずつ練習した。あの曲を学ぶのは、これまでで最もチャレンジングなことのひとつでした」

アルバム『A Reality Tour』にも収録された2003〜2004年のリアリティ・ツアーでは、アルバム『Reality』の楽曲とともに、ボウイのキャリアの中から選りすぐりの楽曲も演奏しました。

「（アルバム『A Reality Tour』を）初めて聴いたとき、涙が出ました。あまりの音の良さに、自分たちだとは思えなかったほど。特に“The Loneliest Guy”のデヴィッドの歌は信じられないほど素晴らしかった。

彼のバンドで何年も演奏してきたのに、彼の歌をちゃんと聴いたことがなかったことに気づきました。ステージの上では、ドラムの音を聞いたり、自分のパートをまとめたり、良いライヴにするために必要なことがたくさんあって、頭の中はフル回転なのね。だから、彼の声が常にモニターから聞こえていて、ヴォーカルのパートがいつ入ってくるかわかっていても、自分のパートを抑えるのに必死で、観客と同じように聴くことはできなかった。彼は史上最高のシンガーの一人だとずっと思っています。シナトラやそのほかの人たちと肩を並べる存在。ヴォーカリストとして、彼は並外れた存在だと思います」

ボウイのキャリアには、あらゆる雰囲気、スタイル、時代の曲があるため、ゲイルは様々なベース・サウンドを呼び出さなければなりませんでした。

「ツアーによっては、週に5、6日のリハーサルを8、10週間続け、9時から5時までスタジオにいることもあった。新しいアンプや別のペダルを試すだけで2、3時間過ごすこともありました。ベース用のエフェクターはあまり好きではないけれど、トーンを絞って丸くコンプレッションするのは好き。ブライトなベースサウンドもあまり好きじゃない。弦をほとんど叩かずにソフトなタッチで弾くと、より大きく、よりオールドスクールなサウンドが得られると思うから。

必要なときにはやるけど、ハードに弾くと音が詰まってしまうことがよくある。そういったモダンなベースはあまり好きではない。美しく作られた楽器だけど、私には少し繊細すぎて、正しいタッチができない。曲にもよるけど。私は指で弾くのが好きだけど、時にはピックが必要な時もある。その判断はオリジナルのレコードを聴いた時にしているのよ」