ブリティッシュ・ハードロック・バンド、
UFOが1980年にリリースしたスタジオ・アルバム『No Place to Run』は、ビートルズで知られる
ジョージ・マーティン(George Martin)がプロデュースを担当しています。メンバーが「ミスマッチ」、マーティンが「手を出して後悔している」と語る本作はどのようにして生まれたのか? その経緯をUFOのメンバーたちが英Classic Rockの最近のインタビューの中で振り返っています。
UFOのアンディ・パーカーは、バンドがマーティンと一緒に仕事をすることになったのは、カリブ海のモンセラに新設されたマーティンのAIRスタジオが空いていたからだと明かしています。
「あのスタジオはジョージが期待していたほど使われていなかったので、ブッキングすれば彼がアルバムをプロデュースすることになっていたんだ」
マーティンは、バンドのレコーディングに対するアプローチ、特にヴォーカリストのフィル・モッグが最後の瞬間まで歌詞を書かないという姿勢に驚いていたという。ピート・ウェイは、2016年のインタビューの中で、こう話していました。
「彼は時々“今日はフィルは来るのか?”と尋ねた。ジョン・レノンやポール・マッカートニーが歌詞を用意してくるのに慣れていたからね。ジョージは歌詞がないことを心配していて、俺らは、なだめるしかなかった。“大丈夫、もうできてるよ”ってね。でもみんな、フィルがビーチで水上スキーをしているのをよく知っていたけどね」
フィル・モグは、こう振り返っています。
「ジョージが俺の歌詞を読み上げることもあった。
(マーティンのアクセントを真似てタイトル曲“No Place To Run”の冒頭を抑揚をつけて朗読する)“ジョーイは地下鉄に乗って東から西へ猛スピードで移動する。街では彼はナンバーワン、最高だって言う人もいる”。
それで彼は聞くんだ。“このジョーイって誰? 地下鉄で何をしていたんだ?”って。ちょっとしたカルチャーギャップだったね」
フィル・モグは完成したアルバムについて、こう振り返っています。
「良いアルバムを作ったと思う。時折、少しお行儀よく聞こえてしまうことはある。(マーティンとの組み合わせは)ちょっとミスマッチだった。
彼は自分がそこで何をしているのか疑問に思っていたに違いない。彼は俺らにそれほど入れ込んでいなかったと思う。おそらく単なる仕事の一つだったんだろう。ただ、レコーディング自体は楽しんでいたのは明らかだったけどね」
マーティンは後にインタビューでこう語っていました。
「かつてヘヴィメタルにちょっと手を出したことがあるんだが、それをすごく後悔している。(あのジャンルを)まったく理解できなかった」
マーティンをうんざりさせたのは、UFOなのかははっきりしませんが、ピート・ウェイは、かつてこう話していました。
「ジョージはおそらく俺たちのことを話していたんだと思うよ」