
Saving Grace, photo by Tom Oldham
ロバート・プラント(Robert Plant)率いる
セイヴィング・グレイス(Saving Grace)は9月末にデビューアルバム『Saving Grace』(ロバート・プラント名義)をリリースしましたが、プラントはもうアルバムは作らないつもりだったそうです。「最初(アルバム制作を)考えたことさえなかった」そうですが、セイヴィング・グレイスのメンバーとのレコーディングは、プラントの考えを変えるきっかけになりました。ポッドキャスト『Rockonteurs』の新しいインタビューの中で語っています。
「この日は決して来ないはずだった。そもそも最初から予定されていなかったんだ。“もうアルバムは作らない”。そういうことだったんだ」
その代わり、プラントは自分がやりたい時に、やりたい場所でライヴをやるという考えを気に入っていました。
「要するに、これ(アルバム)は自分の中では最初から考えたことさえなかった。ただもう(アルバムを)作りたくなかった。終わりというわけじゃない。ただ、もう十分だと思ったんだ」
同名アルバムとなったセイヴィング・グレイスのメンバーとのレコーディングは、プラントの考えを変えるきっかけになりました。2019年に始まったセッションはゆったりとしたペースで楽しみながら、このプロジェクトのための曲作りに取り組み、パンデミック中もその後も可能性を熟考し続けました。
「50~60年前の楽曲には、今では現代ポピュラー音楽の一種の正典として、よく知られている名曲が無数にある。たとえば“The House of the Rising Sun(邦題:朝日のあたる家)”。アニマルズがニューカッスルから降りてきて、ミッキー(モスト)のスタジオに入って録音したとき、彼らは(録音を)聴くことさえしなかった。すぐにブライトンへ演奏しに行ったとか、そんな感じだった。あの曲も、ああいう(クラシックな)曲も、別の何かへと昇華していくんだ」
プラントはこれより前、アリソン・クラウスとの出会いで変化の時が来たと悟ったという。2004年に番組でクラウスと共演した際、こう思ったと語っています。
「僕にとって、それは解放であり、逃避だった。(ソロアーティストとしては)もうやれるところまで到達してしまったと自覚していたからね。同世代の仲間のところに戻る意味なんてなかった。だって、その仲間自体がもういないんだから。
素晴らしいプレイヤーはいたけれど、当時の僕は、もう本当は歌いたくない曲を無理やり別の方向にイジって歌い過ぎていた。歌うにしても、まったく違うやり方でやるべきだ、とね。(でも本当は)バンジョーでもアコーディオンでもなくて、とにかく休むべきなんだ。だから休んでナッシュビルへ行き、そこで僕は再出発したんだ」
好意的な評価を受けたクラウスとプラントのデュオは、これまでに2枚アルバムをリリースし、ツアーも行いました。
プラントは過去数十年にわたって、さまざまなグループを結成してきた理由について、常に新鮮で刺激的なものにしておきたいという思いからだと明かしています。
しかしプラントは今、セイヴィング・グレイスのメンバーとの結びつきについて非常に前向きに感じているという。そこには、彼が喜んで受け入れている“ゆるさ”があります。
「それが最高で、みんなで笑い合えるんだ。(その瞬間に起きていることに)十分満足していれば、間違えることなんて気にならない。
この全てにおいて最も重要なのは、僕ら一人ひとりがこれからも演奏を続けることで、今のように良い状態が続く限り、僕はこの仲間たちと一緒にやり続けると思う。これからもそうであり続けるだろうし、さらに成長し、その先へと進んでいくはずだよ」