キッス(KISS)が1975年にリリースしたライヴ・アルバム『Alive!(邦題:地獄の狂獣 キッス・ライヴ)』はスタジオでオーヴァーダビングされました。そのスタジオでの修正作業では、
ピーター・フランプトン(Peter Frampton)の楽器も使われたという。本作をプロデュースした
エディ・クレイマー(Eddie Kramer)は米Guitar Playerの新しいインタビューの中で、このアルバムのオーヴァーダビングについて振り返っています。
このアルバムは「キッスのライヴでのエネルギーを捉える」ことを意図していましたが、すべての要素をうまく捉えるのは困難でした。例えば、ポール・スタンレーは激しいステージパフォーマンスのためマイクから離れることが多く、またステージの照明の熱でギターのチューニングが狂うこともありました。
クレイマーは、ライヴの制作要素が主な原因だったと認めています。
「爆弾が爆発したり、ジーン(シモンズ)が火を吐いたり、エース(フレーリー)のギターからロケットが発射されたり。それに超ハイヒールのブーツを履いてステージで飛び回る様子を想像してみてほしい! 少しバランスが崩れるのも無理はないんだ。
キッスは新しいバンドで、彼らがライヴに注いだ努力は並大抵のものではなかった。だから僕たちはエレクトリック・レディ・スタジオでギターとヴォーカルのオーバーダブをたくさんやったんだよ」
偶然にも、ピーター・フランプトンは当時、エレクトリック・レディ・スタジオでライヴ・アルバム『Frampton Comes Alive!』(翌1976年リリース)の制作中でした。
フランプトンは2005年、米Guitar Playerのインタビューの中で、フレーリーとスタンレーが『Alive!』のサウンドを磨き上げる際に、自身の機材をふんだんに活用したと明かしていました。
「僕たちは『Frampton Comes Alive!』のミキシングをしていた時、隣ではキッスが『Alive!』のために同じ作業をしていた。彼らは何度も僕たちのところに来て、ギターやアンプ、ベースがあるか尋ねてきた。彼らはライヴ・アルバムの修正作業をしていたからね。彼らは何度もやって来て、様々な機材を借りていったんだ。だからあのアルバムには僕の機材は使われている。僕自身はいないけどね!」
クレイマーはフランプトンのこの証言について本当かどうか尋ねられましたが、50年も前の話しなので、フランプトンのギターが『Alive!』で使用されたかどうかは覚えていないという。
「エースとポールが持っていたマーシャルのスタックの他に、ピーターのアンプがスタジオAにあったのは覚えているよ。今思い出せる機材はそれくらいだ。50年前のことだからね」
批評家の中には『Alive!』について、スタジオ作業が行われたことを理由に批判する人もいますが、クレイマーはパフォーマンスを向上させるという決断を後悔していません。
「オリジナルのライヴとリハーサルのすべてを聴いたけど、彼らは驚くほど良かった。本質的な部分はしっかりとあり、演奏も見事で、素晴らしいライヴ・アルバムにするために必要なことはすべてやった。最終的には、このアルバムはマルチ・プラチナを獲得し、約800万枚を売り上げ、キッスを大ブレイクさせたアルバムとなったんだよ」