バディ・ガイは若い頃、見知らぬ男の親切によってキャリアの礎となったライヴを獲得　マディ・ウォーターズらの目に留まる、当時を回想

ブルースの伝説的ギタリスト、バディ・ガイ（Buddy Guy）は21歳の時、より良い仕事と音楽キャリアの足掛かりを求めてシカゴへ移ったが、金が尽き、地元に帰ろうとしていた。その時、見知らぬ男から「弾けるのか？」と尋ねられたことから、キャリアの礎となったライヴを獲得し、マディ・ウォーターズらベテランギタリストの目に留まったという。米Guitar Playerのインタビューの中で当時を振り返っています。

「シカゴの噂をたくさん聞いていたんだ。給料が倍になるって。ギタリストとしてじゃなくて、普通の労働者としてね。だから21歳になったばかりの頃、シカゴへ向かったんだ。

でも、50年代のシカゴってのは、知り合いがいないと、まるで牛の群れに話しかけてるみたいなもんだった（※聞く耳を持たない人々に話しかけても無駄の意味）。金が尽きるまで粘ったよ。で、母にコレクトコールで電話して、ルイジアナに戻る切符を送ってもらおうとしていたんだ。

片手にギター、もう片方にスーツを持ってたら、知らない男が“弾けるのか？”って聞いてきた。俺は“ああ、できるよ。母親に電話するのに10セント貸してくれたら、あんたのために弾くよ”って答えたんだ。

そしたらそいつが“金は誰にも貸さねえ。でも酒なら奢ってやる”って言ったんだ。当時は酒は飲まなかったけど、そのときはもう三日も何も食べていなかった。泣きそうになったが“泣いても解決しない”と自分に言い聞かせた。シカゴは一晩中外にいるには寒すぎるから、じゃあこの男から一杯もらおうと思ったんだ。腹に何か入るなら、何もないよりはずっとマシだからね。

それで彼は俺に一杯おごってくれた。俺がジミー・リードとギター・スリムを弾くのを聴いたあとで、こう言った。“お前は今まで聴いた中で最高だ。ギタリストたちが弾いているところに連れてってやるよ”。俺は人前が苦手だから“俺には無理だ”と答えた。そしたら彼は“いや、君ならできる”と言ったんだ」

もう一杯飲んだあと、ガイは47丁目の708クラブに連れて行かれました。当時はシカゴで有名なブルース店でした。

「マディ・ウォーターズも、ジュニア・ウェルズも、ハウリン・ウルフも、リトル・ウォルターもそこで演奏していた。

その夜は店のオーナーもいて、俺は“The Things I Used To Do”を演奏した。オーナーがマネージャーに“あいつが誰だろうと雇え。週3日で1日25ドル払え”と言った。ルイジアナを出たとき、俺の週給は30ドルだったんだ。

俺はでかい嘘をついた。彼が“バンドがいるなら、火曜から仕事だ”って言うから、俺は“バンドはいる”って答えた。実際は誰一人知らなかったのにね。

（しかし、ミュージシャンが見つからず、ガイは腹をくくることにしました）

翌日、勇気を振り絞って戻り、“バンドのことは嘘でした。でも、演奏には来ます”って言ったんだ。そしたら彼らが（ドラマーの）フレッド・ビロウとピアノ奏者を見つけてくれた。

708クラブで数日演奏した後、マディ・ウォーターズが店の外に座っていた。彼は“お前の噂を聞いた。食わせに来た”と言っていた。

すごくおかしかったよ。彼が店に連れてってくれて、俺は食事を断ろうとしたんだけど、無理やりサンドイッチを食べさせられた。彼は“俺のことはダディって呼べ”って言っていた。

俺たちは冗談を言い合った。そのときから、もう周りなんて見なくなった。ギターバトルもした。ある夜、ステージに上がると、そこにはデイヴ＆ルイス・マイヤーズ、アール・フッカー、マジック・サム、オーティス・ラッシュがいた。

その翌日には報道陣がやって来て、俺が何者か知りたがっていた。それからは街中のギタリストが次々と、俺を見に来るようになって、ジュニア・ウェルズも来た。そうやってジュニアと知り合ったんだ。最初は誰も俺に話しかけてくれなかった。“お前は誰だ？”と言わせるには、弾いて実力を示すしかなかったんだ。

その後、マジック・サムが来て、日曜の午後1時にギターバトルをすることになった。俺は思ったよ。“学ぶことは山ほどある。でも今はやるべきことが山ほどある”ってね。彼らに負けるつもりはなかった。だからその150フィート（約45メートル）のケーブルを引っさげて、そのまま歩き出した。雪が降っていたけど、まっすぐドアの外へ出ていったんだ。ウィスキーのボトルも持ってね。友達に“このケーブルをしっかり掴んでいてくれ。誰にもアンプから引き抜かせないでくれ”って頼んだよ。

そして俺が勝った」