
Buggles / Video Killed the Radio Star
英国のMTVチャンネル5局(音楽専門のMTV Music、MTV 80s、MTV 90s、Club MTV、MTV Live)が12月31日をもって放送終了することになり、英国では「ミュージックビデオの時代は終わったのか?」と話題に。英ガーディアン紙は「ミュージックビデオは危機に瀕しているのか?」と特集しています。
MTVの親会社パラマウントは先日、英国で放送中の5つの音楽専門チャンネル(MTV Music、MTV 80s、MTV 90s、Club MTV、MTV Live)を2025年12月31日をもって放送を終了すると発表しました。リアリティ番組などを放送する主力チャンネルのMTVは引き続き放送されます。
これを一つの時代の終わりと受け止める人がいる一方で、インディーズ・ミュージシャンのハンナ・ダイアモンドのように、その時代はもっと前に終わっていたのではないかと指摘する声もあります。「MTVが話題に上らなくなってから長い時間が経っているので、終わると聞いても正直まったく驚かない」と同紙に語り、彼女にとっては、音楽ビデオを公開する主要な場は、常にYouTubeだったと付け加えています。
現代の業界におけるミュージックビデオの立ち位置はどうなのでしょうか? 今でも表現とプロモーションのための重要な手段となっているのでしょうか?
ジョナサン・グレイザーら映画監督をミュージックビデオ制作で世に送り出した名門プロダクション、アカデミー・フィルムズの開発責任者ジェニファー・バーンは、同紙にこう語っています。
「レーベルは以前ほどビデオ制作に多額の投資をしようとはしない。彼らはその資金を、かつてよりも、はるかに多くのものに振り向けようとしている。かつては3分間の映像1本あればよかった。それが今では(オンライン動画やソーシャルメディアプラットフォームの多様化に伴い)どうすれば、さまざまな視聴者にリーチできるのか、10通りに切り分けられるのか、というのが問われるようになっている」
ロンドンを拠点とするアイリス・ルズ監督は、いまやミュージックビデオはプロモーションツールというより、「視聴者にアーティストを支持したくなるような、親しみやすさやブランディングのための媒体」だと考えていると同紙に語っています。「TikTokやインディーズ・アーティストの台頭によって、みんな作り終えたらすぐ楽曲を出すようになりました。だからビデオは、15年前みたいに大きな注目を集めるのではなく、その瞬間のアーティストの在り方を伝える即時性を伝えるために作られているんです」と続けています。
インディーズ・ミュージシャンのダイアモンドにとって、ミュージックビデオの制作は難しいという。「よほど大きなレーベルが後ろにいて“投資に値する”と見なされるような本当に大物のアーティストでもない限り、ミュージックビデオ制作の予算が得られない時代に、私はミュージシャンになったんです」とも同紙に語っています。
監督たちも苦境に立たされているという。バーンは語っています。
「昔はアーティストが“Glazerの作品が気に入ったので、彼と話をしよう”という感じだったのが、今では(おそらく)10人もの監督と競って(アーティストに)売り込む必要がある。素晴らしい企画書を作って競争に勝たなければ、監督にとっては無償労働になってしまうんだ。
ミュージックビデオでお金を稼げる人はいない。制作会社だってそう。それでも作り続けるのは、これらが本当に重要で、監督が独自の表現スタイルを確立する上で不可欠な要素だから。
『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』の監督デュオ、ダニエルズを見れば分かるはず。彼らはミュージックビデオの世界からキャリアをスタートさせ、やがてオスカーを獲った。ミュージックビデオは今もなお、個性的な才能が光り、リスクを取れる場であり続けているんだよ」
(写真は、MTVで放送された最初の音楽ビデオであるバグルスの「Video Killed the Radio Star」)