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伝説的ギタリスト、スティーヴ・クロッパー死去

2025/12/04 08:46掲載(Last Update:2025/12/04 11:30)
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Steve Cropper
Steve Cropper
1960年代にスタックス・レコードのセッション・ミュージシャンとして活躍し、メンフィス・ソウル・サウンドの形成に貢献した伝説的ギタリスト、スティーヴ・クロッパー(Steve Cropper)が死去。家族が声明を発表。死因は明らかにされていません。84歳でした。

以下、家族の声明より

「深い悲しみとともに、スティーヴン・リー・クロッパーが本日、ナッシュビルで84歳で安らかに永眠したことをお知らせいたします。

スティーヴは愛されたミュージシャン、ソングライター、プロデューサーであり、その並外れた才能で世界中の何百万人もの人々に感動を与えました。ブッカー・T&The MG'sの伝説的ギタリストとして、またスタックス・レコードのサウンドの創始者として、彼は音楽史に残る不朽の名曲の数々、“(Sittin’ On) The Dock of the Bay”“Soul Man”、“Knock on Wood”、“In the Midnight Hour”の誕生に貢献しました。ロックの殿堂入りを果たし、グラミー賞受賞者であり、ソングライターズ・ホール・オブ・フェイムの栄誉も受けたスティーヴの影響力は計り知れません。

夫であり、父であり、友人であった彼の死を悼む一方で、スティーヴの音楽が永遠に生き続けることに慰めを見いだしています。

彼が奏でた一音一音、彼が書いた一曲一曲、そして彼がインスピレーションを与えたすべてのアーティストたちこそが、彼の精神と芸術性が今後も世代を超えて人々を感動させ続ける証です。

スティーヴは最愛の妻アンジェル・クロッパー、子供たちアンドレア・クロッパー、キャメロン・クロッパー、スティービー、アシュリー、そして彼の並外れた才能によって人生を大きく変えられた数えきれないほどのミュージシャンやファンたちを残して旅立ちました。

遺族は、この困難な時期に寄せられた皆さまの愛情と支援、そしてプライバシーへのご配慮に深く感謝しています」



スティーヴ・クロッパーは1941年10月ミズーリ州ドーラ生まれ。9歳の時に家族と共にメンフィスへ移住した。14歳で初めてギターを手に入れる。

1960年、クロッパーはメシック高校の同級生数名と共に白人R&Bユニット、ロイヤル・スペードを結成した。間もなくサックス奏者のパッキー・アクストンがグループに加わった。パッキーの母エステル・アクストンと叔父ジム・スチュワートは、メンフィス北部にある古い映画館を改装したレコーディングスタジオに隣接するレコード店を拠点に、新興レーベル、サテライト・レコード(後にスタックス・レコードに改称)を運営していた。

ロイヤル・スペードがマー・キーズ名義でリリースした「Last Night」が1961年にR&Bチャートで2位、ポップチャートで3位を記録した。その後、クロッパーはスタックス・レコードの一員となり、レーベルのA&R担当となった。

地元のロカビリーアーティスト、ビリー・リー・ライリーのバックバンドとしてのセッションが失敗に終わったことが、画期的なレコーディングにつながった。時間があったため、クロッパーと、その日に参加していた他のミュージシャンたち、ベーシストのルイス・スタインバーグ、ドラマーのアル・ジャクソン、そして10代のマルチプレイヤー、ブッカー・T・ジョーンズは、ジョーンズのハモンドオルガンが主役のスウィング感あふれるインストゥルメンタルを制作した。「Green Onions」と名付けられたこの曲は、スタックスにとって全国的な大ヒットとなり、R&Bチャートで1位、ポップチャートで3位にランクインした。

この曲は演奏したメンバーによって結成されたブッカー・T&The MG's(1964年にはルイス・スタインバーグに代りドナルド・ダック・ダンが加入)は、60年代の全盛期には、オーティス・レディング、ジョニー・テイラーらスタックス所属アーティストや、ウィルソン・ピケット、サム&デイヴ、カーラ・トーマス、エディ・フロイドらのスタックス・スタジオにおけるレコーディングでは、ほぼすべてのレコーディングセッションで演奏を担当した。

ギター演奏に加え、クロッパーは多作なソングライターでもあり、ブッカー・T&The MG'sの「Green Onions」「Soul-Limbo」「Time is Tight」、オーティス・レディングの「(Sittin' on) The Dock of the Bay」「Mr. Pitiful」、ウィルソン・ピケットの「In the Midnight Hour」「634-5789」、エディ・フロイドの「Knock on Wood」「Raise Your Hand」なども手がけた。

1970年にスタックス・レコードを離れた後も、クロッパーは多忙で需要の高いセッション・ギタリストであり続け、ジェフ・ベック、ジョン・レノン、ロッド・スチュワートなどのアーティストとのレコーディングを行った。

ブッカー・T&The MG'sは1971年に一旦解散するが、70年代から90年代にかけて再結成し、レコーディングやツアーを行った。

クロッパーは1978年には、元スタックスのバンドメイトであるドナルド・ダック・ダンとともにブルース・ブラザーズ・バンドに加入した。映画『ブルース・ブラザース』とその続編『ブルース・ブラザース2000』にも出演し、同映画のサウンドトラックも制作した。

1990年代には忌野清志郎のアルバム『Memphis』にも参加した。

クロッパーは1992年、ブッカー・T&The MG'sのバンドメンバーと共にロックの殿堂入りを果たした。またソングライターズ・ホール・オブ・フェームとナッシュビル・ソングライターズ・ホール・オブ・フェームにも殿堂入りしている。

クロッパーはこれまでに7度のグラミー賞ノミネート歴があり、直近では2021年発表の『Fire It Up』で最優秀コンテンポラリー・ブルース・アルバム賞にノミネートされた。

クロッパーの最後のスタジオ・アルバム『Friendlytown』は2024年にリリースされた。