オジー・オズボーン・バンドでも活躍したギタリスト、
ジェイク・E・リー(Jake E. Lee)が「自身の最高傑作」だと断言しているのは、
バッドランズ(BADLANDS)の1stアルバム『Badlands』。リーは改めてこのアルバムについて語り、また、このアルバムが現在、入手困難である理由と、再び日の目を見る可能性についても語っています。
「完璧だと思った。何の問題もなかった。売れるかどうかはわからなかったが、一生誇りに思える作品だという確信はあった。
(オジー・オズボーン・バンドの最後の頃は)少し不満を感じ始めていた。正直に言うと、オジーとの活動終盤にはもっと幅を広げたかった。何を演奏するにしてもハードロックのエッジが好きなんだけど、もう少し実験してみたかったんだよ。
バッドランズでは、自分がやりたいことを何でもやることができた。当時はブルースにどっぷりハマっていたし、(ヴォーカルの)レイ・ギレンと出会ったとき、彼も同じことをやりたがっていた。僕たちはただ、やりたいことをやっただけで、その結果、よりブルース・ロック寄りのバンドになったんだ。
プレイヤーって、“ああ、これで完璧だ。これが僕だ。これ以上進む必要はない”って本気で思う段階に到達することなんてないと思うんだ。いつだって、もう少し良くなれるだと思うものだよ。
(それでもバッドランズでリーは誰よりも近づいたという)
あと一歩のところだった。(近くまで)到達した。自分の演奏にもバンドにもかなり自信があった。“世界最高のバンドだ。誰であろうとオープニング・アクトを引き受ける。誰であろうと気にしないが、僕たちがオープニング・アクトをやることで、後悔することになるかもしれないぜ”って思ってたよ。
(リリースできて)本当にうれしかった。でも、その全てが崩れ去った時、あまりにも打ちのめされて、もう何もしたくなかった。10年くらい、何もやっていない時期があった。バッドランズで起きたことに深く傷ついていたからね」
Q:『Badlands』の最高のソロの一つは「Winter’s Call」で聴けます。あのソロを作った時のことを覚えていますか?
「トミー・ボーリンの魂を呼び起こそうとしてたんだ。あのソロの最初の音、ちょっと外れてるだろ? ポール・オニールがあのアルバムの共同プロデューサーだったんだけど、彼は“頼む、この最初の一音、本当に困惑しているんだ”って言うんだ(笑)。僕は“変えたくない。この音が大好きなんだ!この音は完璧だと思う”って返した。そしたら、彼は金で買収しようとしたんだよ。
“今すぐ俺の財布から500ドル渡すよ。それに『キャッツ』のチケットも、高級レストランでのディナーも奢る”ってね。さらに彼は“別のテイクを使うとは言ってない。ただ、あの変な音じゃないヴァージョンを聴きたいだけなんだ”と続けた。僕は“ダメだ”と言った。もしもう一本録ったら、絶対そっちが採用されるってわかってたからね。
サイケデリックな響きにしたかったんだよ。ちょっと音程が外れてはいるけど、それがすごく気に入っていた。少し外れてても、そのままにした。あのフィーリングが本当にクールだと思ったからね。いろんなモードを試したんだ。ロクリアン・モードがあったり、フリジアンがあったり、60年代にLSDでもやったみたいに聴こえるように、あれこれ試してたんだよ(笑)」
Q:「Dreams in the Dark」はシングル曲で、おそらくアルバムの中で最もポップなサウンドの曲だと思います。あれはどういった経緯で生まれたのですか?
「アルバムのレコーディングをロサンゼルスで始めたんだけど、半分くらい進んだところでアトランティック・レコードから“シングル曲がない”って言われたんだ。だからレイと僕はニューヨークに戻って、さらに曲作りを始めた。“Winter’s Call”もその一つで、彼らはそれもシングル曲だとは思わなかった。僕はただ“わかった…”と言うだけだった。
人生で一度も、前にも後にも、ヒット・シングルを狙って曲を書いたことはなかった。でも“Dreams in the Dark”はポップ・ソングを書こうとした僕なりの試みだった。レコード会社からのプレッシャーがなければ、たぶんあの曲は書かなかっただろうね。でも、いい曲だと思うよ」
Q:レイ・ギレンはオジーよりもインスピレーションを与えてくれましたか?
「いや。彼らを歌手として比較したくない。レイは並外れたシンガーで、歌唱力という点では一生に一度出会えるかどうかの存在だった。でもオジーも同じく一生に一度のシンガーだ。彼は唯一無二の声を持っている。オジーが歌えば、オジーだとすぐにわかる。誰かと混同することはない。彼は唯一無二の声に恵まれているし、ソングライティングやメロディも、彼はすぐに思いつく。すぐにそのメロディを歌ってみせてくれる。努力してひねり出す必要なんてなかった。彼には自然に湧いてきたんだ」
Q:『Badlands』こそが、あなたの最高傑作だと考えるファンが大勢います。あなたもそう思いますか?
「僕の音楽キャリアの頂点は、間違いなく『Badlands』だった。もちろん、クラブでの演奏から、いきなりオジーのバンドに放り込まれたのも素晴らしい経験だった。でも『Badlands』は、創造性の点でも、ほかのミュージシャンとの共同作業という点でも、バンドという一体感の点でも、最高のものだった。
89年に初めて完成品を聴いたとき、売れるかどうかはわからなかった。でも、本当に本当に良い作品だということはわかっていた。自分にとっては完璧な作品だと思えた。曲作りにすごく力を注いだし、レコーディング中は皆のために常にそこにいた。ミックスにも立ち会って、自惚れに聞こえるかもしれないが、これは美しい芸術作品だと思った。今はもう入手できないのが残念だけど、まあいいさ」
Q:『Badlands』はストリーミング配信されておらず、フィジカル・メディアも入手できません。この状況を変える予定はありますか?
「ひとつ手はあるかもしれないんだけど、すぐに行動を起こさなきゃいけない。マスター音源を入手できるかもしれない方法があって、本当にすぐに取りかからなきゃいけない。それが唯一の手段なんだ。期限が迫っている」
Q:様々な説がありますが、なぜ『Badlands』は埋もれてしまったのでしょうか?
「あのアルバムは、もう滅茶苦茶だったんだ。入手できない理由については様々な説があるけど、原因は(アトランティック・レコードの共同創設者で元社長)アーメット・アーティガンだよ。『Badlands』を葬れと彼が命じたんだ。もう二度と日の目を見せるなって言った。彼はレイにひどく腹を立てていて、ポール・オニールとも仲たがいしていた。
彼が正確に何と言ったかは知らないけれど、アーメットはレイに対して激怒していた。これは事情を知る人から聞いた話なんだけど、彼が命じて言ったんだよ。“『Badlands』を葬り去れ。二度と日の目を見させるな。彼らは過去のものだ”ってね。彼が権限を持つ人だったからね。彼のレコード会社だったんだ」
Q:あなたにとって明らかに大きな意味を持つこの音楽が再び日の目を見る可能性について、どうお考えですか?
「誰にもわからないよ。いつの日か、レーベルにいる人が“もう十分に罰しただろう”と言うのではないかと期待している。このアルバムの再発売を望む人は多いから、お金になる可能性はある。関心はすごく高いんだ。
それに、埋もれて入手困難な状態こそが、ある種の伝説性を高めてきた面もある。でも結局のところは、企業ってそういうものだから、誰かが“これで儲けよう。もう一回出そう”と言う日が来るはずだよ。そう願っているよ!」