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AIの加工技術を用いて変換した歌声が人気歌手と酷似 人気歌手の所属レーベルは歌声をAIに学習させたとして楽曲の著作権使用料を請求

2025/12/03 19:08掲載(Last Update:2025/12/03 20:00)
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Jorja Smith
Jorja Smith
男性アーティストの声をAIの加工技術を用いて女性の声に変換した、英国のダンスグループHavenの楽曲「I Run」。TiKTokで話題となりましたが、この変換後の歌声が人気歌手ジョルジャ・スミスと非常によく似ていることが問題視され、その後、他アーティストの著作権を侵害したとしてストリーミングサービスから削除されました。現在、この曲は実在の女性ヴォーカリストを迎えて再リリースされていますが、スミスが所属するレーベルFAMMは、この曲は彼女の作品に基づいて訓練されたAIによって作られたと主張しており、楽曲の著作権使用料を求めています。

Havenはプロデューサーのハリソン・ウォーカーとジェイコブ・ドナヒューからなるユニットで、ウォーカーは「I Run」のオリジナル・ヴォーカルは彼自身のもので、それを音楽生成ソフトウェア「Suno」を使用して女性の声に変換したことを認めています。

FAMMはInstagramで発表した声明で次のように述べています。

「これはジョルジャだけの問題ではありません。1人のアーティストや1曲の枠を超えた問題です…。私たちは依然として、両方のヴァージョンの楽曲がジョルジャの権利を侵害し、彼女がコラボレーションしているすべてのソングライターの作品を不当に利用していると考えています。彼ら(Havenとそのレコードレーベル)は“I Run”にはジョルジャのヴォーカルが使用されていないことを公に周知できたはずなのに、むしろ生じた混乱を面白がっているかのように見えました」

FAMMはHavenの楽曲によってファンが騙されたと主張し、「これが新たな常態になることを許してはならない」と付け加えています。FAMMはまた、もし自分たちの主張が認められれば、スミスの楽曲の共同作曲者に対し、作品の貢献度に基づいてロイヤリティを分配するとも述べています。

一方、Havenは自分たちがこの曲を書いてプロデュースしたと主張しており、ウォーカーは米ビルボード誌にこう語っています。

「ソングライター兼プロデューサーとして、新しいツールやテクニックを使い、最先端の技術を取り入れることを楽しんでいる。誤解を解くために言っておきますが、Havenのアーティストは実在の人間です。僕たちが望むのは、他の人間たちのために素晴らしい音楽を作ることだけです」

Sunoは同社のソフトウェアが著作権保護対象の素材も含めてトレーニングされていることを認めていますが、その行為は、批評、ニュース報道、調査などの目的で著作権で保護された資料を引用することを許可する「フェアユース」法の下では合法であると主張しています。

ジョルジャ・スミスの楽曲がそのトレーニングデータの一部であったかどうかは不明ですが、Havenは「I Ran」制作時にソフトウェアに「ソウルフルなヴォーカルサンプル」を使用するよう指示し、曲を作成しただけだと説明しています。

以下は、実在の女性ヴォーカリストを加えて再リリースされた「I Ran」