プリンス(Prince)のペイズリー・パーク・スタジオで、プリンスの盟友デヴィッド・Zとの共同プロデュースによって録音された、ファイン・ヤング・カニバルズ(Fine Young Cannibals)のヒット曲「She Drives Me Crazy」。プリンスの楽器・機材・手法も使われたこの曲は、なぜこれほどまでにプリンスと関係があるのか? メンバーのデイヴィッド・スティールが英ガーディアン紙の新しいインタビューの中で、楽曲誕生の経緯を語っています。
「She Drives Me Crazy」は1988年にリリースした、彼らの2作目にして最後のアルバム『The Raw & the Cooked』に収録されています。
「スタジオでいろいろ遊んでいるうちに、後に“She Drives Me Crazy”のリフとビートになるものを思いついた。ただ、その時点ではもっとロック寄りで、誰もそれをあまり気に入らなかったので、未完成曲の箱行きになったんだ。
“Good Thing”は“ビッグ・シングル”になる予定だったんだけど、ロンドン・レコードが他の曲で別のプロデューサーと組んでほしいと言い出してきた。僕らは“プリンス以外とはやらない”と返すと、彼らは“プリンスは無理だ!”と言いつつも、彼のエンジニアのデヴィッド・Zを提案して、しかもプリンスのスタジオ、ペイズリー・パークで作業することができると言った。何曲か送って、“She Drives Me Crazy”の初期ヴァージョンを送ると、デヴィッドが“これだ! すぐ来い”と返事をくれた。
その後、ロンドンからヴォーカル録りにローランド(ギフト)が来たとき、歌詞がまだ足りていなかった。プリンスに歌詞を書いてもらうことも一瞬考えたけど、そうするともうプリンスの曲になってしまう。代わりに、僕が持っていた曲名のノートに“She Drives Me Crazy”があって、そこから始めた。ローランドと僕は、ウィリアム・バロウズのカットアップみたいに、別の自分たちの曲から一行拝借したりしながら歌詞を仕上げた。ローランドはファルセットと通常のヴォーカルを並行させるように重ね録りした。プリンスが“If I Was Your Girlfriend”で使っていた手法だよ。
プリンスは近くにいたんだけど、僕らは気後れして迷惑をかけたくなかった。やがて“She Drives Me Crazy”がペイズリー・パークで録音された初のNo.1シングルになった後、プリンスはライヴ後のジャムでこの曲を演奏してくれ、僕らも正式に会えるはずだった。結局会えなかったけれど、時には謎を残しておくのも悪くないよ」