
Triumph, photo by Scott Braun (courtesy of Chipster PR)
カナダのハードロック・トリオ、
トライアンフ(Triumph)のクラシック・ラインナップが再結集するリユニオン・ツアー。30年以上ぶりのツアーが実現したその経緯を、メンバーのギタリスト/ヴォーカリストのリック・エメット、ドラマーのギル・ムーア、ベーシストのマイク・レヴィンがUltimate Classic Rockの新しいインタビューの中で語っています。
結成50周年を記念して2026年に行うツアーには、リック・エメット、ギル・ムーア、マイク・レヴィンが全員参加予定。また、トライアンフの元メンバーで、現在はボン・ジョヴィのメンバーとして活躍するギタリストのフィル・X、そして、スラッシュ feat. マイルス・ケネディ&ザ・コンスピレイターズのメンバーであるブレント・フィッツ(ドラム)とトッド・カーンズ(ベース/ヴォーカル)も参加します。
トライアンフがツアーを行うのは1993年以来で、ムーアとレヴァインがエメットと共にツアーに参加するのは1988年以来です。
Q:今回の発表は、ファンにとってバケットリストのようなものです。でも、何年もの間、再結成ツアーのアイデアは事実上「あり得ない」とされ、皆さんもその点について非常に率直に語ってきました。何が変わったのでしょう?
ギル・ムーア:
「偶然の巡り合わせなんだ。特定のきっかけがあったわけではない。強いて言えば、トライアンフの楽曲が人生に与えた影響を振り返るファンの声が、次第に高まっていった結果と言えるだろう。時間が経てば経つほど、そうした話を耳にする機会は増え、より説得力のあるものになっていく。中には胸が張り裂けそうになるような話もあった。そうした積み重ねが、今まさに僕たちに作用しているんだよ。
それに、世界各地のコミュニティや社会で起きていることも関係している。ある地域では人間の非人道的な行為という恐ろしいことが起きている一方で、科学やテクノロジーでは素晴らしい進歩が次々に生まれている。こうした世界的な大変化の中で、僕たちはファンの声に耳を傾けるべきだという共通認識が生まれたんだと思う。
ファンは楽曲を受け入れ、もはやそれは彼らのものとなっている。録音して作ったのは僕たちかもしれないが、それらは彼らの曲であり、彼らは強いメッセージを送り続けてくれている。もう一度聴きたい、と。だったら、僕たちにできる最低限のことは、全力で応えることだと思う。完璧じゃないかもしれない。でも、そもそも完璧って何だ? 僕たちはロックンロール・バンドだ。ステージに出て、僕たちのやり方で、絶対に盛り上げるつもりだよ」
リック・エメット:
「質問の冒頭で“人々にとってのバケットリスト的なことだ”と言っていたけど、そのエネルギーこそが、僕たちにとって特別なこと、面白いこと、そして、インスピレーションを与え、やる気を起こさせ、活力を与えることをやる源なんだ。でも、今の正直な気持ちを聞かれたら、正直ビビってるよ。“俺はいったい何にイエスって言っちゃったんだ? ああ、やばい!”ってね。登るには大きな山だよ。俺は72歳だ。俺に“やれる、実現できる”と思わせてくれる(インタビュアーの)マット・ウォードローのような人が必要なんだよ。
トライアンフのファンにはぜひ理解してほしいんだけど、ギル・ムーアは、彼独自のやり方で、トライアンフを通じて世界を驚かせるアイデアを考えたり仕込んだりするのを、絶対にやめない人なんだ。彼はいつも“これやったらどう? あれやったらどう?”って考えている。それが彼の人生なんだ。彼はプロダクション会社を持ち、学校を持ち、スタジオを持っていて、いつもそういう世界の中にいる。だからこそ、彼を再びツアーに駆り立てるエネルギーは、たぶん僕やマイクよりも強いと思う。だから内側からは、いつもちょっとした精神的なエネルギーと推進力が常に存在するんだよ」
Q:この計画はどのように始まったのか?
ギル・ムーア:
「バンドをもう一度集めるって話は、正直、僕が思いついた悪いアイデアから始まったんだ。何事もどこかから始めないとね。昔からの照明ディレクターのポール・デクスターが、当時いわゆる3Dテクノロジーの最前線にいたんだけど、彼はブラック・サバスのロニー・ジェイムス・ディオを称えるホログラム・ツアーを手がけ、その後フランク・ザッパを称えるツアーもやっていた。僕はザッパのツアーを観に行って、どんなことをやっているのか観察した。それから話をして、僕は彼に言った。“これはトライアンフには合わない”とね。
彼も同意してくれた。確かにフランク・ザッパやロニーのツアーで彼がやっていた技術は本当にクールだったけれど、トライアンフには向かないだろうと僕は確信していた。そこで僕たちは“何が合うのか”を探る技術的な航海に出たんだ。結果的にたどり着いたのが混合現実(ミックスド・リアリティ)の世界で、これはもう6年かけて開発していて、技術の進化に合わせていろいろな要素を更新してきた。ご存じの通り、(この世界では)半年前の知識は時代遅れになってしまう。技術の世界には新しい保安官がいつも現れるんだ。
もうひとつ起きたことがあった。カナダではホッケーが本当に大きな存在で、本当にクールなことが起きた。“Lay it on the Line”がNHLとナショナル・スポーツ・ネットワークのロジャース、そしてMLSE組織全体にに選ばれたんだ。彼らみんなが同時に“Lay it on the Line”に飛びついた感じで、そこから“じゃあNHLの試合で演奏してくれませんか?”という話になった。
僕自身、子どもの頃はNHLに入るのがずっと目標だった。ミュージシャンになりたかったわけじゃない、ホットな左ウィングになりたかったんだ。だから“これは本当にすごいことになるぞ”と思った。新しいミュージシャンたちと一緒にやってみるチャンスにもなったし、フィル(X)をバンドに呼び戻すこともできた。フィルXとリック・エメットのコンビは、まさに二連式ショットガンのようなものだよ。実際にそこで演奏したら、それがライブ・ネイションの興味を引いたんだよ。
ライブ・ネイションがパーティーにやって来て“ツアーをやるべきだ”と言われた。ファンたちの、ホッケーの一件に対する反応を見ていると、なんというか胸に来るものがあって、“今しかない、もう二度とないかもしれない。やるべき時だ”って感じたんだ。技術は今まさに最高潮に達している。ステージでかなりクールな劇場的な演出ができるようになるはずだし、まさに“よし、今こそ導火線に火をつける時だ”という感覚だった。そうするのが一番しっくり来たんだよ」
Q:マイク、君はエドモントン公演に参加できませんでした。こうしてのプロジェクトが形になっていく様子を見ていて、どんな気持ちでしたか?
(※トライアンフは2025年6月、17年ぶりに再結成を果たして復活コンサートを行いました。リック・エメットとギル・ムーアは参加しましたが、残念ながらマイク・レヴィンは参加しませんでした)
マイク・レヴィン:
「新聞の求人欄を見て、仕事を探してたよ。いや、冗談はさておき、今の状況は本当に素晴らしいと思う。何年も前にフィルと一緒にやった経験があるしね。彼はとんでもなく素晴らしい人間で、素晴らしいプレイヤーだ。再び一緒に演奏できるなんて信じられないよ。ここ6年ほどギルと一緒にこの話を続けてきたのに、新型コロナウイルスに邪魔されて、さらに別の理由で中断されて…本当に長くて骨の折れる道のりだったと思う。たぶんここでは時々コンサートマスターを務めることになるから、それはすごく楽しみだよ。
とても楽しみにしているよ。可能な限り、会場に足を運ぶつもりだ。行けないときは、バーチャルで参加する。だから、バーで仲間と雑学クイズでもやって時間をつぶしてる、なんてことにはならない。全てが満足のいく形で関われそうだよ」