世界各地のレコード店をめぐりながら、そこに生まれる関係性や階級、ジェンダー、サブカルチャー、地域文化を多角的に分析。レコード店がどのように人びとの文化生活を支え、文化の公共圏として機能してきたのかを明らかにする書籍の日本語版『レコード店の文化史 グローバル・ヒストリー ―― コミュニティ、都市、文化が交差する場所』がDU BOOKSから2026年2月10日発売予定
■『レコード店の文化史 グローバル・ヒストリー ―― コミュニティ、都市、文化が交差する場所』
ジーナ・アーノルド (著), ジョン・ドゥーガン (著), クリスティーン・フェルドマン=バレット (著), マシュー・ウォーリー (著)
4,200円(本体価格/税別)
ISBN 9784866472188
発売年月 2026年2月
版型 A5
ページ数 376(予定)
<内容>
レコード店は「音楽を買う場所」を超え、共同体、記憶、文化が交錯する<社会空間>である。
本書は、世界各地のレコード店をめぐりながら、そこに生まれる関係性や階級、ジェンダー、サブカルチャー、
そして地域文化を多角的に分析。
デジタル時代における「場所」の意味を問い直す、
社会学・文化研究の新しい視座を提供する一冊。
ロンドンのレゲエ店からナイジェリアのジャズホール、東京の輸入盤店、革命前後のイラン、
ポルトガルやスペインの観光地化するレコード店、
ナイジェリアやルーマニアの音楽インフラまで。
22章のケーススタディは、レコード店がどのように人びとの文化生活を支え、
文化の公共圏として機能してきたのかを明らかにする。
レコード店には、人びとの趣味が交差し、見知らぬ者どうしが語り合い、
都市の片隅から文化が立ち上がる瞬間が息づいている。
音楽研究・社会学・文化史・都市研究に携わる多国籍の研究者・批評家が、
ポピュラー音楽研究、レコード産業史、都市文化論、若者文化史、社会主義圏の文化政策、
ディアスポラ研究などを背景に、レコード店という“小さな場”を多角的に読み解いた一冊。
店舗と共同体のヒントとなる書。
<目次>
イントロダクション レコード店とは何か――その社会的・文化的意味を探る ジーナ・アーノルド、ジョン・ドゥーガン、クリスティーン・フェルドマン=バレット、マシュー・ウォーリイ
プロローグ レコード店に救われた人生 マーク・トレハス
パート1 コミュニティとしてのレコード店――嗜好・記憶・つながり
ファイアコーナー――ブラック・ロンドンのレゲエ店と文化交流 ケニー・モンローズ
レコ―ト店と成長――子縞のスカートとひざ丈のソックスをはいた少女の旅路 ホリー・グリーソン
レコード・バーというカルト スティーヴン・シェアロン
70年代からデジタル時代にいたるブリズベンのオルタナティヴなレコード店 ベン・グリーン
25年間の『ハイ・フィデリティ』――嗜好とストリーミングの変容 ジョン・ストラットン
カウンターの向こうにいた女性たちの視点 リー・アン・フリントン
“本物”を守る店の闘い――ニューオーリンズの独立系店は災害後、どう生き残ったか ジェイ・ヨレス
パート2 レコード店の文化地理学――地域社会・都市変動・グローバル文化
スペインとポルトガルの観光地化/高級化するレコード店――キュレーターの地位とは? フェルナン・デル・ヴァル
音を売る――ポルトガルの独立系レコード店の挑戦 ポーラ・ゲラ
社会主義末期から現在までのルーマニアのレコード店――“音楽の入手”の政治史 クラウデュウ・オアンチャ
ナイジェリアのジャズホール――ローカル・ジャズ文化を守り続けたレコード店 エロモ・エグベジュール
日本ポピュラー音楽史における輸入レコードと小売店の役割 加藤賢
アイルランド人の経験をレコーディングする──アーカイヴとしてのレコード店 ポール・ターペイ
革命はTVで放送されず、テープに録音される──革命前後のイランに リリー・モアエリ
パート3 サブカルチャー資本――ファンダムと趣味の実践の場として
企業の隙間で鳴らすインディーの音――ニュージーランド、オテアロアの小さなレコード店で働いたおかげで人生がどう変わったか ロイ・モンゴメリー
リップ・オフ・レコーズ (ハンブルク)――資本主義のミクロストリア カール・シーベンガートナー
ソウル・ボウル──発掘されたレアなソウル クリストファー・スピンクス
ラッキー・レコーズ──音楽は人々を団結させる マリアナ・リンズ
ラフ・トレード・パリ――90年代カルチャーの震源地 ジャン・フベール
レコード店とミュージシャンの関係性――アメーバ・ミュージックの事例から クリスティン・フェルドマン=バレット
北米のセルフサーヴィス・レコード店――客が“語る”コンテンツ ティム・J・アンダーソン
英国の試聴ブース──試聴空間の雰囲気学 ピーター・ヒューズ・ジャキミアク
<著者について>
ジーナ・アーノルド
教授、著作家、音楽ジャーナリスト。「ローリングストーン」「Spin」「The Village Voice」などで執筆。著書に『Route 666: On the Road to Nirvana』『Kiss This: Punk in the Present Tense』『Liz Phair’s Exile in Guyville』『Half a Million Strong: Crowds and Power from Woodstock to Coachella』など。アメリカのサンフランシスコ大学で批判的人種研究の講座を受け持っている。
ジョン・ドゥーガン
米国、ミドル・テネシー州立大学レコーディング産業学部の音楽ビジネスおよびポピュラー音楽研究教授。以前はレコード店の従業員、音楽評論家。音楽やポピュラー文学に関するエッセイやレヴューを各メディアに寄稿。著書に『The Who Sell Out』『The Mistakes of Yesterday, The Hopes of Tomorrow: The Story of the Prisonaires』など。
クリスティン・フェルドマン=バレット
オーストラリア、グリフィス大学の社会学上級講師、若者文化史家、ザ・ビートルズ研究家。著書に『We Are the Mods: A Transnational History of a Youth Subculture』『A Women’s History of the Beatles』など。『Lost Histories of Youth Culture』の編者でもあり、「Journal of Beatles Studies」の編集委員を務め、Subcultures Networkのメンバー、さらには「Journal of Youth Studies」「Space and Culture」「Popular Music and Society」「Feminist Media Studies」などの学術誌で記事を発表している。
マシュー・ウォーリイ
英国、レディング大学の近代史教授。英国の労働史、政治史について幅広く執筆。英国共産党、労働党、そしてサー・オズワルド・モズレーの新党に関する著書もある。より近年の仕事では、主として70年代と80年代における若者文化と政治の関係に焦点を当てている。「History Workshop」「Twentieth Century British History」「Contemporary British History」「Journal for the Study of Radicalism」「Journalism, Media and Cultural Studies」「Punk & Post-Punk」などの学術誌に寄稿。著書に『No Future: Punk, Politics and British Youth Culture, 1976– 198484』など。
<訳者>
奥田 祐士 (おくだ・ゆうじ)
広島生まれ。東京外国語大学英米語学科卒業。雑誌編集をへて翻訳業。主な訳書に『AMETORA(アメトラ) 日本がアメリカンスタイルを救った物語』『ポール・サイモン 音楽と人生を語る』『ポール・マッカートニー 告白』『トッド・ラングレンのスタジオ黄金狂時代』『スティーリー・ダン・ストーリー』などがある。