「僕たち純粋主義者の多くにとって、このアルバムこそが真のファンのお気に入りだと考えている。前作『Let There Be Rock』ほどの圧倒的な壮大さはないが、AC/DCが自分たちの限界を押し広げたという点では、これほどまでに迫った作品はほかにない。確かに、これまでと同じスリーコードで、マルコム・ヤングによるあのスタッカートなギターの巨塊は相変わらずだけど、この作品に強烈な影響をもたらしているのは、彼らと初めてアルバムを作ったベーシストのクリフ・ウィリアムズだ。彼のプレイは時にファンキーな域に達する――そう、僕は今もAC/DCの話をしている――多くの楽曲を、バンドの慣例的で、やや色あせ始めたアプローチから引き上げている。さらに、ここにはアンガス・ヤングの最高のブルース演奏のいくつかも聴ける。ギタリストとして断言するけど、彼の根底にはブルースプレイヤーの魂が宿っている(1980年代に一時その本質を見失った時期はあったにせよ)。最後に、レコード会社の意向でAC/DCがコンフォートゾーン(※慣れ親しんだ安全で快適な領域)から押し出され、彼らなりのやり方でついにヒット・シングル(ストーンズ風の“Rock ‘n’ Roll Damnation”)を狙ったという皮肉も気に入っている。その後2年でヒットシングルは彼らにとって問題ではなくなり、その状態は40年以上にわたって続いている」
■Passion: Music for The Last Temptation of Christ, Peter Gabriel