英バンド、
エンブレイス(Embrace)の8年ぶりの新作スタジオ・アルバム『Embrace』が日本でも発売に。国内盤は4月23日でボーナス・トラック収録予定(海外:4月28日)
スタジオ・アルバムの発表は2006年の『This New Day』以来。
以下は以前に公開された映像
「Refugees」のPV
以下はプレスリリース
エンブレイスのメンバーはヴォーカルのDanny McNamara(ダニー・マクナマラ)、ダニーの実弟でギターのRichard McNamara(リチャード・マクナマラ)、ベースのSteven Firth(スティーブ・ファース)、キーボードのMickey Dale(ミッキー・デイル)、ドラムのMike Heaton(マイク・ヒートン)の5人で、ウェスト・ヨークシャーのブリグハウスで結成された。
1997年にシングル「All You Good Good People」でデビュー。1998年にファースト・アルバム『The Good Will Out』をリリースし、全英1位を獲得。このアルバムは発売初日でゴールドとなり、イギリスのアーティストのデビュー・アルバムの中でも最も早く売れたアルバムとなった。その後『Drawn From Memory』(2000年/全英8位)、『If You've Never Been』(2001年/全英9位)と2枚のアルバムをリリースし、2004年にリリースした4枚目のアルバム『Out Of Nothing』で再び全英1位を獲得。当アルバムは最終的にダブルプラチナムとなった。2006年には5枚目のアルバム『This New Day』をリリースし全英1位を獲得。同年にはドイツ・ワールドカップにおけるイングランド代表公式応援歌「World At Your Feet」(全英3位)もリリースした。
前作『This New Day』は三度目の全英1位を獲得し、アルバムからのシングル「Nature's Law」は自己最高位の全英2位を記録するという大成功をおさめたが、バンドはウェスト・ヨークシャーに戻りバンドを休止することにした。確かに1998年のデビュー・アルバム『The Good Will Out』は、イギリスのアーティストのアルバムでは最も早く売れたアルバムであった。彼らは既に成功を手に入れていた。だが、そんな彼らにとっても、アルバム『This New Day』後の状況は予想を超えるもであった。そしてそんな成功は彼らが追い求めていたものではなかったのだ。
「『This New Day』で僕らは殺されてしまったんだ。確かに物事は上手く進んだんだよ。特に商業的な点からね。けど、僕らは本当にやりたかったことを失ったんだ。エンブレイスはどんどん巨大化していったんだよ。アリーナの会場でプレイしたり、シングルが過去最高のヒットを記録したり。けど、正しい感じがしなかったんだ。なんだか気が滅入ったんだ・・・。要は、アルバムは自分がどこにいるかを示すスナップショットのようなものなんだよね。で、新作の『エンブレイス』は、過去のアルバムから得た失望を十二分に補うように思うんだ」とダニーは語る。こうしたダニーの発言から、簡単な方法を避け、作品のクオリティに関してまだまだ妥協しないバンドの姿勢を知ることができる。彼らはちょっと道をそれてみて、別の展望を見つける冷静さを持っているのだ。
「いろんな物事の仕組みに飲み込まれてしまうことがあるんだよね。僕らがそうだった。自分自身を認めないような段階にまでたどり着いてしまったんだよ。だから休息が必要だったし、一旦休止してバンドを再編する必要があったんだ」とダニーは語る。
そして実際にバンドは再編された。前のアルバムでとられたスタジオでの平等主義をベースにしたやり方ではなく、ダニーとリチャードがそれぞれに曲を書くという昔のやり方に戻したのだ。彼らは100曲以上を作り、その中の10曲が最新作『エンブレイス』となった。
「なんだかバンドをやり直しているように感じたんだ。まるで自分達を再定義しているようにね。だからアルバムを『エンブレイス』としたんだよ。いろんなアルバム・タイトルの候補はあったんだ。けど、どれもが制限をもっているような感じがしてね。だからセルフタイトルにすることが全く正しいと感じたんだ」とダニーは明らかにする。
この新しいアルバムでバンドは自身のエッセンスを抽出し、エンブレイスは常にどうだったか、という核を明るみにすることに成功した。
「みんなが僕らをまだ待っていてくれたのは素晴らしかったな。僕らはハリファックスでシークレット・ギグをやったんだよ。売り切れるかな、とちょっと心配してたんだ。けど45分で売り切れてしまったんだ。こんなに長く消えていたのにね。僕はオーディエンスが常にいるとは決して思ったりはしないんだ。だから”強い“レコードをつくろうとする。なぜならそれが自分に有利になるからね。人々を味方につけることができるかもしれないし、既に自分の音楽を好きな人も納得させるかもしれない。けどくだらないレコードを作ろうとすると、人々はどこかにいってしまうんだ」とダニーは語る。
彼らのアルバのなかでも最も評価の低い2001年のアルバム『If You’ve Never Been』の後、まさに適切なタイトルである『Out Of Nothing』が2004年にリリースされた。その時以来、エンブレイスはくだらないレコードをつくるようなことはなかった。そして、そうしたバンドのあり方がエンブレイスを魅力ある存在にしているのだろう。音楽は音楽それ自体の目的のために存在するのであって、うわべだけの社会やファッションとは関係がないものなのだ。
「音楽は音楽それ自体なんだ。前後なんて関係ない。説明なんて必要なく、音楽自体で自立できなくてはならないんだ。最初、皆は新人のバンドだから僕らに飛びついたんだ。で、僕らはたくさんのレコードを売った。けど、僕らは他のバンドと調和することはなかった。だってエンブレイスはブリットポップではなかったからね。で、僕はわかっているんだよ。長続きするバンドは決して他とは調和しないバンドだとね」とダニーは語る。
エンブレイスのようなバンドが人々をひきつけてファンを確保し続ける為には、常に派閥や今のトレンドの外側にいる必要があるのかもしれない。そして、そのようなあり方は、音楽自体に浸透して音楽自体を強化する。そう、自分自身でいることがとるべき価値がある唯一の方法なのだ。新しいレコードを作るのに7年もの月日がかかったからといって、彼らが創作上で行き詰まったり、イニシアティブを欠如してしまったわけではない。単にバンドは妥協したくなかったのだ。妥協しないことが正しい、と感じたのだ。
「曲を作る為の適切なゾーンに入るには時間がかかるんだ。そしてゾーンに入るまでは自分がゾーンの中にいるとは気づかない。何かを作り上げた時、これはあまりよくないな、なんて思わないよね。多分、それを凄く気に入っていると思う。二三週間、もしくは一か月くらいたたないと、本当に正しいものを作ったか反芻する機会を得られないんだよ。そう、仕事に時間をかけることによって、自分が何をやったかを振り返ることができるんだ。僕らはこのアルバムをライヴでプレイする機会があったんだよ。そして、曲に対して異なる展望を得ることができたんだ。ファースト・シングルの「レフュジーズ」はEPなんだ。タイトル曲以外にも素晴らしい曲が収録されている。僕らのファーストEP以来のベストなEPだよ。まるで僕らは最初からやり直しているみたいだ。で、僕らは昔のようにまたファースト・アルバムをリリースするんだ」とダニーは語る。
けど、注意が必要だ。これは『エンブレイス』が『The Good Will Out Part II』であるということではありません。ダニーは自分達のオールド・テリトリーを耕すことより、新しい道を見つけることについて話しているのだ。確かに『The Good Will Out』でも使われたバンドを象徴するコーラスはこのアルバムでもたくさん使われている。一方で新たしいアルバムの中には、過去にはあまり見られなかった“ダークネス”が表現されているのだ。そしてこれは、本当の自分自身に戻ることができ、ソンングライターとして成長したバンドを知るヒントとなる。『The Good Will Out』は混じりけのないイノセンスな曲が収録されていたが、『エンブレイス』には経験に裏付けられた曲が収録されているのだ。
「確かにファースト・アルバムは素晴らしい作品だと思うよ。けどその頃、僕は病気だったんだ。いろんなものが違って見えたんだよ。色がどんどん鮮やかに明るくなっていったり。で、頭の中ではいつもオーケストラが鳴っていたんだ。僕はそうしたことにインスパイアされ、書くことがたくさんあったし、生に関しての希望的な見通しも持っていたんだ」とダニーは20代前半に彼を悩ました心的外傷後ストレス障害に言及する。
「けど、今は全然違う感じだ。また体の調子はよくなってるよ。あと時間もたった。そして、ぼくは人生のダークな面をよりわかるようになったんだ」
ダークネスと経験こそが今のエンブレイスの音楽が伝えるものだ。ウェスト・ヨークシャーのブリグハウスの小さな街でバンドが初めて結成され、幸福を希求するという目的を持ってバンドは活動してきた。しかし、初期の無頓着な楽観主義を正した彼らの道は新しいチャプターに続いている。
「結局、幸せなんてないんだ。結局は独りで死ななくてはならないし。だからあらゆる瞬間に”あなたは生きているんだ“という事実を伝えなくてはならない。それは貴重で、有限で、短いものなんだ。そして、そうした思いをこのアルバムに込めたんだ。これは正反対のことを言っているかもしれない・・・。けど、最初のアルバムから一回りして戻ってきたことによって得られた結論なんだ」とダニーは語る。
エンブレイスはカムバックした。しかし今のエンブレイスは以前よりも多くのことを知っている。生きている、ということはたった1つの事実でしかない。しかし生きることは全てだ。エンブレイスはいつもそうだ。
●『Embrace』
1. Protection/プロテクション
2. In The End/イン・ジ・エンド
3. Refugees/レフュジーズ
4. I Run/アイ・ラン
5. Follow You Home/フォロー・ユー・ホーム
6. Quarters/クォーターズ
7. At Once/アット・ワンス
8. Self Attack Mechanism/セルフ・アタック・メカニズム
9. The Devil Looks After His Own/ザ・デヴィル・ルックス・アフター・ヒズ・オウン
10. A Thief On My Island/ア・シーフ・オン・マイ・アイランド
※他、日本盤ボーナス・トラックを複数曲追加収録