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ギャング・オブ・フォーが名盤『Entertainment!』を制作した経緯 メンバー回想

2025/06/17 17:35掲載
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Gang Of Four / Entertainment!
Gang Of Four / Entertainment!
ギャング・オブ・フォー(Gang Of Four)が名盤『Entertainment!』を制作した経緯を、メンバーのジョン・キングとヒューゴー・バーナムが英ガーディアン紙の新しいインタビューの中で振り返っています。

■ジョン・キング(シンガー、ソングライター)

「アンディ・ギルとは小学校時代からの付き合いだった。俺たちは兄弟のような間柄だったが、性格は正反対だった。バンドの4人は音楽に関してはお互いに決して手加減しなかったので、時には殴り合いに発展することもあった。その緊張感が音楽にエネルギーを与えていた。アンディは正式なギター教育を受けていなかったが、指を素早く動かし、楽器をまるで自分の敵かのように突き刺すような天才的な演奏方法を持っていた。これは後世に大きな影響を与えた。俺たちは当初はドクター・フィールグッドのコピーバンドのようなものだったが、“Love Like Anthrax”を作った時、他の曲は全て捨ててこのような曲をもっと書くべきだと気付いた。その後“Damaged Goods”が突破口を開き、俺たちはパンクにファンクの要素を持ち込んだ。

デビューアルバム『Entertainment!』の曲は社会を顕微鏡でのぞき込むような内容だった。“5.45”で♪テレビから流れる血を見ながら、どうして平然と食事ができるだろうか~と歌ったのは夕方のニュースについてだったし、核戦争の脅威によって『Protect and survive(守って生き延びよう)』というパンフレットが各家庭に配られていた時代だったので“Guns Before Butter”ではそのパラノイアを捉えた。“At Home He's a Tourist”はジャン=ポール・サルトル的な、現代生活の本質は居心地の悪さにあるという考えから生まれた。そしてバンドメンバーのデイヴ・アレンとヒューゴ・バーナムが、俺たち全員がシックのファンだったこともあり、これをディスコ調にしようという面白いアイデアを出した。この曲は58位まで上昇したが、“rubbers”(※コンドームの意味も)を“rubbish(ゴミ)”に変えることを拒否したため、BBCの『トップ・オブ・ザ・ポップス』への出演は許可されなかった。

『Entertainment!』はエフェクトを一切使わずに録音したため、レコード会社は最初デモテープだと思った。年月を経て、このアルバムはカート・コバーンやR.E.M.、ラン・ザ・ジュエルズ、フランク・オーシャンなど多くのミュージシャンに影響を与えてきた。今これらの曲を演奏するたび、未だに時代遅れになっていないことにむしろ憂鬱になるが、『Entertainment!』がアウトサイダーの名作として認められていることは誇りに思っている。金儲けのために、こんなアルバムを作る人はいないからね」

■ヒューゴー・バーナム(ドラム)

「『Entertainment!』のレコーディングはロンドンのワークハウス・スタジオで行った。イアン・デューリーが『New Boots and Panties!!』を録音した場所で、俺たち全員がそのアルバムを大好きだった。レコーディングの合間にはハウスボートで生活し、U.K.サブスのチャーリー・ハーパーを含む大勢の仲間と一緒に酔っ払っていた。誰も溺れなかったのが今でも不思議だよ。クリックトラックなしで録音し、オーバーダブもほとんどしなかった。スタジオのエンジニアは俺たちを嫌っていて、デイヴや俺がミスするたびに最初からやり直させたが、完成したアルバムは荒々しくて生々しく、シンプルながらファンキーな仕上がりになった。歌詞についてほとんど話し合うことはなかったが、車や女の子よりも、Hブロック(※北アイルランド紛争下で囚人を収容するために使用された北アイルランドの刑務所の通称)や労働者階級について歌う方がずっと興味深いと全員一致していた。俺たちに影響を受けた多くの人々が、後に大金を稼いだ。俺たちに似た曲1曲につき1ペニー(約2円)でも貰えたらいいのにと思うよ」