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ベースの音がほとんど聞こえないメタリカ『...And Justice For All』 プロデューサーは自身が考える理由を2つ挙げる

2025/10/02 19:05掲載
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Metallica / ...And Justice for All
Metallica / ...And Justice for All
ベースの音がほとんど聞こえないメタリカ(Metallica)『...And Justice For All』。プロデュースしたフレミング・ラスムッセンは、チリのFuturo誌の新しいインタビューで、改めて、このベースの音がほとんど聞こえないミックスについて語っています。

「ラーズ(ウルリッヒ)はね、アルバムを作るたびに必ず俺のところへ持ってきて聴かせてくれるんだよ。で、俺がうなずいて“いい出来だ”って言うのをいつも期待してる。でも『...And Justice For All』の時は、俺は彼を見て“これ何?”って言った。彼は“ミックスだよ”って言うから、俺は“いや、違うだろ。ベースがない”って言ったんだ。だって、そこにはベースがなかったんだから。

最初はスケジュールが埋まってたから、そのアルバムの仕事を断らざるを得なかった。だから彼らはマイク・クリンクと始めた。ところが1月に入って3週間たった頃、スタジオに入ってから3週間後に、ラーズから電話が来て“フレミング、いつ来られる?”って言われたんだ。俺は全てのセッションを調整して、いくつかは延期した。2月14日に現地入りし、5か月間レコーディングしたよ。俺が着いた頃には、彼らはすでにロサンゼルスの腕利きミキサー、スティーヴ・トンプソンとマイケル・バービエロにミキシングを頼んでいた。

で、なにがあったか、話はこうだ――メタリカが飛んできて、彼らの作業を聴いて、“いやいやいや”“俺のドラムの音はどこだ?”“俺のギターの音はどこだ?”ってなった。実際ラーズは“ベースを下げて、かすかに聴こえるくらいにしてくれ”って言ったんだ。彼らはそのとおりにした。YouTubeで見られるよ。スティーヴ・トンプソンがその話をしている動画がたくさんある。彼らがそうした後、ラーズはさらに“そこからもう3dB下げてくれ”と言った。つまり、そう決めたのはラーズとジェイムズ(ヘットフィールド)なんだ。なんでそんなことをしたのかって? 彼らに何千回も尋ねたけど、俺にはわからない。

(クリフ・バートンとジェイソン・ニューステッドは)まったくタイプの違うベーシストだった。クリフはより自由で、作曲にもずっと関わっていた。ジェイソンは『...And Justice For All』の作曲には関わっていなかったと思う。

彼らがベースを下げた理由の半分は、たぶん(当時)ヴァン・ヘイレンとのツアー中で、彼らが飛行機で戻ってきてミックスを聴いたからだと思う。その時点でラーズとジェイムズは気づいたんだと思う。“もうクリフはいない。これは彼のベースじゃない。全く違う音だ”って。彼らはその時点では、それを受け入れられなかったんじゃないかな。おそらくそれが理由の半分だろう。まあ、これはあくまで俺の推測で、本当かどうかはわからない。

残りの半分は、彼らがジェイソンのことを最も嫌っていた理由だ。彼はメタリカの大ファンだったから、何を頼まれても何でも言うことを聞いてしまったんだよ。だから、彼を苛立たせるためだけにベースを下げたんだと思う。彼らは“ベースを上げてくれない?”と言うだろうと予想していたのに、彼はおそらく一度も言わなかった。だからベースがあんなに小さいんだ。……でも、わからない。本当のところはわからないんだ。

面白いことに、最近どこかで読んだんだけど、『...And Justice For All』は“バンドを始めたきっかけ”として世界中で最も多く挙げられるアルバムなんだってさ。つまり『...And Justice For All』は、世界のどのアルバムよりも多くの新しいバンドを生み出したってわけだ。もし新しいバンドを始めたいなら、ベーシストにはならないほうがいいよ」