メタリカ(Metallica)の『Load』(1996年)と『Reload』(1997年)は長年にわたり物議を醸してきたアルバムです。この2枚をプロデュースした
ボブ・ロック(Bob Rock)は、ポッドキャスト『The Metallica Report』の最新エピソードのロング・インタビューの中で、この2枚の制作について新たに振り返っています。
「『Load』と『Reload』で大きく変わったのは、他のバンドの影響があったからなんだ。誰のアイデアだったかはわからないけど、多分ラーズ(ウルリッヒ)だと思う。彼は大きなビジョンをを持って音楽を見ているタイプで、俺と似ているところがある。
突然、彼は言った。“俺はエアロスミスやローリング・ストーンズ、ガンズ・アンド・ローゼズみたいなバンドが好きなんだ”って。そういうバンドにはギタリストが2人いる。『Load』以前はジェイムズ(ヘットフィールド)がリズムを全部担当していた。だから、カーク(ハメット)がジェイムズと一緒にリズムを弾くというアイデアが出て、それがすべてを変えたんだ。それを好まない人もいるけどね」
『Ride The Lightning』『Master Of Puppets』『…And Justice For All』を手掛けたフレミング・ラスムッセンとは制作アプローチがどう違ったのかという点について、ロックはこう語っています。
「『ブラック・アルバム(Metallica)』に戻るけど、彼らに初めて会った時、彼らはどうやってレコーディングしているか教えてくれた。基本的に彼らが知っていたのは、彼(ラスムッセン)がどうやってアルバムを作っていたかってことだった。なぜそうするのか、どうしてやるのかの説明はなかった。
俺はそれをしない。俺は彼らに“それはしない。全部ライヴで録音する”って言った。そしたら彼らは“なんでそうするんだ?”って聞いてきた。俺は説明したよ。彼らのやり方はすごく機械的なんだ。つまり、キックドラムを後から直すことはできないし、変えることもできない。曲全体がどうなっているのかは完成するまでわからない。でもライヴ録音をすると、ほぼすべての要素の良い例が得られる。
例えば…ジェイソン(ニューステッド)はベーシストとしてベースを弾いていなかった。彼は単にギターに音を重ねていただけだった。だから俺は彼に“おい、ベーシストとして弾け”と教えた。だから、彼がギターのリフを弾いていない部分がある。彼はドラムと合わせて演奏している部分もある。もしクリックに合わせてギターだけを録るやり方だったら、そんなことは絶対に起こらなかっただろう。だからその扉を開いたのは俺の責任だ。
『ブラック・アルバム』の録音を通じて彼らは何か違うものに気づき、そして『Load』ではそれを受け入れた。彼らは、何年か、たしか3年くらいツアーに出ていたから、いろんな影響も受けていた。
俺たちは同じ形、つまり彼らが集めたリフから始めた。この話はよく知られている通りだけど、26曲くらい録ったと思う。1年経ってもヘットフィールドはヴォーカルを3曲しか録っていなかった。俺は“これ全部やるのに5年かかるぞ”と思ったよ。だからアルバムを分ける決断をした。そしてもう一つの決断は街を出る必要があった。彼らはみんな子供が生まれたり結婚したりして、何も進まなくなっていたからね。だから“ここから出よう”と言って、ニューヨークを選んだ。ニューヨークに行ってから状況が変わった。彼らは他のことに目を向け始め、実験的なことをやり始めた。例えば、ヘットフィールドのレーナード・スキナードみたいなものを試し始めた。彼らは違う方向に進み始めた。俺にとって、それこそがバンドのやるべきことだと思うよ。
俺はメタルのルールに従わない。多分それは間違っているし、申し訳ないとも思っている。でも、俺とメタリカの関係は、俺が曲重視の人間だからで、どんなスタイルでも曲が大事なんだ。つまり、俺は今でも『Led Zeppelin I』を聴いて“これ以上のものはない”と思っている。それは真実じゃないかもしれないけど、曲と彼らの演奏が素晴らしいんだ。
だから、彼ら(メタリカ)が方向転換したとき、俺は反対しなかった。“『ブラック・アルバム』をコピーしなきゃ”なんて言う奴じゃなかった。『ブラック・アルバム』をコピーしなくてよかったと思っている。あのアルバムは二度と作れないから。ああいうアルバムは、すべてが一つにまとまったものだから――俺がどこにいたか、彼らがどこにいたか、文化がどこにあったか、音楽がどこにあったか、すべてが重なってできたんだ。だから彼らがもっと自由になりたがっていて、彼らが育ったメタルバンドだけでなく、他の影響も取り入れ始めたことを俺は受け入れた。それがあのアルバムなんだ。結局、基本トラックだけを残して、ニューヨークに行って、そこに何があるのかを発見したんだよ」
ロックはさらに、『Load』と『Reload』のプロダクションの違いについても語っています。
「(『Load』と『Reload』には)かなりの違いがある。音が違う――本当に違うんだ。それには理由がある。
ニューヨークにいたとき、俺らが以前使っていたコンソール(SSL)6000はなかった。利用可能なスタジオにはみんなSSL 9000があった。全く別物だよ。(エンジニア/ミキサーの)ランディ・ストウブと俺はそれが大嫌いだった。故障ばかりして音が途切れるからね。まあ、詳しくは話さないけど、慣れが必要なものだった。俺のスタイルじゃないけど、それで仕上げるしかなかったんだ。だから『Load』を聴いて、両方のアルバムの再発について書くよう頼まれたとき、ラーズにこの話をしたんだ。“音がまったく違う”ってね。『Reload』は攻撃的だ。でも理解しなきゃいけないのは、みんな『Load』が好きだってこと。彼らは俺が知っていることは知らないし、気にもしていない。でも俺にとっては、あまりにも違うことは、はっきりと分かった。そしてなぜそうなのかを考えるんだよ。
だから『Load』をリミックスしたいんだ(笑)、でもそれは絶対に起こらないだよ。とにかく、それが大きな違いだ。基本的に、アルバムはその周囲の環境で作られるもので、『Load』はまさにそうだ。『Load』は素晴らしいアルバムだ。実際、俺の子供たちは『Reload』より『Load』の方が好きなんだ。なぜか『Load』が大好きなんだよ。でも『Reload』の“Fuel”をかけると、“おお”ってなる。音的にはもっと攻撃的で、彼ららしいんだ。これは批判的思考と言えるだろう。俺は両方のアルバムを聴いて、“なんだこれは?”ってショックを受けた。まあ、そんなところだよ」