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スティーヴ・クロッパー生前最後のインタビュー、ギタリストに求める最も重要な要素/驚かされたギタリスト/若いギタリストへのアドバイス等を語る

2025/12/05 18:52掲載
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Steve Cropper
Steve Cropper
亡くなった伝説的ギタリスト、スティーヴ・クロッパー(Steve Cropper)の生前最後のインタビューのひとつは、2024年にリリースした最後のアルバム『Friendlytown』の発売にあわせて、米Guitar Worldの姉妹誌Total Guitarで行われました。Guitar Worldは訃報を受けて、このインタビューをネットに再掲載しています。

クロッパーは、自身のスタイルを確立する上で重要な教訓、ギタリストとして初心者ではなくなったと感じた瞬間、ギタリストに求める最も重要な要素、驚かされたギタリスト、若いギタリストへのアドバイスなどを語っています。

Q:初期の頃、どんなギターで練習していたんですか?

「最初のギターは今、メンフィス音楽の殿堂でガラスケースに入れて展示されている。弦は3本しかない。8歳の頃で輪ゴムみたいに弾いていたんだ。シアーズ・ローバックのカタログで買った。毎週末、玄関のポーチに座ってそのギターが届くのを待っていた。トラックが角を曲がるのを待ち続けてね。そしてついに届いた。弦は緩んでいてブリッジも修理が必要で、しかも配送料に25セントも要求された。母は“ギター奏者になるなら、その25セントは貸してあげる”と言ってくれた。母はもうこの世にいないけど、僕は確かにそうなるために頑張ったと思うよ」

Q:自身のスタイルを確立する上で重要な教訓は何でしたか?

「ギターを始めたばかりの頃、世界はもうひとりのB.B.キングやチェット・アトキンス、レス・ポールを必要としていないことは分かっていた。じゃあ、どうする? “ただ自分らしく、自分のことをやればいい。変えようとするな”と思ったんだよ」

Q:ギタリストとして初心者ではなくなったと感じた瞬間を覚えていますか?

「ブッカー・T&The MG'sと“Green Onions”をやった時だね。ブッカー(T・ジョーンズ)が書き始めて、そのあと一緒に仕上げていった。スタジオに来るはずのシンガーがいたんだけど、結局現れなくて…。彼は一晩中歌い続けていて、朝には自分の名前すら言えない状態だったから来なかったんだ。僕らはただジャムりながら待っていたんだよ。

数週間が過ぎて、“Behave Yourself”という曲に取り組んでいた時、レーベルから“B面用になにかある?”と聞かれてね。僕はブッカーに“ヴォーカル曲に合いそうだって言ってたあのリフ、覚えてる?”って言った。それを彼らに聴かせたら“かなりいいね”って。それで決まり。それがレコードになったんだよ」

Q:ギタリストに求める最も重要な要素は?

「グルーヴ。グルーヴを持っている者は、持っていない者よりずっと長く生き残れる。グルーヴが何を意味するかは人それぞれだが、僕にとってそれはソウル。そして枠の中で演奏すること、外じゃない。それが人々に好まれる。枠の外でやりすぎると、好きにはなってくれないんだ。

僕の演奏は昔からずっと下手くそだったけど、でも売れた。たぶんシンプルにしてるからだと思う。僕はギタリストじゃない。時間をかけてちゃんと学ばなかった。ギターは道具として使ってるだけ。スタックスのレコードでは、もう一人のギタリストを雇う余裕がなかった。だから、リズムとリードを同時に弾けるよう学んだ。そうすればソロを弾いてる時にリズムが途切れないからね。

ゲス・フーのランディ・バックマンにフレーズを一つ教わった。どちらかというとカントリー風で、2本の弦を同時にチョーキングするものだった。彼は指2本でやってたが、僕は指1本でやる方法を見つけた。カポも絶対に使わない。神様が僕に与えてくれたカポがここにあるから(人差し指を立てながら)。4本じゃなくて3本の指でたくさんのコードを弾けるようにした。それが重要だったんだよ」

Q:長年にわたって多くのギタリストと一緒に演奏してきましたよね。誰かに驚かされたことはありますか?

「(トラフィックの)デイヴ・メイスンには本当に感銘を受けた。彼と一緒にツアーをするまでは、彼の実力を過小評価していたが、実際に演奏を目の当たりにしてその凄さを知った。ライヴでの彼は別格だ。

ジェフ・ベックも。ジェフの頭で考えたことに、必ず手が追いつく。“それは無理だ”なんて言わない。彼はただ手を伸ばして、それを掴み取るんだよ。彼は誰も不可能だと思っていたことをやってのけ、しかもそれを完璧に聴かせた。ジェフ・ベック・グループのアルバム (クロッパーがプロデュースし、1972年にリリースされた) に参加したことは、僕の最も誇らしい瞬間の一つだよ」

Q:逆に、感心しなかった人はいますか?

「昔、スタックスにやって来た男に、誰にも自分のやっていることを真似されないように、弦にハンカチをかぶせていた人がいた。僕はそんなことどうでもよかった。確かに彼は素晴らしいプレイヤーだったが、感心はしなかったよ」

Q:若いギタリストにアドバイスをお願いします。

「金目当てでこの世界に入らないこと。楽しむためにやりなさい。うまくやれば、そのうち誰かがあなたにお金を払ってくれるようになるはず」

Q:演奏者として失敗したと感じた瞬間や、パフォーマンスで恥ずかしい思いをしたことはありますか?

「悪いライヴをした記憶は一度もない。市場に出したけれど売れなかったレコードはあったから、その点では失敗したのかもしれない。でも曲そのものは、自分としてはかなりクリーンで狙い通りの出来だった。ゴミみたいなものは出していない。自分の名前を載せる以上、クオリティの高いものじゃないとダメだ。売れないことはあるかもしれないけれど、僕自分は満足している。後悔なんてないよ」