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セッションミュージシャンの業界が縮小しているためキャリアチェンジ中のセッション・ギタリスト 業界の変化を語る

2025/08/11 21:28掲載
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Tim Pierce (Image credit: Getty Images)
Tim Pierce (Image credit: Getty Images)
セッション・ギタリストとして、ボン・ジョヴィ「Runaway」のギターパートをはじめ、マイケル・ジャクソン、ジョー・コッカー、フィル・コリンズ、アリス・クーパーなど、数多くの作品に参加してきたティム・ピアースですが、現在はセッションミュージシャンとしてのキャリアを徐々に辞め、近年はYouTubeなどで音楽業界で長年培ってきたギターのヒントを提供する教育分野の仕事をメインとしています。

ピアースは米Guitar Worldの最近のインタビューの中で、業界の変化が自分の仕事に影響を与え、セッションミュージシャンとしてのキャリアを辞めることにした理由を語っています。

ピアースは約10年前にキャリアチェンジが必要だと気づいたという。その理由は、自身の年齢的な問題と、セッションミュージシャンの業界そのものが「縮小している」ことでした。

「50代前半の頃、ある気づきがあった。“もし業界が活発で成長しているとしても、やがて年齢的に限界が来る”と。歳を重ねていることは分かっていたし、業界が縮小していること、つまりそれは予算も減っていることも分かっていた。これまでの仕事には感謝しているけれど、昔とは状況が違う。“セッションの数を減らして教育分野に進めば、路頭に迷わず前に進める”と考えたんだよ」

ピアースの名前は業界内でまだ大きな影響力を持っていますが、セッション・ミュージシャンの採用基準も変化していると指摘しています。

「経歴がある利点は、若いミュージシャンたちが長老やレジェンドとして扱ってくれること。そこは問題ない。でも業界全体を見ると、ブルーノ・マーズのようなアーティストが誰を雇うかという基準は変わってきているんだ。

昔なら、例えばティナ・ターナーなら、レコーディングにはスタジオのプロたちを総動員していた。でも今は、例えばブルーノ・マーズなら、彼のチームには、彼のお気に入りのミュージシャンたちにテキストメッセージを送る担当者がいる。ギターパートは修正できる。スタジオに入って、パートを弾き、それが不完全でも構わない。雑でも構わないんだよ。

批判しているわけではない。みんな素晴らしいプレイヤーだ。僕が言いたいのは、彼らはもはやスタジオのプロを必要としない、ということ。iPhone に好きなミュージシャンが登録されているから、テキストメッセージを送れば、そのミュージシャンがスタジオに来て、パートを弾き、知り合いと即興で音楽を作っていくことができるんだよ。

僕は年齢を重ねたので、より高い報酬を期待している。でも(今の)得られる金額は双方にとって無理のない範囲で交渉される。それはユニオン(組合)によるものではない。つまり、年金、ロイヤルティ、医療保険を含む以前のセッション契約とは異なるんだ。

だから将来の選択肢を自分で決めるために、音楽業界にその選択を奪われる前に、徐々にセッションのキャリアから離れる道を選んだんだよ」