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ロクセット「It Must Have Been Love」 誕生の経緯を語る 『プリティ・ウーマン』劇中歌

2025/12/16 20:49掲載
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Roxette
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ロクセット(Roxette)の代表曲のひとつ、映画『プリティ・ウーマン』の劇中歌としても使われた「It Must Have Been Love(邦題:愛のぬくもり)」。この曲の誕生の経緯を、作詞・作曲を手がけたメンバーのペール・ゲッスル(Per Gessle)が、英ガーディアン紙の新しいインタビューの中で振り返っています。

「20代前半、僕はスウェーデンで一番大きなバンドにいた。でも、Gyllene Tiderが解散したあと、2年間は落ち込んでいた。当初ロクセットはヴォーカルのマリー・フレデリクソンがソロ活動で忙しくない時にだけ集まるグループだったので、彼女をバンドに留めるには成功がどうしても必要だった。だから僕には強いモチベーションがあった。

当時は、ABBAを除けば、スウェーデンはポップ界では劣勢だった。僕たちの目標は、他のスカンジナビアの国々、できればドイツに進出することだけだった。しかし、EMIドイツは僕たちをラジオで流してもらえずにいて、代わりにクリスマスソングを書いてはどうかと提案してきた。オリジナルのタイトルは“It Must Have Been Love(Christmas for the Broken Hearted)【きっと愛だったんだ(傷心のクリスマス)】”で、ハルムスタッドにある自宅のグランドピアノで書いた。もともと“It must have been love, but it’s over now【きっと愛だった、でも今は終わった】”というラブソングとして書き始めていたもので、それをドイツのレーベルの要請を受けて、2番の歌詞にクリスマスへのささやかな言及を加えたんだ。春だったので、クリスマス気分なんて全然なかったんだよ。

僕が作ったデモは、歌うのが非常に難しい曲だったため、ヴォーカルはひどかった。でもマリーは挑戦してくれた。1987年のクリスマスに間に合うようにレコーディングを行い、スウェーデンではトップ5に入った。ところがEMIドイツはこれを嫌って、出したがらなかった。

それから数年後、僕たちが他のヒットが出た後のことだった。ロサンゼルスのEMIから電話があって、リチャード・ギアとジュリア・ロバーツ主演の映画『プリティ・ウーマン』のために曲を書いてくれないかと依頼された。サウンドトラックにはすでにデヴィッド・ボウイやロバート・パーマーが参加していて、僕たちはちょうどニュージーランドへ飛び立つところだったので、忙しすぎると伝えた。そのとき、“あのクリスマス・ソング”を思い出した。

僕たちは急いでスタジオに戻り、歌詞の“Christmas Day”を“a winter’s day”に変え、冒頭に新しいギターのメロディを加えた。ほどなくして、監督のゲイリー・マーシャルから電話があって“君の曲が映画で流れるとき、セリフは一切ない。55秒間、君の音楽だけが映画全体を引っ張っていくんだ”と言われた。そこから先は、ご存じのとおりだよ。

僕たちが大成功を収めた後のある夜、ブエノスアイレスのホテルの部屋の外に2,000人のファンが集まって、一晩中、僕たちの曲を歌っていたことがある。(元F1レーシングドライバーの)デビッド・クルサードが後で教えてくれたんだけど、同じ夜にF1ドライバー全員がそこに泊まっていて、眠れなくてすごくイライラしていたそうだよ。誕生日には4,000枚ものカードが届いた。庭で寝泊まりするファンもいれば、下着を盗む人、挙げ句に車のアンテナまで盗む人もいた! 今では、この曲のストリーミング再生回数は10億回に迫っている。

みんなはパワー・バラードだと思っているけれど、そうじゃない。プロダクションは極力そぎ落としてある。パワーコードや大仰なオーケストレーションなんていらない――すべての力はマリーの声にある。彼女は心のすべてを注ぎ込む力を持っていた。

彼女が病気になったあと、アムステルダムで僕のソロ公演に足を運んでくれた。ステージに上がらないかと誘うと、8年間も公の場で歌っていなかったけれど、アンコールで登場して“It Must Have Been Love”を歌ってくれた。あれほどたくさんの人が泣いているのを見たのは生まれて初めてだった。マリーはその経験から、ものすごくエネルギーをもらって、新たなアルバム制作とツアーを望んだ。僕たちは実際にそうした。あの経験が彼女にあと数年の命をくれたのだと思う」