英BBCによると、英国では、教会のパイプオルガンが激減しており、毎年、400台以上が廃棄されたり、放置されて音が出なくなったりしているという。
パイプオルガンの保存を支援する慈善団体「パイプ・アップ(Pipe Up)」が実施した調査によると、毎週5台のパイプオルガンが埋め立て処分されており、さらに毎週4台がメンテナンス不足により演奏されなくなっているという。
パイプ・アップの広報担当者は「パイプオルガンが間もなく失われてしまうという文化的惨事が、いままさにイギリスの目前に迫っています」とBBCに話しています。
パイプ・アップの会長であるジョージ・アランは、ウォリックシャー州スパーナル(レディッチ近郊)の使われていない教会に、行き場を失ったオルガンを保管しています。
アランは、多くのオルガンが本来は捨てる必要のないまま廃棄されていると指摘し、こう話しています。
「中規模のオルガンを完全に修復するには30万ポンド(約6300万円)以上かかります。しかし私たちは、ほぼ演奏可能な状態のオルガンを1,000ポンド(約20万円)未満で再び演奏できるようにしたケースも多いのです」
さらにアランは、多くのオルガンは専門家が数日手を入れるだけで救うことができるとも付け加えています。
アランはこう続けています。
「1915年には、英国にはおよそ4万台のパイプオルガンがありました。しかしその半分以上はすでに失われています。現在、英国に残っているオルガンはおよそ1万5,000台だと考えられています。そのうち演奏可能なのは半分ほどで、さらに定期的に使われているのはその半分だけです。残りは、さまざまな理由で沈黙したままになっています。
この傾向が続けば、2070年までに英国からは、大聖堂、オックスブリッジのカレッジ、いくつかのコンサートホール、そして支援の行き届いた一部の教会を除いて、パイプオルガンが姿を消してしまうでしょう」
アランによると、彼らが救い出したオルガンは、海外へ送られることも多いという。英国国内で新しい受け入れ先が見つかることを望んではいるものの、「ラトビア、あるいはフィリピン。ええ。そこには、使われなくなった英国や米国のオルガンを集めて、国中に設置しているカトリックの司祭がいるんです」と話しています。
英国国内での受け入れ先は、教会ではない場所も積極的に検討しているという。アランはこう続けています。
「ロンドン・ブリッジ駅に一台設置することに成功しましたし、他にもオルガンを置ける型破りな場所を常に探しています。ナイトクラブ、バスターミナル、あらゆる種類の公共の場所に可能性があります」
この問題をさらに深刻にしているのが、英国でオルガン製作・修復の専門技術者が減少していることです。2025年3月には、ヘリテージ・クラフツ協会が、オルガンの製作とメンテナンスを「消滅の危機にある伝統工芸」のリストに追加しています。