
Dire Straits / Money For Nothing
ダイアー・ストレイツ(Dire Straits)のヒット曲「Money for Nothing」。
マーク・ノップラー(Mark Knopfler)は録音当時、
ZZトップ(ZZ Top)の
ビリー・ギボンズ(Billy F Gibbons)のギター・サウンドを再現したいと考えて試行錯誤を重ねていましたが、技術的な問題や創作上の行き詰まりにより、諦めかけていました。そんな時、ある偶然によって、素晴らしいギター・サウンドが得られました。バンドメンバーは英Classic Rockの新しいインタビューの中で、当時のレコーディングを振り返っています。
アルバム『Brothers in Arms』はデジタル録音で制作されましたが、当時はまだ一般的ではなかったため、ダイアー・ストレイツのメンバーたちにとって録音プロセスは大きな挑戦でした。ノップラーはこう振り返っています。
「デジタル録音との出会いは興味深いものだった。冒険でもあったね。ニール(ドーフスマン、プロデューサー/エンジニア)は、今では悔しげに“完璧”と呼んでいるけど、実際にそうではなかった。でも彼はその技術を磨いていた。素晴らしいエンジニアだったよ。僕はただ座って彼の作業を見守り、すべてを吸収していた。彼は僕を追い出すわけにはいかなかった。だって、僕のアルバムだったからね」
一部のデジタルテープマシンの不具合により、バンドはレコーディングを最初からやり直さなければならなくなりました。この時点で「Money For Nothing」のレコーディングは誰もが想像していたよりずっと長くかかり始めていました。
オマー・ハキムがドラムを録り終え、
ガイ・フレッチャー(Guy Fletcher)がシンセパートを終えた後、いよいよノップラーが演奏する番になりました。
ノップラーは楽曲のテーマにちなみ、当時のMTVの常連だったZZトップのビリー・ギボンズのギターの音色を再現しようと試行錯誤を重ねていました。しかし、技術的な問題や創作上の行き詰まりにより、諦めかけていました。そんな時、マイクがスピーカーキャビネットから落ち、床に向かって垂れ下がりました。そのハプニングによって、ついに理想の音色が実現しました。フレッチャーはその瞬間を回想しています。
「アシスタントの一人がマイクに気づいて動かそうとした時、みんなが一斉に“ダメだ!触るな!”と叫んだ。マークがギターのフレーズを完璧に弾き終えた瞬間、曲は一気に動き出し、独自の生命を得たかのようになったんだ」