
忘れがたき日々 ジョン・レノン,オノ・ヨーコと過ごして
書籍『忘れがたき日々 ジョン・レノン,オノ・ヨーコと過ごして』(著:ジョナサン・コット)が岩波書店から12月4日発売。
本書では、ローリングストーン誌創刊以来の中心的なライターが1968年の出会いからジョンとヨーコと過ごした日々を二人の肉声ともに回想。1980年12月8日、凶弾に倒れたジョンの3日前の貴重なインタビューも収録。アーティストとして時代を切り開き、人間として自身の内面に真摯に向き合ってきた二人の素顔が描かれます。

●『忘れがたき日々 ジョン・レノン,オノ・ヨーコと過ごして』
ジョナサン・コット 著
栩木 玲子 訳
■体裁=四六判・上製・256頁
■定価(本体 1,900円 + 税)(未刊)
■2015年12月4日
■ISBN978-4-00-061091-9 C0073
■ 編集者からのメッセージ
本書の著者ジョナサン・コット氏は,アメリカの代表的な音楽雑誌『ローリングストーン』の創刊以来の中心的なライターです.ボブ・ディラン,グレン・グールドなど,著名な音楽家への緻密なインタビューで定評があります.
本書は,著者が,1968年9月に,初めてジョンとヨーコにインタビューして以来,二人とともに過ごした日々を,その肉声とともに回想するエッセイです.
本書には,主に5つのインタビューが収められています.
① 1968年9月,ジョンとヨーコがともに活動するようになった直後.
② 1970年12月,ビートルズが解散し,ジョンがソロ活動を開始したころ.
③ 1971年3月,ジョンとヨーコが活動の拠点をニューヨークに移したころ.
④ 1980年12月5日,ジョンが亡くなる3日前.
⑤ 2012年3月,スウェーデン・ストックホルムでのヨーコへのインタビュー.
いずれのインタビューでも,ジョンの音楽的なルーツや,アーティストとしてのヨーコの思想などが率直に語られています.①では,著者は,ジョンとヨーコとともにアビーロードスタジオを訪れます.ビートルズは『ホワイト・アルバム』の制作中で,その様子なども垣間見られます.
なかでも貴重なのは,④のジョンが凶弾に倒れる3日前のインタビューでしょう.これは,その年にリリースされた新作アルバム『ダブル・ファンタジー』の発売記念のためのインタビューでした.しかし,コット氏は,12月8日にジョンの訃報を友人から知らされることとなります.『ローリングストーン』新年号に,ジョンの追悼記事を書くべく,インタビュー・テープを聴きかえしたものの,結局,テープを全面的に書き起こすことなく,部屋のクローゼットにしまいこんでしまったといいます.2010年,ふと思い立ってテープを聴きかえしたことが,本書を執筆する大きなきっかけとなっています.
このインタビューでは,ジョンは,それまでの自身の活動を振り返って,自分がつくってきた曲への思い,自分にとってビートルズとは何だったのか,などを率直に語っています.そして,1975年の息子ショーンの誕生を機に,子育てに専念するため音楽活動から離れていたジョンが,再び音楽活動をはじめたことへの意欲,来るべき新しい時代への希望が伝わってきます.
また,⑤のヨーコへのインタビューでは,アーティストとしての生き様,現代への心強いメッセージが語られています.
今年(2015年)は,ジョンの生誕75年,没後35年に当たります.音楽やアート作品はもちろん,「WAR IS OVER !」のメッセージなど,彼らの活動はいまも人々に大きな影響を与え続けています.自分の内面に真摯に向き合い,時代を切り拓いて来た二人の魂の声に耳を傾けてみてください.
(編集部:田中宏幸)
■ 本書に寄せて――オノ・ヨーコ
ジョナサン・コットは私たち仲間内では才能あふれる人物として知られている.『ローリングストーン』が彼に私たちへのインタビューを何度か注文し,それらのインタビューを集めたのが本書だ.正味でそれだけ.それを読んで私は思った. 「ワオ,私たち悪くないじゃない!」他のほとんどのライターは私たちをセンセーショナルに扱おうとした.そうしないとつまらなくて誰も本を買わない,とでも思ったのかも! その結果,彼らのインタビューはほんとうの私たちとはおよそかけ離れたものとなった.
私はこれまでジョンとヨーコについての本を推薦したことは一度もない.でもこの本を読んで,私は何度も泣きそうになった.私の耳にはジョンの声が聞こえたし,心の中にいる彼を感じることができた.レノンのファンにとってもいい本だと思う.それに……そう,私は脇役として描かれているし(はい,はい,そうですとも!)
インタビューを通して見えてくるのは,愛し合っている二人がときに大胆な発言をしながら,互いを守り合おうとする姿.じつはね,みなさん,私たちはほんとにそうだったのよ! ということで本書をどうぞお楽しみあれ.
■ 著訳者略歴
ジョナサン・コット(Jonathan Cott)
1942年ニューヨーク生まれ.作家,詩人.『ローリングストーン』創刊以来の編集者.ボブ・ディラン,シュトックハウゼン,グレン・グールドなど,音楽家へのロング・インタビューや緻密な評伝などを手がける.著書(邦訳書)に『レナード・バーンスタイン ザ・ラスト・ロング・インタビュー』(アルファベータ),『グレン・グールドは語る』(ちくま学芸文庫),『奪われた記憶――記憶と忘却への旅』(求龍堂),『さまよう魂――ラフカディオ・ハーンの遍歴』(文藝春秋),『転生 古代エジプトから甦った女考古学者』(新潮社),『子どもの本の8人――夜明けの笛吹きたち』(晶文社)などがある.ニューヨーク在住.
訳:栩木玲子(とちぎ れいこ)
法政大学教授(アメリカ文学・文化).翻訳家.訳書にアリス・マンロー『愛の深まり』(彩流社),トム・マッカーシー『もう一度』(新潮社),ジョイス・キャロル・オーツ『とうもろこしの乙女,あるいは七つの悪夢』(河出書房新社),トマス・ピンチョン『LA ヴァイス』(共訳,新潮社),著書に『現代作家ガイド1 ポール・オースター』(共著,彩流社),『国境を越えるヒューマニズム』(共著,法政大学出版局)などがある.