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ジョージ・ハリスンがルーシー・レスポールを取り戻すために交換として引き渡した身代金レスポール それを売った著名ギターディーラーが当時を回想

2025/08/28 19:15掲載
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George Harrison's 1958 Ransom Les Paul
George Harrison's 1958 Ransom Les Paul
ジョージ・ハリスン(George Harrison)が愛用した1957年製ギブソン・レスポール「ルーシー」。1973年に盗難にあった際、「ルーシー」を取り戻すために交換として引き渡した1958年製レスポール(身代金レスポール)は、ヴィンテージ・ギター界のカリスマ、ノーマン・ハリスから購入したものでした。ハリスは英ガーディアン紙の新しいインタビューの中で、この身代金レスポールについて振り返っています。

ハリスが1950年代半ばから60年代初頭のアメリカ製ギターがいつか非常に価値のあるものになると直感で確信して、ギターディーラーとして知られるようになった1973年のある日、彼のキャリアが一気に飛躍する出来事が起きました。

「友人から電話がかかってきた。彼は“レスポールが必要な人と一緒にいる”と言っていたが、それが誰だか教えてくれなかった。会いに行くと、そこにいたのは友人だけだった。僕が“わざわざこんなところまで来させたのか? 大事な用件みたいに言っていたのに”と言うと、そこにジョージ・ハリスンと(ビートルズのロード・マネージャー)マル・エヴァンズが入ってきたんだよ。二人は隣でピザを買うために席を外していたんだ」

ジョージは、前年に盗まれたギブソン・レスポール「ルーシー」の交換品を探していました。

「ルーシー」は1957年製のゴールドトップで、赤に再塗装されています。これはエリック・クラプトンが購入し、ジョージに贈ったものでした。クラプトンはこのギターをビートルズの「While My Guitar Gently Weeps」で使用しました。

「ルーシー」は1973年にジョージの自宅から盗まれ、ほどなくして、犯人はハリウッドのサンセット大通りにある楽器店に売却。その後、メキシコ出身のMiguel Ochoaというミュージシャンが購入しました。

ジョージがギターを探し出し、「ルーシー」を取り戻すために交渉すると、Ochoaは代わりに、フェンダー・プレシジョン・ベースと、もう1本の1950年代製レスポールを提供すればジョージに返すと主張しました。

ここで共通の友人が介入しました。その友人はハリスが自宅に1950年代製のレスポールを3本持っていることを知っていました。ジョージが訪れた際、彼は1958年製のレスポール・スタンダードを2本購入しました。1本は交換用、もう1本は自分用で、そのもう一本は彼が惚れ込んだものでした。

「その日は一日中一緒に過ごしました。それから、彼がハリウッド・ヒルズで借りていた家に行くと、そこにはインドのシタール奏者ラヴィ・シャンカールがいました。僕にとってビートルズは、ローマ法王や大統領よりも偉大な存在だった。僕はただただ彼を見続けていました。まさかこんなことが起こるなんて信じられませんでした」

ジョージは代金の一部として、ビートルズ時代に使用していたグレッチ・カントリー・ジェントルマンをハリスに提示しました。しかしハリスはこれを断りました。今となっては人生最大の過ちだったと語っています。

「僕はグレッチの大ファンというわけではなかったし、それに何より、ジョージと一日を共に過ごして彼のビートルズ時代のギターを購入したなんて、誰も信じてくれないだろうと思ったから」

Ochoaは身代金レスポールを10年間保管しましたが、家の購入資金を捻出するために売却。その後、さまざまな人物を渡り歩いた後、2022年にオークションに出品され、312,500ドル(当時約4,500万円)で落札されています(詳しくはこちら