
Ozzy Osbourne / Last Rites
オジー・オズボーン(Ozzy Osbourne)の最後の回顧録『Last Rites』(海外で10月7日発売)から、7月に開催されたオジーと
ブラック・サバス(Black Sabbath)の最終公演『Back To The Beginning』についての抜粋が英The Times紙にて公開されました。
公演の準備時に失敗を恐れ、不安を抱えていたオジーに対して、妻でマネージャーのシャロンがオジーを奮い立たせるために言ったことが明かされ、またオジーが公演当日を詳細に振り返り、この最終公演への思いを明かしています。
「(空港でバーミンガム行きの飛行機に搭乗する準備をしていた時)最悪だったのは、車椅子から降りてボディスキャナーの中を“歩いて”通れと言われたときだ。あやうく、ひっくり返るところだった。まあ……順調に進んでるじゃねえか、とそのときは思ったさ。
で、やっとのことでイギリスに着いてから3日後、また病院に戻ることになった。血圧の問題で8日間入院することになり、その間、俺ができることは心配することだけだった。公演の規模がどんどん大きくなっていったからな。
ガンズ・アンド・ローゼズ、メタリカ、エアロスミスのスティーヴン・タイラーって、大物アーティストが続々発表されるたびに、俺は“マジかよ、これはメタル版ライヴ・エイドみたいになるぞ”って思ったんだ。夜、ベッドに横になりながら、“無理だ、できない”ってずっと思ってた。シャロンには“ステージが空っぽになるから、ビデオを撮っておいた方がいい”って言い続けていた。彼女はただ、俺をどうかしていると見てた。彼女は俺より俺のことをよく知ってる。俺がただビビってるだけだって、彼女は分かってたんだ。
最終的に、シャロンはこう言った。“いい? 代替案なんてないのよ。ビデオも、事前収録も一切なし。もし本番で歌えなくても、観客に話しかけて感謝すればいい。必要なのはステージに立ってオジーであることだけ、それだけよ”」
オジーは最終公演『Back To The Beginning』の当日について、こう振り返っています。
「ステージに上がったとき、俺の頭にあったのは“本当に俺の声は大丈夫なのか?”ということだけだった。でも幕が上がった瞬間、緊張なんて吹き飛んだ。突然、目の前に4万2千人の顔が広がり、さらにオンラインで580万人が観ている。その瞬間、感情が一気に押し寄せてきた。こんなにたくさんの人が俺のことを好きでいてくれるなんて――いや、そもそも俺のことを知ってくれているなんて――これまでちゃんと実感したことがなかった。本当に圧倒されたよ。本当に、そうなんだ。
“I Don't Know”も、“Mr. Crowley”も、“Suicide Solution”も何の問題もなく歌い切った。最高に楽しかった。でも“Mama, I'm Coming Home”に入ったところで、込み上げてきて声が詰まった。だって、あれはシャロンの曲なんだ。彼女のお気に入りの一つなんだ。レミー(キルミスター/モーターヘッド)が、俺たち2人のことを想って書いてくれた。それだけでもう目に涙がたまる。でも感じていたものは、それだけじゃなかった。これは俺にとっての最後の晴れ舞台だ。自分で歩くことも何をすることもできなくなった、あの6年間のつらい時期を経て、ようやくステージに立てたんだ。その全てが丸ごと一つに結びついた瞬間だった。
もう感情を抑えきれなかった。観客席ではみんながスマホのライトを掲げていた。新聞には“まるで自分自身の通夜に参列しているみたいだった”と書いた人もいたけど、確かにそれは実にメタルらしい表現だ。でも俺は葬式とは感じなかった。お祝いの場に思えたんだ。あのスタジアムには愛が溢れていて、波のように俺のところへ押し寄せてきた。涙は頬を伝って流れていたけど、心はすごく高揚していた。観客は俺が苦戦していることに気づき、歌詞を俺に向かって歌い返してくれた。こんなに素晴らしいファンに恵まれた俺は本当に幸運だ。神のご加護がありますように。
曲の終わりには、ありがたいことに、なんとか気持ちを立て直すことができた。それから“Crazy Train”で最後の演奏を楽しみ、いよいよサバスのセットの時間だ。
サバスの連中も、俺が二つのセットを続けてやることに俺と同じくらい緊張していた。うまくやれるのか見当もつかなかったが、これ以上ないほどうまくいった。観客が“War Pigs”のメロディを、まるでワールドカップでイングランドを応援するみたいに合唱し始めたときは、ほんとに感動したよ。そこから“N.I.B.”、“Iron Man”……そして“Paranoid”をやったんだ」