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デヴィッド・ボウイ『ジギー・スターダスト』50周年、スパイダース・オブ・マーズのウッディが当時を語る

2022/07/09 20:56掲載
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David Bowie / The Rise and Fall of Ziggy Stardust and the Spiders from Mars
David Bowie / The Rise and Fall of Ziggy Stardust and the Spiders from Mars
デヴィッド・ボウイ(David Bowie)のアルバム『The Rise and Fall of Ziggy Stardust and the Spiders from Mars』の発売50周年を記念して、英BBC Radioの番組はスパイダース・オブ・マーズの唯一の存命メンバーであるドラマーのミック“ウッディ”ウッドマンジーに話を聞きています。

ウッドマンジーはインタビューの中で、『ジギー・スターダスト』のレコーディング過程、スパイダース・オブ・マーズとボウイの関係、そして1972年から1973年のツアー後に解散に至ったことを振り返っています。

ウッドマンジーは『ジギー・スターダスト』の大部分を2週間足らずで仕上げたと回想しています。

「2週間でレコーディングとミキシングをして、ケン(スコット、プロデューサー)の仕事も全部終わっていた。あまりテイクを重ねなかったんだ。『Man Who Sold the World』(1970年)のときは、かなりのテイクをやったんだけどね。でも『Hunky Dory』(1971年)はテイク数が少なくて“『Ziggy』はちょっと違うかもしれない”と思ったんだけど、違ったんだ。4回することはなかった。普通は、1テイク、2テイク、3テイクと、テイクを重ねていくものなんだけどね」

順調なレコーディング・プロセスにもかかわらず、ボウイのレコード会社は、当初はあまり良い印象を持っていなかったという。ウッドマンジーによると、レコード会社は『ジギー・スターダスト』には適切なリード・シングルがないと感じたからだという。その結果、ボウイはチャック・ベリーの「Around and Around」のカヴァーをアルバムから外し、代わりにヒット・シングル「Starman」を週末に書き上げることになったとのこと。

「アルバムが完成したとき、“ワオ、これは本当にいい、レコード会社はこれに夢中になるだろうな”と思ったんだ。そのあと“アルバムはリリースしない”というメッセージが返ってきたんだ。“なんで?”“シングルがないから”“冗談だろ!”って感じだった。レコーディングが終わったばかりなのに。

それでボウイは“わかった”と言ったんだ。その次の週末、彼は1日で“Starman”を書き上げたと思う。彼は僕たちを呼んで“今これを書いたところだ”と言って“これでいいだろう”と言ったんだよ(笑)」

スパイダース・オブ・マーズとボウイの関係を振り返って、ウッドマンジーはこう語っています。

「ボウイはボスだったんだ。次に何をやるか、どのテイクを使うか、どのヴァージョンでやるかなど決めていた。でも、残りの部分は、各自が自分のパートをきちんとこなせるかどうかにかかっていた。ボスに嫌な顔をされたくなければね、わかるだろ? 僕たちは本当はセッションとして続けたかったんだけどね。

レコーディングの時は飲みに行くこともなかった。何もしなかった。ただ、コーヒーをたくさん飲んだ。たまにボウイは“今夜はクラブに行こう”と言っていた。僕らは“素晴らしいね!”と言って、外出すると翌日は少し寝ぼけ眼になってしまうけど、一緒に行動していたんだ」

『ジギー・スターダスト』ツアー最終公演の終盤、ボウイはスパイダース・オブ・マースを解散させ、ジギー・スターダストというキャラクターの終焉を宣言します。

ボウイの最終的な意思を知らずとも、ツアーが進むにつれてボウイとの距離が縮まっていくのを感じたかと問われたウッドマンジーは、こう答えています。

「最後のアメリカ・ツアーを通じて、それはあったよ。だって、ボウイとはいつも同じホテルで、どの都市でもアメリカのホテルのフロアを占領していたんだ。フロア全体を貸切っていたので、ドアはすべて開けっ放しだった。ライヴの後はホテルのフロアでパーティをするんだけど、それがまた最高で......。

彼は僕らよりずっと多くのことをやっていた。だから、そのことは理解できる。でも、そのせいでコミュニケーションは減ってしまった。最初のツアーでは、ステージから降りると、まるでギャングのようだった...。リムジンに飛び乗ったり、クラブに行ったり、パーティに行ったり、そういうことをやっていた、ツアー中はまさに“仲間”だったんだ。でも、それが崩れてしまったんだ」。

ボウイは、パフォーマンスをしていないときでもキャラクターから抜け出せなくなることがしばしばあったと述べていましたが、ウッドマンジーは、ツアーが進むにつれて「ジギーが支配している」ことに気付いたと話しています。

「彼がジギーとして大きくなればなるほど、ジギーが支配しているような気がしたんだ。ジギーと一緒にタクシーに乗ると、ジギーはお金を持ち歩かないから、僕がお金を持ち歩く必要があったんだ。別人だったんだよ。彼に質問しても、彼がまだジギーの世界にいたら、望むような答えは返ってこないかもしれないんだ」