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ザ・フー89年ツアーの2ndギタリスト、リハーサルでのピート・タウンゼントとの小競り合いを回想

2025/09/23 17:24掲載
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Pete Townshend, Steve  Bolton (Image credit: Townshend: Chris Morphet/Redferns | Bolton: Davide Sciaky/Alamy)
Pete Townshend, Steve Bolton (Image credit: Townshend: Chris Morphet/Redferns | Bolton: Davide Sciaky/Alamy)
ザ・フー(The Who)は1989年のツアーでは、以前より患っていた難聴が悪化し始めたピート・タウンゼント(Pete Townshend)はアコースティック・ギターを弾くに留まり、セカンド・ギタリストとしてアトミック・ルースターのスティーヴ・ボルトンを起用しました。ボルトンは米Guitar Playerの新しいインタビューの中で、このザ・フーでの経験を振り返っています。

「1988年頃のある日、電話が鳴って受話器の向こうから“ボルトン、ピート・タウンゼントだ!”って声がした。俺は“はいはい、そうだろうな”って返したら、彼は“いや、切らないでくれ、頼みたいことがあるんだ。ザ・フーのリードギターをやってくれないか?”と言ったんだよ。ピートは“君の大ファンで、ポール・ヤングのバンドで何度も見たよ”と言い、“君の中に自分を見出したんだ”とも言っていた。

彼はさらにこう続けた。“この仕事にふさわしいのは二人だけだ。一人はジョー・ウォルシュ、もう一人は君だ。ウエストロンドンにある俺のスタジオでオーディションのようなものをやろう”」

オーディションに合格すると、ボルトンはカセットテープが詰まった箱を渡され、アルバム『Tommy』全曲を含む200曲を覚えるよう指示されました。

このツアーには10人以上のサポートミュージシャンが参加しており、ボルトンはその一人としてリードギターを担当しました。リハーサルはザ・フーが不在のまま始まり、数週間後、タウンゼントが進捗状況を確認するために訪れました。

「俺たちはウェストロンドンの巨大なリハーサル室にいたんだが、機材で埋め尽くされていたからスペースが狭くなっていた。ピートは付き人を何人か連れてきていて、その一人が俺たち全員に向かって“ピートはバンドに『Tommy』から“The Overture”を演奏してほしいと言っています”と言った」

「The Overture」は、アルバムの主要なテーマを織り交ぜた構成で、その中には「Pinball Wizard」の特徴的な、軽快に弾かれるアコースティックギターのリフも含まれています。

ボルトンは、タウンゼントがいないリハーサルでは、このパートをエレキギターで演奏していました。しかし、タウンゼントが戻ってきた今、ボルトンはタウンゼントが自らこのパートを担当するだろうと考えていました。

タウンゼントの耳を保護するため、スタジオには彼専用のブースが設けられていました。「壁にはスピーカーが二つと女王陛下の写真が飾ってあった。彼はそこでタカミネのアコースティックギターを抱えていたんだ」とボルトンは説明しています。

「Pinball Wizard」のリフを弾く瞬間が訪れましたが、静まり返っていました。

「何も聴こえない。俺も彼も演奏していないからね。俺が部屋の斜め向こうを見ると、ピートが俺を睨みつけていた。彼は“やめろ!”と叫ぶと、全員が演奏を止めた。

それから彼はタカミネを粉々に叩き壊し、ブースの前面を蹴飛ばして、まっすぐに俺の方へ歩いてきた。彼は俺の顔に顔を突き合わせて“一体何やってんだ、お前は?”と言った。

俺は彼の胸ぐらをつかんで“いいか、お前がアメリカでぶらぶらしてる間、俺がお前のカバーをしてたんだ”と言い返した。さらに“お前がここにいてギターを持ってるんだから、そのパートをやると思った。だから俺は弾かなかったんだ”とも言った。

そしたら彼が何て言ったか分かるかい? “これは俺のバンドだ。俺がやりたいようにやってもいいんだ!”」

こうした問題があったにもかかわらず、ボルトンはザ・フーでの期間を、自身のキャリアの中で最も記憶に残る、そして最も大切なものの一つと考えているという。タウンゼントとの関係は今でも変わらず続いています。ボルトンはこう話しています。

「ピートはとても複雑な性格の持ち主だ。でも、それが彼を彼たらしめているんだよ」