Canでの活躍でも知られる
ダモ鈴木(Damo Suzuki)のドキュメンタリー映画『Energy: A Film About Damo Suzuki』が英国で公開されました。これを記念して英ガーディアン紙はダモ鈴木にインタビューしています。
ダモ鈴木は2014年に大腸癌と診断され、生存確率10%と宣告されました。鈴木は約30年前の1983年、33歳の時にも同じ癌と診断され、この時は、当時エホバの証人であった鈴木の信仰により、どうしても必要な輸血を受けることができず、命にかかわる事態となりました。2度の癌を克服して72歳になった鈴木は現在、ドイツのケルンで暮らしています。
映画『Energy: A Film About Damo Suzuki』は、2014年から2017年にかけて40回も手術を受けることになる癌との壮絶な闘いを繰り広げながら、終わりのないグローバルツアーを続けようとする鈴木を5年に渡って撮影したものです。
10代で日本を離れ、ヨーロッパを旅し、ヒッピーのコミューンに住んだこともある鈴木は、即興演奏を唯一の音楽とする演奏家です。1983年に癌を克服して以来、休むことなく活動を続け、実験的即興音楽のライヴ演奏を行っています。
鈴木が最もよく知られているのは、クラウトロックの代表格Canのフロントマンとしてですが、Canのレガシー、ノスタルジー、ステータスを利用することは、鈴木にとってほとんど興味のないことでした。映画の中で彼は「僕はクラウトロックでもなければ、ドイツ人でもない」と言い、彼はしばしばCanのことを単に「あのドイツのバンド」と呼び、Canにいた頃については「いつも完全にハイになっていたからあまり思い出せない」と話しています。
鈴木はバンドを脱退した後、10年間は音楽活動を休止していましたが、癌から回復し、教会を脱会した後に再び姿を現しました。彼はすぐに音楽の進歩を永遠に求め続けるようになったという。「過去にしがみつくことに興味はない。それを変えることができないからね。変えられないのなら、そこに時間を費やしたくはない。今は新しいものを創造することができるが、過去ではそれができない」
鈴木は実験的なアプローチを長年続けており、停滞を避けるために、しばしば1時間から2時間の長い演奏による即興を受け入れてきました。「同じ曲を何度も弾くのは好きじゃない。繰り返しはつまらない。すべてのパフォーマンスが唯一無二な体験であるべきなんだ」。また彼は、自分の芸術哲学を説明するために、サッカーに例えて説明しています。「試合が始まる前にスコアは分からない。僕にとって音楽はスポーツと同じようなもので、事前に結果がわからないものなんだよ。コンサートに来る人は予想をしてはいけない。僕たちが一緒に経験する、コミュニケーションであるべきなんだ。音楽は常にコミュニケーションなんだ」
鈴木は自ら音楽を録音したり、アルバムをリリースすることは行っていません。彼と一緒に演奏するバンドがライヴ・アルバムをリリースしたいと望むなら、それは彼らの自由ですが、「お金は必要だけど、音楽で食べていくことが僕の人生の目的ではない。音楽はビジネスとして考えるには、あまりにも重要なものすぎる。僕はマネージャーと仕事をしたことがない。僕は一人でやっている。僕には完全な自由があり、誰に対しても責任を負わない」
彼はこのドキュメンタリーを、音楽映画というより、希望のドキュメントとしてとらえています。「重病を患う人たちへのメッセージ。僕は生き延びたし、この映画を観た人が、モチベーションや強さを見出してくれるかもしれない。病気の時は、まるで刑務所にいるような気分になることもあって、2週間も何も食べられなかったこともあった。でも今は、本当に明るい未来が見えている。僕は何も恐れない」
パンデミックが発生してから彼はツアーを行っておらず、現在は創作活動を別の場所に移しています。「絵を描いているんだ」「Canに入る前は漫画家になりたかったんだけど、50年くらい前にあきらめたんだ。子供の頃は画家になるのが夢で、72歳になった今、それをやっているんだ」
以下は以前に公開された映像
トレーラー映像
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