「ザ・ティアーズ・オブ・シングス」(The Tears Of Things)という曲のタイトルは、フランシスコ会修道士のリチャード・ロールによる著書から取られた。それはユダヤの預言者たちの言葉を通して、暴力と絶望の時代にもいかに人が思いやりを持って生きられるかを考察した1冊だ。曲は、ミケランジェロのダビデ像とその創造主が交わす空想の対話である。投石紐と5つの石を手にしたダビデは、相手を倒すために自らもゴリアテのようにならなければならない、という考えを拒む。さらに、その目にはハートの“絵文字(emoji)”が生まれる半千年も前から、ハート型の瞳孔が刻まれていたことも明らかになる。それは今日に至るまで、イタリア、フィレンツェのアカデミア美術館を訪れる人々を戸惑わせてやまない。
「ソング・オブ・ザ・フューチャー」(Song of the Future)の主人公サリナが讃えるのは、2022年に起きた“女性・命・自由(Woman, Life, Freedom)運動”で街頭に立った何千人ものイラン人女子生徒のひとり、16歳のサリナ・エスマイルザデの命だ。この抗議行動のきっかけとなったのは、その年の9月16日、政府が定める通りにヒジャブを着用していなかったとして、いわゆる道徳警察に逮捕された後に負った傷が原因で、テヘランで亡くなったクルド系イラン人女性マフサ・アミニの死である。その7日後、サリナはイランの治安部隊の暴行が原因で命を落とすが、当局は彼女が自ら命を絶ったと主張。「ソングス・オブ・ザ・フューチャー」は短かったサリナの人生に宿る自由な精神と可能性と希望を歌う。
「ワン・ライフ・アット・ア・タイム」(One Life At A Time)は3人の子の父親であるパレスチナ人、アウダ・ハサリーンに捧げた曲。非暴力活動家、英語教師のアウダは、2025年7月28日、パレスチナ西岸地区の地元の村で、イスラエル人入植者イノン・レヴィによって殺害された。アウダは、パレスチナとイスラエル共同制作によるアカデミー賞受賞作ドキュメンタリー映画『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』(原題:No Other Land)のコンサルタントとして携わっていた。その葬儀の場で共同監督バーセル・アドラーは、友人の殺害は、パレスチナ人の“命が一つ、また一つ”と消し去られている現状の表れだと訴えた。U2はその1行を引用し、平和的な解決は“一つずつの命”を通してもたらされる、と歌う。
またEP『デイズ・オブ・アッシュ』リリースに伴い、U2のファンクラブ誌『Propaganda』が一回限りのオンライン・マガジン(一部、限定印刷版)として復活する。40年前の1986年2月、世界中のU2ファンの郵便受けに『Propaganda』の創刊号が届いた。当時のファンジンに負けないものを目指して生まれた『Propaganda』は、パンク時代のDIY精神で作られたファンジン文化を背景に、アティテュードと思想と対話の場を読者に提供した。 そんな『Propaganda』の初期のスピリットを引き継いだ、限定印刷版/オンライン・マガジン『U2 - Days Of Ash: Six Postcards From The Present… Wish We Weren’t Here』(全52頁)はEP『デイズ・オブ・アッシュ』と同時公開される。映画監督イリヤ・ミハイルス、映画プロデューサー ピョートル・ヴェルジーロフ、ミュージシャンであり兵士のタラス・トポリアへの独占インタビューのほか、EP収録曲の歌詞、U2の4人によるノーツ、さらにはボノへのQ&Aインタビューが掲載される。
■『Days of Ash』
01. American Obituary 02. The Tears of Things 03. Song of the Future 04. Wildpeace – by Yehuda Amichai, read by Adeola, with music by U2 and Jacknife Lee. 05. One Life at a Time 06. Yours Eternally (feat. Ed Sheeran & Taras Topolia)