写真左より鈴木研一さん(人間椅子)、ヘドバン梅沢編集長
9月22日「ヘドバンVol.15」発売記念トークイベントがヴィレッジヴァンガード渋谷本店にて開催された。ゲストは人間椅子のベーシスト鈴木研一さん。鈴木さんが開催されているDJイベントの特別編ということで、「喫茶ナザレス・ヴィレヴァン渋谷出張編」と題され、20時からのスタートとなった。
当日はステージ上に鈴木さん、ヘドバン梅沢編集長が座り、雑談をしながら入場するファンを迎えるという構成。
鈴木:座っていただいてすみません。雨なのに座るっていうのはあり得ない話なんですけど。
梅沢:女性率が高いですね、ナザレスもこんな感じですか?
鈴木:そうですね。で、なぜ座っていただいたかというと後ろにあるスクリーンでできたての新しいプロモ・ビデオ(「虚無の声」)を見ていただくためなんですよ。
梅沢:今日の朝できたんですよね。鈴木さんはもう見ました?
鈴木:僕はいつもサラッと見て終わるので。ちょっと直しをお願いしたら変に直ってきたので元に戻してもらいました。
梅沢:(笑)、でも今までの人間椅子とはちょっと違う。
鈴木:凝った作りになってます。
梅沢:ハードロック・バンドでプロジェクションマッピングを使ったのはないんじゃないですか。
鈴木:撮ってるときはどう撮れてるかわからないんですよ。やけに眩しかったのだけは覚えてます。あ、イベントはまだ始まっているわけじゃないんで、でも始まってもこんな感じです(笑)。
梅沢:ナザレスみたいな、ちょっとだらだらした感じで。
鈴木:お、だらだらしてますか?(場内爆笑)
梅沢:だらだらというか、まったりした感じで。
鈴木:一応みんなが飽きないように工夫してやってるんだけど。
梅沢:たこ焼き作るDJっていないじゃないですか。
鈴木:おでんもたこ焼きもクジ引きもやったし、だんだんネタが尽きてきたんだけど、ま、リクエストがあればやりますよ。
梅沢:おにぎりも作りましたよね。
鈴木:作りましたけど、食中毒が怖いから。
梅沢:そうですね。
鈴木:で、これどうやって始まるんですか?(場内爆笑)
梅沢:どうですか?もう大丈夫ですか?(係から「あと2分」の声)じゃ、あと2分だらだらタイムで。で、もう言っちゃいましょう、今日人間椅子のアルバム『異次元からの咆哮』のサンプル盤ができ上がってきました。
鈴木:そうそうそう、これ(アルバムを取り出す)。(場内大拍手)。これヴィレヴァンで買うと僕がデザインした巾着が付きます。こんな時代に「黒ヒゲ危機一発」みたいな(場内爆笑)、人間椅子のメンバーそれぞれがこれから刺されんとする巾着です。
梅沢:おお〜、これすごいレアじゃないですか。
鈴木:ヴィレヴァン限定で。
梅沢:で、このCDのジャケットですが、まだ表しか見せていないんですけど。
鈴木:裏がいいんです。
梅沢:後で弘前取材で僕らが撮ってきた写真を見せようと思うんですけど(この間にジャケットを持った鈴木さんがステージ前方まで出ていき裏ジャケを見せると場内は騒然となる)
鈴木:実際に夜の街を歩いているねぷたを、カメラマンがサササと行って撮った写真です。
梅沢:そろそろ始めていいみたいなので。
鈴木:じゃ始めます。
梅沢:宜しくお願いいたします。
鈴木:今日は土砂降りの雨の中ありがとうございます。(場内大拍手)
梅沢:みなさん「ヘドバン」買っていただきました?(場内大拍手)人間椅子の頁をもう読んだという方(あちこちで手が挙がる)、ありがとうございます。1人一万字×3人ですから。
鈴木:どうしてこんなに人間椅子を持ち上げて…。
梅沢:いやいやいや、金銭的なものは一切発生してませんから(笑)。
鈴木:別に僕らは綺麗所ではないし。
梅沢:今の日本のハードロックのバンドの中で、人間椅子は横幅が一番広いんじゃないかと思うんです。日本のハードロックやメタルって密教な感じというか、結構閉塞的な感じがあるじゃないですか。人間椅子もサウンドは一貫してブレずにハードロックを追求していますし。でも、バンドの姿勢の柔軟性やファン層も含めてここ数年で横にどんどん広がっているのが人間椅子かなと思うんです。この広がり方は現象に近い感じもするんですよね。
鈴木:おお、その先見の眼が正しかったかどうかというのは…。
梅沢:いや、だってZeppダイバーシティですよ。
鈴木:やるのは簡単ですよ(場内爆笑)、みんなも是非ともお知り合いとお誘い合わせて来てくださると。
梅沢:Zeppの次の段階に。
鈴木:次の段階は見たいけど、Zeppがもしガラガラで終わったら、きっとウ〜〜ンってなる。
梅沢:鈴木さん、まだガラガラになる恐怖感はあるんですか?
鈴木:実はもうないですけど。(場内爆笑)僕ねぇ、ずいぶん長い間ダイバーシティでやるというのを知らなくて、梅沢さんに聞いて初めて知った。(場内爆笑)
梅沢:あの取材のときに。
鈴木:ダイバーシティっていうのがすごく大きい所だと知らなくて、O-EASTをちょっと大きくしたくらいかなと。みなさんもそうだと思うんですけど、僕は行ったことないので。
梅沢:(場内に)行ったことありますよね(かなりの数が頷く)
鈴木:僕らのお客さんですから、そんなダイバーシティでやる音楽は好きじゃないかな…と。(場内爆笑)
梅沢:ダイバーシティの音楽はどんな音楽なんですか?
鈴木:なんかミクスチャーとか。(場内爆笑)
梅沢:(笑)でも、人間椅子がダイバーシティを埋めたら、ある種革命が起きると僕は思うんですよ。ハードロックにもまだ未来は先にあるんだぞ!って。
鈴木:僕ら人間椅子は70年代ハードロックをやってるじゃないですか。僕は凄くいい音楽だと思っていて。
梅沢:もちろんです。
鈴木:で、世の中のハードロック好きを全員集めれば相当埋まると思ってるんです。
梅沢:鈴木さん、弘前取材のときも一緒にねぷた見ながら言ってましたものね。
鈴木:可能性を持ってるお客さんはいっぱいるけど、そういう音楽に未だ出逢ってない人がたくさんいると思うんです。まずはそういう人たちにレッド・ツエッペリン、ディープ・パープル、ユーライア・ヒープを聞いていただいて、日本にも似たようなバンドがいるじゃないか!ということで人間椅子に辿り着く…という手順を踏むべくナザレスというイベントを。
梅沢:なんかすごく上手くまとめましたね。ナザレスは若い子は来てますか?
鈴木:いやぁあまり来ませんね(場内爆笑)、僕も歳ですから、お客さんも同じようなペースで歳をとってて年齢層は高い。
梅沢:じゃあ20代とかの人間椅子の新規のファンを呼ぶように。
鈴木:20代枠つくりますかね、ナザレスに。
梅沢:では、この辺りで皆さんも見たいと思いますのでPVをかけて…(ところが音声がヴェノムや初期ブラックメタル状に割れて歪んで出てしまうので、機材を再調整して後半で見ることになる)。
梅沢:では先にヘドバンが弘前取材で撮ってきた写真を見ながら、取材のときの話をしたいと思います。最初に和嶋さんの写真見ます?
鈴木:和嶋くんも行ったんだっけ?(場内騒然)
梅沢:いや、和嶋さんの写真は荻窪の旅館で撮ったのを。結構いい奴があるのでそれを見ながら。
古い建物の前に佇んだ和嶋さんや、歌詞に煮詰まると行く昭和で時間が止まったような荻窪の旅館でのショット、さらに㊙の次号掲載予定の写真、ねぷた関連の写真などが映しだされた。
鈴木:今回のヘドバンの取材は、僕の帰省に合わせてカメラマンと梅沢さんが来てくれたんです。(ねぷたの写真を見ながら)この目玉や血しぶきの感じは絵師の三浦呑龍さんだから描けたものなんです。他の人も上手いんですけど、僕は高校2年の頃から呑龍さんのファンでなんか思う所があるんです。僕の「ねぷたのもんどりこ」の歌詞にも呑龍さんの描いた世界は出て来ます。弘前ねぷたの絵では女の人が吊るされたり、生首が出てきたりして、伝統なんでしょうね。呑龍さんの絵の凄さは黄色が金色に見えるところ、他の人が描くと黄色は黄色にしか見えない。素晴らしい絵師さんなんですよね。
梅沢:鈴木さんはこのねぷたの生首を見て生首好きになったんですよね。
鈴木:生首好き……ですね(笑)。
梅沢:これはヘドバンのインタビューに載ってるんですけど、鈴木さんは「死ぬ時は生首になりたい」って。
鈴木:切られた瞬間から、生首の意識がなくなるまで1分くらい時間があるっていうんですね、それをちょっと味わってみたくて。その1分間って貴重だと思うよ、人の一生と同じくらい貴重な時間だと思う。あぁこうだったのか…と思って、あぁすっきりした、と思って死ぬ。
梅沢:そんなすっきりはしないかと…(笑)。
鈴木:いやいやいや、どうせ死ぬならすっきりと。あぁタバコの火消したかな……って思いながら死ぬのって嫌じゃないですか。
梅沢:ま、斬首されるわけですから。
鈴木:痛いのは嫌ですけど(笑)。だから剣の達人にスパッと斬ってもらって。今からお願いしとこうかな。
梅沢:ま、そういう生首を見続けてきたからこそ。
鈴木:できた曲もありますね、「地獄の球宴」っていう。今回の『異次元からの咆哮』では「地獄のヘビーライダー」っていう地獄シリーズのバイクの曲がありますので楽しみにしてください。
梅沢:この中でねぷたをご覧になった方いらっしゃいます(あちこちで手が挙がる)
鈴木:ねぷたを見てこそ、人間椅子のファンとしてコンプリートなものに(笑)、僕、夏は絶対に弘前に帰りますから、絶対ライヴはないんですよ、だから有休を取って是非ともいらしてください。
このあと鈴木さんの実家での室内写真が公開された、70年代ハードロックの名盤アルバムの帯がズラリと貼られた部屋や、愛読していた80年代のミュージック・ライフ誌に囲まれた写真などを、その時代に帰ったかのように説明する鈴木さんだった。さらに「人間椅子全作品アナログ化、ボックス計画」「特製人間椅子ステッカー付ヘドバン」などの夢に話が及び、鈴木さんがレコードを買っていたレコード店『タカムラ』の齊藤 浩さんがやっているAsylum Bar、和嶋さんが立ち上げメンバーの一人だったライブハウス マグネットなどの写真が紹介された。人間椅子は11月2日マグネットでアルバム・リリース記念のライヴを行う。
梅沢:ではそろそろ、次のDJタイムに行かないといけない時間なので。
鈴木:PVは見れますか?
梅沢:大丈夫とのことなので、では「虚無の声」を。
鈴木:大きな音で。
梅沢:初期ブラックメタルじゃない音で。
「虚無の声」上映
鈴木:これがアルバム『異次元からの咆哮』の1曲目です。リズム録りは僕ら7日間使ってやるんですけど、6日目までこの曲は断片的にしかできてなくて7日目に和嶋くんが“こんなのできました”ってMTRで録ってきた音源を持って来て、僕とノブくんは心の中で“マジかよ”って(笑)。それでスゴく難しいフレーズとかが入ってたんですけど、その日に録るしかない背水の陣で(笑)やりました。
梅沢:そんなことがあったんですね。でも、最先端技術(プロジェクションマッピング)と人間椅子って初ですね。
鈴木:目がチカチカしますけど、最先端は若い人向けですよね。
梅沢:新鮮ですよね。
鈴木:和嶋くんは“世の中の流れに添ったビデオを作る”って言ってたから(梅沢さん始め全員大爆笑)。
梅沢:ではそろそろDJタイムに移りますが。
鈴木:あの、その前に、今回のヘドバンの記事のページの周辺というか欄外に、人間椅子がこれまで出したアルバムの曲目だけじゃなくて、ライターの方が解説を書いてくれてるじゃないですか、これがスゴく面白くて。
梅沢:ホントですか。
鈴木:こんなことしてたんだ〜と思って。知らなかったことも色々あって。
梅沢:えぇ〜!(笑)、知らなかったんじゃなくて記憶から抜けてる。
鈴木:この解説を書いてくれた奥村さんの原稿って僕好きです。分ってる感じが。
梅沢:人間椅子の過去作って書けるライターさんがなかなかいなくて。でも鈴木さんは解説を読みながら記憶を辿る感じですね。完全にファンの人の方が良く知ってる(笑)。
鈴木:イントロ当てクイズやったらメンバー全員負けます。(場内爆笑)
このあと、第二部としてナザレスのDJタイムとなり、鈴木さん、梅沢編集長それぞれの選曲を交互にかけて行く形で行われた。
・VENOM「Witching hour」(Welcome To Hell)鈴木
・MOTORHEAD「whiplash」(Under Cover)梅沢
・Demon「Night Of the Demon」(Night Of Demon)鈴木
・MYRKUR「Gladiratrix」梅沢
・Black Widow「Come to the Sabbat」(Sacrifice)鈴木
・人間椅子「地獄のヘビーライダー」(異次元からの咆哮)梅沢
梅沢:最後の曲は本邦初公開!です。
鈴木:イントロのバイクの音を再現した和嶋くんのファズ・ギターよかったでしょ。あれは最初和嶋くんのバイクの音を使ったんだけど、意外としょぼくて(場内爆笑)、ギターの方がカッコいいってなって。いやぁ渋谷の地下(ヴィレッジヴァンガードは地下2階)でこの曲が流れてうれしいな。
梅沢:アルバムの中で一番速い曲ですよね。
鈴木:まぁそうですね。
梅沢:スラッシュな感じもあって。
鈴木:この曲はライヴでやるのが楽しみなんですよ。(場内大拍手)なんかかしこまった感じじゃなくて走った感じで。
梅沢:爆音で。
鈴木:そうそう。
梅沢:もうライヴでやる練習は?
鈴木:ライヴでやる予定はありますけど、まだ練習はしてません(笑)。
梅沢:では、そろそろ時間なんですが、ヘドバンでまたDJイベントを企画しているので、鈴木さんオファー出していいですか?
鈴木:やりましょう、やりましょう。(場内大拍手)
梅沢:東京でもやれるように頑張りますので、宜しくお願いいたします。
鈴木:宜しくお願いいたします。(場内大拍手)
この後プレゼントの抽選があり、さらに握手会が行われ、鈴木さんの手作りテルテル坊主が全員にプレゼントされた。