「これは、いわば僕にとってのキング・クリムゾンのハネムーン・レコードなんだ。バンドが集まって、全員が完全にハッピーな状態にある時期ってあるだろう? あの時はまさにそれで、喜びしかなかった。正直、自分たちが何をしているのかすらよく分かっていなかった。ただやっていただけ。まさか自分たちが、後に『Remain in Light』や『Graceland』みたいに“金字塔”と呼ばれるような作品を作っているなんて、誰も気づいていなかった。
そのアルバム制作中に、とんでもない出来事が僕に起きた。前年にジョン・レノンが殺害されて、そのあとに僕は“Heat in the Jungle”という曲を書き始めていた。都会というジャングルで、銃によって誰かが襲われる――そんなイメージの曲で、“銃の熱”みたいなニュアンスを込めていた。でもロバート・フリップはそのタイトルがまったく気に入らなかった。それで、録音を続けるためにヨーロッパに戻る飛行機の中で、僕はその言葉をスクラブルのタイルにして何度も並べ替えていた。この曲にはアフリカ的なリズムの感覚があると感じていたから、いっそ意味のない言葉を作ったら面白いんじゃないかと思ってね。そうしてできたのが“Thela Hun Ginjeet”という言葉なんだ。
僕がそこを離れる頃、ティナは姉妹たちを呼んで、ある曲にコーラスを入れさせた。それが後に“Genius of Love”になった。曲作りを始めた時、“このリフでちょっと遊んでみよう”と言ったんだよ。ほとんどワンコードみたいな曲なんだけどね。気がついたら、みんなが“これは夏の大ヒットになるぞ”と言い出して、実際その夏に大ヒットした。時にはそんなに簡単に生まれるものなんだよ。気づけばこの曲は世界でいちばんサンプリングされる曲のひとつになっていた。特にヒップホップでね。
これまでに“Genius of Love”をサンプリングした曲は、200曲近くある。もちろんロイヤリティは入ってくるけど、曲全体の取り分というわけではない。法律上の前例があって、もし誰かが僕のトラックを使った場合、そのトラックには全体のロイヤリティの32%が割り当てられる。作曲者が4人いたから、僕らはそれぞれ8%ずつ受け取ることになる。まあ、おかげで僕は十分に快適な生活を送れているよ」