HOME > ニュース >

つらい思い出を呼び起こす楽曲はその曲を「リハビリする」ことでイメージを回復させることができる可能性 研究者語る

2025/07/29 14:31掲載
メールで知らせる   このエントリーをはてなブックマークに追加  
listening to music
listening to music
あなたは過去のトラウマや、つらい思い出を呼び起こす楽曲はありますか? それを避けたいという衝動は強いものですが、研究者たちは「その曲をリハビリする」ことで、その曲のイメージを回復させることができる可能性を指摘しています。英ガーディアン紙が特集しています。

ヘルシンキ大学の博士課程の研究者であるIlja Salakkaによると、音楽と記憶の関係は感情に結びついているという。

「感情は一般的に長期記憶において重要な役割を果たしており、音楽は強い感情を呼び起こすことができるため、音楽が出来事に関連する記憶を強化する可能性は高いのです。もちろん、逆もまた然りで、出来事自体が感情的で、音楽を伴う状況の記憶を強める可能性もあります」

Salakkaによると、一般的にリスナーが思春期や若年成人期に聴いていた音楽が最も多くの記憶を呼び起こす傾向にあるという。

「音楽に結びついた記憶の大半は、本質的にポジティブなものが多い」ようですが、必ずしもそうとは限りません。「ポジティブな音楽関連の記憶は一般的なものが多いのに対し、ネガティブな記憶は、より具体的な出来事に関連していることが多い」という。

かつては聴いていて楽しかったが今では痛みを伴う記憶と結びついているなど、曲に結びついた感情やそれに伴う記憶は変化する可能性があります。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の助教授Stephanie Lealによると 「今、その曲はネガティブな記憶を呼び起こし、元々はなかった新たな感情を掻き立てるようになっています」と説明しています。

専門家によると、この分野の研究は不足しているものの、痛みを伴う記憶と結びついている曲を、新しく、より幸せな状況で聴くことで、その曲のイメージを回復させることができる可能性を指摘しています。 Lealはこう述べています。

「もしその曲に対して非常に強いネガティブなイメージがあるなら、それを乗り越えることは難しいかもしれません。しかし、試みる方法はあります。その曲を新しい楽しい出来事と結びつけて繰り返し聴くことで、それが強くなり、脳が再接続されて新しい関連付けに書き換えられることを期待するのです」

シェフィールド大学のRenee Timmers教授は、これらの新しい関連付けには強い感情が伴い、理想的には社会的な文脈で起こり、意味のあるものでなければならないと付け加えています。

Timmers教授は別の可能のあるアプローチも提案しました。

「音楽を“ただそこにあるもので、自分にはどうすることもできないもの”として受け入れるのではなく、実際に積極的に関わるのです。例えば音楽に合わせて口ずさんだり、即興で演奏する。そうすると、音楽はあなたが積極的に関わる対象となり、記憶ではなくなるのです」